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しづく 愚か者の列に並んだ者  作者: はるあき
16/44

15.清治2

ランキングに入ってるのを見て、思わずスマホの電源を切ってしまいました。

ありがとうございますm(__)m

 清治は急いで圭人君の元に駆け付けた。

 あの噂がとうとう圭人君の耳に入ってしまった。

 今の圭人君ではきっと堪えられない。


「圭人君、顔色が悪い」


 返事がない。目がもう虚ろだ。


「今日はもういい。帰りなさい」


 引っ越したばかりのマンションに返すのは危険だ。

 一人にしてはいけない。かといって、本家は瑞季がいる。

 うちに送り付けるように手配しよう。

 立ち上がった圭人君の体がグラリと傾いた。

 いや、病院行きかもしれない。



 無事、圭人君を妻、葉月のいる家に送るように手配して、執務室で一息ついた時だった。

 圭人君が嫌がったので、病院行きは見送った。

 食事も碌にとってないかもしれない。


「瑞季さんがしづくさんと接触しただって!」


 連絡を受けて、頭を抱える。

 今日は問題が多い日だ。

 瑞季さんはしづくさんを拉致して、何処かに連れていこうとしたらしい。

 どうにか未遂で終わったが。

 だが、しづくさんを助けた人が厄介だった。

 彼女が動くとなると、彼女の夫も必ず動く。力は彼女のほうが怖いが、夫のほうはネチネチと粘着力の強いテープのように後々までしつこい。特に彼女が絡むと余計に。

 圭人君への強引な見合い話で瑞季さんは多くの人の反感を買ってしまった。彼女へ相談に行く人もあったのだろう。

 動くな、確実に動く。

 はあー。

 盛大にため息をついてしまう。

 だが、しづくさんと彼女が出会ったのは良かったのかもしれない。彼女は人と思えない雰囲気を持つせいか、その人柄なのか、会うと癒される人が多い。

 しづくさんが少しでも楽になっていたらいい。

 圭人君にも会わせたいが、嫉妬深い夫がダメだろうなー。

 ああ、現実逃避をしてしまった。

 被害が瑞季さんだけで済むようにしなければ。

 あー、めんどくさい。



 仕事が終わって、急いで家に帰った。

 しづくさんの件が圭人君の耳に入ったら大変なことになる。葉月一人では押さえられないだろう。


「圭人、ダメよ。寝てなきゃ」


 葉月の焦った声が聞こえた。


「母さんから、連絡が入っていたんだ!しづくと会ったって!!」


 清治はため息を吐いた。

 瑞季さんは圭人君のスマホに伝言を入れたようだ。


「しづくと会ったのなら、あいつは絶対、しづくを傷つけた!許せるわけないだろ!」


 客間を開けると、圭人君が上着を着て出ていこうとしている。


「圭人君、君、倒れたんだよ」


 清治は呆れた声を出した。

 気持ちは分かるが無理をしてはいけない。

 清治のスマホが鳴った。知らないアドレスだ。

 メールを読んで相手は分かった。番号もアドレスも教えてないがあいつなら簡単に調べるだろう。


『面白くないから、最強カードを動かしてあげる』


 で、最強カードが何かが書いてない。

 たぶん瑞季さんに対してだろうが最強カードって?

 こいつが黙らせてくれるのが一番なんだが。

 だが、今は圭人君だ。


「とにかく、しづくさんは無事だよ。」


 スマホをポケットに戻し、圭人君に視線を戻す。


「あの噂だって、あの女が流したに決まってるんだ!」


 清治はため息を吐いた。

 もしそうだとしても、瑞季さんの責にして自分は問題から目を背けるのか?


「圭人君、()()しづくさんを一番傷付けているのは、君だよ。」


 悪い顔色をさらに悪くして、ふらついた圭人君は後退しぶつかったベッドに座り込んだ。


「あなた!」


 咎める視線を葉月が向けてくるがそれが真実だ。

 ″子供が流れたから離婚する″


「あの噂は、しづくさんが一度目の流産の時からあった。みんなは、一度目だからと流していたけどね」


 そんな噂がたつこと自体、悪意が満ちている。

 ネクタイを緩め、シャツの一番上のボタンを外す。長くなりそうだから楽にさせてもらう。


「二度目の流産の直後に、子供はもう無理かもと流れ出した。それでもみんな半信半疑だった。だが、すぐに違う噂が流れ出した。その時期が分かるかい?」


 ″子供が出来ないから、他の人に子供を生ませる″

 圭人君の肩がぴくりと動いた。


「もしかして・・・?」

「そうだよ、君と木崎さんがヨリを戻した頃から、その噂が立ち始めた。で、噂は、また形を変えた」


 きついだろうが真実を受け止めてもらわなければならない。

「子供が出来たら、しづくさんと別れ圭人君と結婚出来るとね」


 だから、受付嬢の野村さんが狩にでた。

 圭人君は信じられないと見てくるが、こういう噂があったのは真実だ。


「俺は、そんなつもりで・・・」

「じゃあ、どういうつもりだったのかい? しづくさんとは子作り、木崎さんや野村さんとは快楽だったのかい? それとも逆で、しづくさんが快楽、二人が子作り?」

「あなた!!」


 葉月が声をあげるが圭人君ははっきりと認識しなければならない。己の罪を。


「俺は、そんなつもりで抱いていない!」


 そうだね、君はしづくさんがどう思うか、どう思われるか、全く考えていなかった。大切だといいながら。


「だから、どういうつもりで? しづくさんは、君との子供を欲しがっていた。君は、他の女性とも子供が出来るようなことをしていた。もし、彼女たちに子供が出来ていたら、どうするつもりだった? 生ませる? 堕ろさせる? 否認する? 黙って生んでいて、″あなたの子供です″と言ってきたら?それに、しづくさんが知ったらと考えたことは、あった?」


 畳み掛ける。しっかり罪を分かるように。


「避妊は、してた!!しづくにも分からないようにしてた!」

「それは完璧?完璧といえたのかな? しづくさんにラブホテルから出てきたところを見られたんだよね?」


 グッと圭人君は言葉に詰まっている。

 分からないようにしていたのにバッチリ現場を見られた。完璧なんてない。


「世の中に不倫している人は数多くいるわ」


 弟を庇いたいのは分かるけど、その例えはいただけない。不倫を正当化してはいけない。


「だからといって、不倫していい? 配偶者を裏切ってよい? 他の人がしているから悪くないと?」


 葉月が視線を反らす。例えが悪かったことに気が付いたようだ。


「不倫する者と不倫された者の思いの違いって、考えたことある? 俺は優越感と劣等感だと思う。不倫された者はどうしてなのか、自分の何が悪かったのかと悩むんだよ」


 色々あるから一概にはいえないけどね。

 圭人君は項垂れている。きつく言い過ぎたかもしれないが、ここまで言わないと分かってくれなかったかもと思う。


「君は、人を責めるより先に自分のしたことをちゃんと考えなければいけない」


 これで圭人君がしっかり自分の罪を分かってくれたらいい。


「相談ならいつでも乗るよ。」


 後で葉月に文句を言われるなーと思いながら客間を出た。

 長い夜になるかもしれない。

清治も暗い過去があります

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