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箱庭の治癒術士は幸せな夢を見る  作者: 御堂廉


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第二十七話 変化の日

 僕は何度かあの街へと繰り出し、何人もの人を治療した。

 結果……半月ほどでほぼ全員が治療完了となった。

 動けなかった人たちもどんどん元気になっていき、僕が話したことを皆に広めてくれている。


 また、数は少なかったけどもう一つの病気である人食いウイルス。

 こっちもやはり魔法生物のウイルスだった。

 ただ、こっちは内部から溶かされていくので進行がわかりにくい上、死ぬまでの時間がとても短い。

 更に筋肉から溶かされて行くために完全な回復は無理だった。


 手遅れになっている人も多くてこれは全員を助けることは出来ない物だ。

 筋肉を再生し、溶かされた内臓を再生し……とやっているといくら魔力があっても足りないのだ。

 もしかしたら古なる者の異常なマナならば出来るかもしれない。


 そしてもう一つの布教の方はと言えば……。

 面白いくらいに広がった。

 僕の施術している姿がビデオで流され、治療されていく様が広がった。

 さらに僕の予言としてあの言葉が入っている。


 ウェブサイトでインチキだなんだと言われても居るけど、真剣に僕が言ったことを解読しようとしている人たちまで含めてかなり世界に拡散されたはずだ。

 僕の顔は目だけしかわからないようにしてあるからばれないと思うけど……。


 まあそれはいい。

 僕の目的は僕の言葉を世界に届けることだから。

 意味がわからなくともそれが各国の言葉に翻訳され、そして広がりさえすればいい。

 そうすれば僕の言葉は予言だったことが証明されて、巨人達は神の使いとなる。

 僕たち箱庭の住人はその神の国の住人ってわけだ。


 ただ、一応同時に厄災として魔物が出現するという事も付け加えてある。

 それらに対処できるのは僕たちであるとも。

 実際を知っていれば親切の押し売りというか、マッチポンプというか……色々ひどいものだけども、病気が治った人達からすればそれは確かに神の奇跡なのだ。


 そうして僕たちはこの世界と融合し、共に手を取り合っていける1つの国家として受け入れてもらう。

 何処までうまくいくかはわからないけど……。


 マンションへ帰るとアルファが出迎えてくれる。

 こいつのお蔭で部屋はいつも綺麗だし、ベッドは綺麗に整えられている。

 ありがたいね。


 もう必要もなくなるだろうけど、一応ウイルスに関して僕がわかったことなんかを父さんには伝えておいた。

 まさかコンクリートの内部にまで入り込んで居るとは思ってなかったらしい。

 表面の検査しかしてなかったというからそりゃびっくりだろうね。

 普通は表面に付着しているくらいだから。

 でもこの世界の生き物じゃないような奴らだ。

 なんでもありってことがわからないと厳しいだろう。


 やがて僕の動画はニュースでも取り上げられ始めた。

 実際にあのエリアの人たちが全員治ったのだ。そこに通っていた医者からの証言もあって、その情報は更に加速する。

 ここまでたったの一ヶ月。

 こっちに来て二ヶ月でここまでやれた。

 恐らく箱庭の方では2日目くらいになってるところかな?


 テレビに映る僕の姿を見ながら、ここでの生活もそろそろ終わりだなと感じる。

 そう、道を繋げるときが近い。

 手元には大量の紙。それにはこの病気の詳細とウイルスに関しての情報を纏めてある。

 古なる者はこれを理解できるだろうか。

 少し不安だけどやってみるしか無いだろう。

 彼らが頼りなんだ、僕たちだけじゃ絶対に治しきれない。


 次の日になって父さんが来た。

 調査の結果僕の言っていたことが正しいことが分かり、ウイルスの潜伏先などが周知されたという。

 ただ……これからその努力は無意味になってしまうのだけど。


 人食いウイルスの方は接触と経口感染で対処が少し面倒くさいけど、きちんと対処さえすればなんとかなるだろう。

 ただ……水源が汚染されると一気に広まる可能性が高い。

 亡くなった方の体液が水道に混じると危険だ。

 下水にはほぼ確実に混じっているし、これらを根絶するためには確実にウイルスを除去できるろ過システムが必要となる。


 空気感染じゃないだけマシかも知れないけど。

 ただ、知らずに感染している人が触った物からも拾ってしまうため、突然発症して初めて感染に気づくってこともあるわけだ。


 どれも既存の消毒があまり効かない上に、一度罹ると死亡率は100%に近い恐怖の病。

 だけど……それももう数日で根絶への道を歩むだろう。


「今はいつテレビを見てもお前のことをやっているな、ユウ」

「そうだね。情報伝達が早いことは良いことだよ」

「それに託つけた新興宗教が出来上がったりしているようだがね。そしてその日を最期の日だと言っている人達も多い」

「……流石に色々と影響が出てて申し訳なく思ってるけどさ。でも最終的に現実になるんだから仕方ないよ。こうでもしないと全世界に僕たちのことを知らしめるなんてことは出来ないんだから」

