18.圭人7
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圭人はぼんやり葉月の話を聞いていた。
義兄の清治がそんな経験をしていたなんて知らなかった。
清治の父の会社が不祥事で破産したのは知っていた。
そんな男を雇うから悪いんだと思っていた。
そんな真実が隠されていたなんて。
「清治さんは、沢田さんの奥さまを思い出したのだと思うわ。夫を引き留められなかった浮気されるような妻として、すごいバッシングを受けたそうだから。全て彼女が妻として悪かったから、浮気され、会社を裏切ったのだと噂されていたらしいの」
浮気された妻が酷く責められる。
圭人も″魅力が無くなったから浮気されたんだろ″と思っていた、今までは。
しづくの何処に非があった? 浮気されるような悪いことろがあったか?
「一時期だけどね、沢田さん、本当に清治さんのお母さまと不倫関係にあったらしいの、奥さまと結婚してから。その真実が奥さまをさらに追い詰め、自ら命を絶ってしまった。幼い子供たちを残して」
この女性はどんな気持ちだったのだろう? 信じる人に裏切られ、理由も分からず回りから責められて。
裏切った夫に何も言うことも聞くことも出来ず、ただ悪いと責められるだけ。
そして、子供たちを生きる理由に出来ないほど追い詰められた。
「圭人、まずは自分が何をしたのか、考えなさい。そして、何をすべきかを」
何をした? 俺はしづくに。
何が出来る? 深く傷付けたしづくに。
「しづくさんが受けた傷をあなたが、側で癒すことはもうできない。けれど、傷を小さくすることはできるかもしれないわ」
しづくは何一つ悪くない。それは伝えたかった。
しづくは可愛い女性だった。美人という言葉よりも可愛いがとても似合う女性だった。
一目で恋に落ちた。取引先の事務室にいる姿を見て。
コロコロと変わる表情、おっちょこちょいなところ、次々と魅了された。
他の女に興味が無くなった。
一緒にいたいのはしづくだけだった。
子供っぽいしづくが同じ年なのにはびっくりした。
半年付き合ってプロポーズした。しづくは事故で子供が出来にくいことを正直に話してくれた。
子供が出来なくてもしづくが良かった。姉の葉月のところに二人も男の子がいるから、跡取りはどうにかなるからだ。
母の瑞季にはもう反対されたが意外にもすんなり父の幸生が許可してくれた。
出会って約一年後に結婚することが出来た。
子供もすんなり授かった。けれど、すぐに流れてしまった。
嫌な噂が立ったが気にせずしばらく二人を楽しむことにした。
結婚三年目でもうそろそろと考えた。
すぐに妊娠が分かったがお腹が少し膨らんだと思ったくらいで、またいなくなった。
辛かった。
喜びが悲しみに変わる瞬間が。
しづくの泣き顔を見るのも、泣き声を聞くのも。
しづくは仕事を止めて、専業主婦になった。
子供が出来ても無理をしなくていいように。
医者にも色々と相談して、俺との未来を考えてくれた。
嬉しかった。俺だけのモノになったのが。
しづくが俺とのことを優先にしたことが。
なのに、何故、俺は、しづくを裏切った?
圭人のいいところは、不倫の原因にしづくをしてないところです。