「そうだが……。それで、もう病気の方は完全に治せることがわかったんだね?」


 何度も試した結果だ。問題ない。

 僕が治して回った人の数は1000人を超えるんだ。数えてないけど……。

 あのエリアだけでなく、話を聞いた周りのエリアからも病人が集まったりしててんやわんやだった。

 僕の姿が見えると拝みだしたりしてちょっと困ったけど、そうやって皆のことを集めて確実に治療を行っていったのだ。


「じゃあ、その融合の日っていうのは……」

「うん。明日、道を繋げるつもりだよ。そして僕たちの世界をこの世界と融合する」

「それは本当に安全なんだな?」

「まあ多分。……個人的に気になってるのは海面上昇だったりするけど……」


 そこにあった海水を押しのけて箱庭が出現した場合……津波が沿岸部を襲うことになるだろう。

 もしくは海面が上昇して水没する場所が出る。

 逆に出現する場所の分の海水が消えて置換されるのであれば……多分大丈夫だ。

 そのかわり水が減るけど。

 消えた水がどうなるかは全然わからない。


 もしかしたらどっかでいきなり雨となって降り注ぐかもしれない。

 色々とどういう影響が出るかなんて僕には分からないけど……僕たちは大地の復活を望み、ここの人たちは病の根絶を願う。


 大抵のことは魔法でなんとかなる事も多いし、科学と組み合わせて魔法科学なんてのが出来るようになったら可能性は広がるだろう。


「まあ、前代未聞の事が起きるんだ、どうなるかなんて科学者でも分からないさ……。だからユウ、お前の思う通りにしなさい」

「ありがとう父さん!」

「それにしても寝てる間にこんなに凄い人間になっているなんてなぁ……。向こうでもこっちでも世界を救う人間だぞ?凄いじゃないか」

「あー……うんまあ……そうなるか。あまり自覚ないんだけど」


 どっちも救うのは古なる者だし……。

 それ考えると美味しいところ持ってかれてるな?まあ良いや。


 父さんも認めてくれた。

 僕はそれで十分だよ。

 多分、研究者として、この状況を収めるためには自分たちの力ではなんともならないと分かっているんだろう。

 だから僕の魔法に期待している。


 さあ……世界を作り変えよう。


 □□□□□□


「アルファ、お願いするよ」


 了解のポーズを取るアルファに向かって、僕は魔力を流す。

 少しの時間が経って古なる者と繋がった。


 道を作る前に彼は僕のことをあの夢の世界へと呼ぶ。

 そこで直に会って病気に関しての最終報告や、予想される色々な事を伝えた。

 それら全てに対して了承した彼は、確実に病を根絶することが出来ると宣言する。


「あの」

『何だ?』

「僕はどうなるんですか?この世界と、箱庭の世界に同時に存在しているわけなんですけど」

『当然、融合する。お前はもともと1人であり、それが分離した存在だ。我らの世界が共に融合を果たした時……お前の身体もまた、融合し、全ての記憶と力を継承することになるだろう』


 つまり今の僕の状態をそのまま引き継げるのか。

 どちらの身体がメインになるかに関しては、恐らくスペックの高いほうが適用されるということなので……箱庭のほうかな?

 お金をかけて作ってくれたこの体はちょっともったいない気はするけど。


『ではこれよりすぐにでも道を作るとしよう。そちらも準備をして置くが良い』

「分かった。……ありがとう、古なる者よ」

『……我が名はフォスだ、ユウ』

「そっか。改めて……ありがとうフォス」

『礼には及ばぬ。我らを救ったのは他でもないお前たちなのだから』


 気がつくと部屋の真ん中でアルファと向き合って立っていた。


『どうされましたか?』


 アルファがタブレットにその言葉を書き込んで見せてくる。

 そうだな、こいつに声を与えてやりたいところだけど……いい方法があるだろうか。父さんなら知ってるかな。


「今、彼に会ってきた。すぐに融合が始まるみたいだよ」

『私はどうすれば?』

「一旦僕のストレージに入っててもらう。ここに取り残されたりとか嫌だろ?」

『お供致します、マスター』


 深い礼をするアルファをストレージに入れて、身の回りのものも片っ端から詰め込んでいく。

 魔法剣とか出しっぱなしにしてたしな……。

 最後に部屋を見渡して、もうなにもない事を確認して……パソコンを見る。


「……ごめん父さん、これ貰ってくよ」


 すでに衛星通信が契約された端末だ。これがあればとりあえず何処に行っても父さんと連絡が取れるだろう。

 携帯電話は無いけど手紙に比べたら一瞬だ。

 パソコンをストレージへと入れたところで、突然目眩がするほどのマナの波動を感じた。


 始まったのだ。

 それと同時に僕の身体が輝き始めた。

 意識もゆっくりと白く飛び始め……僕は世界へと融けた。


 □□□□□□


 その日、全世界の人たちに決して忘れることの出来ない出来事が起きる。

 昼間にもかかわらず……更に日食などでもないのに、突然世界中が闇に包まれた。

 電気がなければ何も見えないほどの本当の闇。


 太陽は消え、ただ闇だけが空に広がっている。

 やがて人々は見た。

 空に黄金に輝く光の帯を。

 それは全世界を凄まじい速さで周回し、世界を染め上げる。


 美しくも恐ろしいその光景を誰もが目を離せずに見ていると、不意に光が一箇所へと集まるようにして消えていった。

 直後、風とも違う何かが自分たちの中を駆け抜けていくような感覚を覚える。

 それはまるで突風が突然吹き付けたかのように。

 しかし木々や葉は揺れず、ただ生きている者たちだけがそれを感じられた。


 直後に軽い地震のような揺れが襲い、何が起きているのかもわからないまま困惑する。

 ゆっくりと青空と太陽が戻った時、人はついに安堵する。

 先程の現象は何だったのか、あの波動は何だったのか。

 そして、とある言葉を思い出す。


 それは予言。

 古めかしい格好をした覆面をした若者が喋っていたもの。

 ほとんどの人たちはその言葉を知っている。

 聞いたことがある。

 見たことがある。


 信じてはいなかったが、今の現象こそがその始まりなのだと、全員が強く感じたのだった。


『世界の変化の時。大陸が出現し巨人が目覚め、病を癒す』

『新しい理が増え、それと同時に人類の敵も出現するだろう。だが、大陸の者たちがそれを狩るだろう』


 □□□□□□


「うぅ……」


 なんか、吐き気がする……目が回る……。

 目を開けようとして気持ち悪さにまた目をつぶることを繰り返していたら、聞き覚えのある声が僕の耳に届いた。


「ユウ!気がついたのね!大丈夫?」

「あ?えりー……?」

「ちょっとしっかりしてよ!」


 温かい力が僕の体の中へと入ってくる。

 それと共に吐き気とめまいは消えていき、ゆっくりと頭が覚醒していった。


「戻った……?エリー。エリーだ!やった!!」

「ちょっ!?」


 ちょっと汗臭いけど、いい匂い。ああこの柔らかさ……ずっと恋しかった。


 エリーが皆のことを呼んでいる。

 たっぷりとエリーを堪能して開放してあげたら、どやどやと皆がテントの中へと入ってきた。


「ユウ、成功したのだな」

「はい。今、古なる者は?」


 アクラがなにか言いたげな皆を押しのけて僕のところへくる。

 多分成功だろう。こうして僕は戻ってこれたのだから。

 その答えを述べたのは後から入ってきた国王陛下だった。


「彼は今、世界の融合のために力を注いでおるよ。立てるかね?さあ、皆も外に出てその偉業をこの目で見ようではないか」


 異論はない。

 僕もエリーに支えられてテントの外へと出る。

 古なる者……フォスは直立し、全てが止まった無の世界に向けて祈りを捧げる様なポーズを取っていた。


 やがて境目の壁が黄金に輝き始める。

 薄っすらとその向こう側が見えているけど、目まぐるしく何かが変化するような光景が広がっていた。

 色々な色が混ざり合い、生まれてまた消えていく。

 しばらくそうした後に見えたのは……。


「……これは……」


 全員が息を呑む。

 僕だってちょっとびっくりしている位だ。

 そこにあったのは地球。

 衛星から見下ろす形で映像でしか見たことがないものだった。

 ゆっくりとそこに向かって降りていく。


 見覚えのある地形、そこにむかってゆっくりと。

 また何も見えなくなって……凄まじいマナの放出が起きた。

 びっくりして思わず目を閉じ、開けた時……そこには海が広がっていた。


「海だ……」

「海?この巨大な水たまりは……そうか、これが海……」


 ああそうか、皆海を知らないんだ。

 この箱庭の世界には海はない。

 大きくてもせいぜい湖止まりでそれよりも大きな水を見たことがないんだ。

 見渡す限りの水。


 ……あれ、だけどなんか低くないか……?


『世界の融合は終わった』

「素晴らしい!ついにあの恐ろしい虚無の世界から逃れることが出来たのだな……!」

『その通りだ。もう結界は存在しない。いつでも外に出ることが出来るだろう』

「あの、なんか浮いてる気がするんですけど……」


 そうなのだ。

 結構高いところでこの箱庭の世界は止まっていた。

 海面まで……えっと数百メートルくらいかな?

 え、なんで?


『お前からの情報でこれだけの体積が海へとおさまった場合、間違いなく近隣の国への影響は免れぬ。少々考えた結果、最下部が僅かに海面に浸かる程度で浮かばせることにしたのだ』


 完全に空間の座標を固定しているからもう絶対動かないそうだけども。

 いやこれちょっと目立ちすぎるでしょうが。

 っていうか下に出る時どうすれば良いんだ……。


 ま、まあ……無事融合ってことで。

 後で下に出る方法とかは考えればいいか。

 フォスのお蔭でマナは十分にある。

 大地はこの後ゆっくりと整形していけばいいだろう。

 ただなぁ……この土地にたどり着くには飛行機で来るか、そうでなければ船で来て300メートル位を登ってこなきゃならないのか。


 ただ、早速というか海の方に気配を感じる。

 それも魔物の。

 空にはこの箱庭の世界特有の魔物も居る。

 そう簡単には侵入させてくれることはないだろう。


『では我は仲間たちを復活させてくるとしよう』


 フォスがそう言い残してさっさと歩いていく。

 彼らはこれからこの世界に蔓延る病を消す作業がある。

 そのために仲間を集めるのだ。


 ……まあ、僕たちも手伝わなきゃならないんだけどね。


「それで、ユウ?古なる者の話ではユウは今私達が融合したこの世界にいたのよね?どういうところか分かる?」

「そうだね。ちょっと長くなるからテントに入ってよ」


 そして僕は、箱庭の世界に来た時からの話を聞かせた。


 僕はもともとこの世界の住人で、とある病によって死の淵にいた事。

 そしてその治療の段階で僕は身体をすべて失い、しばらく脳だけで生きていた事。

 その間の出来事が僕にとってのエリーたちとの思い出だ。


 当時は僕は完全に記憶を失っていて、なにがなんだかわからない状態だったけれど今ならすべてを覚えている。

 科学が発達した世界で僕はどういう存在だったのか。

 ここにはどういう文明があって、どういった文化があるのか……。

 知っているだけのことを教えた。


 特に王様は熱心に聞いている。

 当然だ。この後恐らく一番忙しくなるのは彼なのだ。

 各国の代表と会い、話をしなければならない。

 でも多分言葉が通じないだろうな……だから通訳が必要だ。

 その教育から始まることだろう。


 僕はどうなんだろう。父さんと話ができなかったらちょっと悲しいな。

 多分大丈夫だと思うけど。


「なんだか凄いところなんだねぇ。ところでここにもウィザードはいるのぉ?」

「残念だけどここには魔法を使える人はだれもいないよ、ライラさん。ましてや獣人族やエルフ、ドワーフなんかの種族もいない。僕と同じ人という単一の種族のみだね」

「動物は……いる?」

「絶滅しかけてるのもいるけど、結構たくさん居るよ。マーレが欲しそうな魔物はもちろんいないんだけどね……。まあ、箱庭の獣とこの世界の獣が戦ったら確実にこっちのほうが勝つよ」


 マーレが残念そうにしている。

 そもそも魔法のない世界というのが全く想像できないらしい。

 僕としてはその反対側の人間だったから、魔法のある世界っていうのが新鮮に感じるようなものだろう。

 ただ、この世界に融合したことで新しい魔物が誕生する可能性はある。


 植物に関しても同じかな。


 と言ったところで一旦僕は話を中断してパソコンを取り出す。

 そういやこれを持ってきていたんだった。

 電池がなくなるまでは駆動できるけど、最悪日光にさらしておけば回復するから問題ないだろう。

 で、これを使って色々な技術とかについてを話していく。


「これは何だ?魔道具なのか?」

「いえ、これは魔道具ではなく機械です陛下。僕たちのよく知る歯車の付いたようなものではなく……電気信号によって制御された物で、このパソコン一台あれば色々なことが出来ますよ。……この様に」


 通話ボタンを押す。

 父さんと話をするときに使っている機能だけど、手っ取り早く父さんと連絡を取りたいのと、実際のそこに住む人を見せたいというのもある。


『どうしたんだ?ユウ、さっきのあれは……もしかして融合したのか?』

「あ、父さん?そう、さっき融合したよ。今僕たちの居る大陸は海の上に浮かんでる。何処かわからないけど……あ、緯度経度出るんだっけ送るね」

『……なんてこった、失われた大陸の辺りじゃないか?』


 ムー大陸だったかな?ああ確かにだいたいそのへんにあるか。

 面白いな、今までただ海しか無かったところに巨大な陸地が空に浮いている。

 沈んだと言われる大陸の上に浮かぶ新しい大陸……色々とオカルト好きが騒ぎ立てそうだ。


「声を聞けて嬉しいよ父さん。今ね、僕は僕の仲間たちと一緒にいるんだ。大丈夫なら映像をつなげてもらっていいかな」


 画面に父さんの顔が映し出される。

 その様子に皆は流石に驚いたようだ。

 遠く離れた場所にいる人とこれほどまでに早く会話ができること。

 そして映像まで付けて。

 場所に関しても地図を出してどれくらい離れているのかを説明した。


 この大陸以上の距離を通信しているんだから確かに凄いよなぁ。


 父さんは父さんで、僕の周りにいる獣人のライラや、エルフのモモなんかを見て驚いていた。

 映画の特殊効果とかじゃないんだよな?なんて言って。


 だけど皆には言葉がわからないらしい。

 父さんも周りの皆の言っていることが分からない。

 両方が理解できるのは僕だけか……。

 ってことは……翻訳作業、僕がやることになるじゃないか!?


 王様はもうそのつもりで居るし。

 でも自分の国の言葉しかわからないよ、僕。


 そして僕はエリーを紹介した。

 父さんは……絶句してたな。


『……は、はじめまして、エリーさん。いや……おいユウ、ものすごく綺麗な子と結婚したな!?絶対会わせてくれよ!いやむしろ私がそっちに行くか!?』

「ちょっ、父さん落ち着いて!?」


 エリーが不思議そうに見ていたので今のやり取りを説明すると笑ってた。

 まあでも……そのうち行きたいというのは確かだ。

 空を飛ぶことはまだ出来ないけど、そのうち出来るようになるかもしれない。

 そうでなくてもおそらく調査のためにヘリとかが来るだろう。それに乗せてってもらおうかな?

 後はこっそりと僕の部屋となったあのマンションの一室にでも、ゲートを設置しておこう。

 いつでも帰れるように。


 通話を終えて、ネットでいろいろな資料を見せて説明していると、頭上のずっと遠くを飛行機の音とともに一筋の雲が出来ていく。

 ……多分、あの飛行機のパイロットがこの大陸を報告しただろうな。


 次に来るのは主要な国々の軍隊だ。

 これから忙しくなるぞ……。

 僕もネットを使って情報を集めながら進めていこう。


 アクラに色々相談して決めていくか。


 とりあえず今は……家に帰りたい。

 箱庭の世界の僕の家に。


 ゲートを起動して皆で王都へと戻り……僕たちの任務は解かれた。

 王様達はこれから新しい世界との接触に関して色々と詰めていくという。

 おそらく僕たちのこのチームはこれからもそれに付いて、色々とサポートをする役目となるだろう。

 それまでの間僕たちは休みとなる。


 全員が家に帰され、ようやく僕らも一息つくことができた。

 多分、この休みが終わった時……またとても忙しくなるんだろうなぁ。

 主に僕が。

 何よりも預言者として露出しまくっていたの僕だし。

 そうなる前に……。


「エリー」

「どうしたの?」

「寂しかったよ。そして、もう二度と離れない」

「……うん、頑張ったわね。まさか少し寝てるだけと思ったら二ヶ月も頑張ってたなんて……ゆっくり休みましょう?そしていつか、あなたのお父さんに会わせてね!それにあなたの街も見たいわ」

「もちろん!今日は一緒に寝よう。誰にも邪魔されずにさ」


 アルファも今日はちょっと僕のストレージの中で大人しくしていてもらおう。

 その前に……僕の部屋から持ち出したお弁当を2人で食べる。

 冷めてるのにとっても美味しいと意外と好評だったのは嬉しい。


 その後どうしたかって?

 そりゃもう朝までたっぷりと余計に疲れることしてたよ。

 お蔭で夕方まで2人で寝てたくらいだ。

 今はこのゆったりとした時間を楽しみたい。

 次の休みがいつになるのかわからないんだから。



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