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箱庭の治癒術士は幸せな夢を見る  作者: 御堂廉


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第二十一話 王都へ

おそくなってしまい申し訳ありません

 結婚式は村で行った。

 村の広場に全員が集まって僕達を祝福してくれる。


 いつもより少し豪華な服を着た皆。

 そして僕達もそんな感じで、さらに装飾品がこれでもかと付けられる。


 皆から顔や腕に植物の汁から採ったインクでタトゥーが入れられていく。

 僕は完全に初めてだから何が何だか分からないままに事は進行していくわけだけど。

 しばらくして終わると、なんだかとてもかっこいい感じの物が描かれていた。


 文様自体にはそれぞれ意味が込められているらしい。

 男に描かれる剣と盾は妻を守るという意味が。

 蛇のような物は二人の絆を表し、死ぬまでそれが続くようにと言う意味が込められているとか。


 一通りお祝いが終わると……あれだけ付けられてた装飾品を全て取っ払われて身軽になった。

 あれ、意外と重かったからありがたい。


「では、試練に向かう前に異議があるものは居るか?」

「俺だ!この結婚絶対に反対だ!!……ユウ!お前に決闘を申し込む!」

「……へ?」


 え、待ってなんでそうなるの?

 なんかビイがいきなり決闘とか言ってるんだけど。


「……まあ、気に入らないって人もいるから……それを黙らせるためにある儀式みたいなものよ。申し込まれた人が勝てば問題なし、負けても配偶者が首を縦に振らなければ無効。こっち側がどうころぼうとも有利なんだけど……まあ、負けないでしょ?」


 納得させるための戦いかよ……。ちなみに弱い人がなる場合はそもそもこの異議を唱える場を作らない。

 僕が勝てると判断したからこそ村長はその文言を付けたんだろう。

 ……確かに負ける気はしない。


「その決闘を受けようビイ。僕が勝ったらもう二度とエリーに言い寄ったりしないでくれ」

「い、良いだろう!絶対負けねぇからな!」


 ルールは結構厳しい。

 殺し合いというわけじゃないけど、基本的に武器を使わないっていう以外は特に何も無い。

 止められたりしない限りは続けることが出来る。


 素手の戦いは初めてだけど……。

 エリーとの組手には剣を使わないものも幾つかある。


 行ってらっしゃいと軽い調子で送り出された僕は、皆が輪になっている中心へと向かう。

 そこにいるのは無駄に闘志を剥き出しにしたビイ。

 力仕事をしているだけあって筋肉がついたしっかりした身体をしている。

 彼から見たら僕は少し頼りなく見えることだろう。

 ……魔法がなければ。

 ついでに僕には身体の知識もあれば、戦闘用の訓練をエリーから仕込まれている。


 大振りなパンチを難なく躱すことは訳がない。

 躱しながら思いっきり鳩尾に拳を叩き込めば、それだけで相手は苦しむ。

 呼吸が出来なくなるからね。

 そうでなくてもめちゃくちゃきっついし。


 立ち直るのを待っていると、明らかに股間を狙った攻撃をしてくる。

 こいつ本当に僕が嫌いなんだろうな……。

 だからといって潰されてやる訳にはいかない。僕はエリーの子供が欲しいんだ。

 ビイの足を叩き落としてやれば、さっきの攻撃を警戒したのか体を丸めて腕を胸付近を守るようにして逃げる。

 なら、顔だ。


 こめかみや耳の辺りに思いっきり衝撃を与えてやれば、相手は平衡感覚を無くす。

 結局もう一度鳩尾に喰らい、最後の僕の攻撃によって完全にビイは気絶してしまった。


 流石にかわいそうなので治療だけはしておいたけど。


 僕の勝利で皆が歓声を上げる。

 ビイはといえば、情けないだの何だのと言われてちょっとかわいそうになってしまうけど……それでも迷惑を被っていたのは事実だから仕方ない。

 これで分からないならオレたちが分からせてやる!なんて人もたくさんいたし、僕達の結婚をこうして喜んでくれている人たちのほうが圧倒的に多いのが嬉しい。


 得意げな顔をしてエリーが僕のことを迎えてくれる。


「お疲れ様」

「うん。……これで大丈夫なんだよな?」

「大丈夫じゃなかったら、お母さんが黙ってないから……」

「……だよね。治療ついでに眠らせといたから夜まで起きないと思うけど」


 で、この決闘が始まる前に言ってた試練ってなんだ?


「私と2人だけで、何処かに隠された何かを取ってくるっていうものよ。2人だけの最初の作業。力を合わせて困難に立ち向かっていかなきゃならないわけだから、この試練くらい簡単に乗り越えなきゃ駄目だっていうことね」


 この試練で喧嘩したりしてすぐ別れるようなら、そもそも資格がなかったってことのようだ。

 その夫婦になる人の実力とかに合わせてそこそこ難しいことを要求されるものになっているらしい。


 僕とエリーに課せられたのは……森の中にある崖……以前あのゴブリンが居た洞窟付近に置いてある物だそうだ。

 何かは教えてもらなかったけど、見れば絶対に分かるだろうとだけ言われた。


 村の入口で馬に乗る。

 合図とともに僕達はかけて行く。

 流石に馬だけで色々気にしなくても良い移動は早い。

 魔物の気配もほとんど無いけど……洞窟近くまで行くにはそれなりに面倒なところも多い。


 というかそもそもこの洞窟がある所は川沿いで魔物もそれなりに出てくるところではある。

 当然、そこにいるわけで。


「2人でシールドボアとか、前だったら絶対逃げてたけど……」

「丁度いいご馳走よ、手土産に持って帰りましょ?」


 今じゃこんな感じだ。

 他には特に気配もない。

 分厚い骨を突き破り僕の攻撃が通る。

 ドラゴンに比べたらもうこれくらいは……ね。


 血抜きをしてストレージに仕舞い込み、辺りを探る。

 ……けど、見つからない。

 見れば分かるって何を置いたんだよ。


 洞窟の中かと思って見てみたけど特に無かったし。

 うーん……。


「いや、本当に見つからないんだけど。何処に隠したんだ?っていうかこんな難しいの?」

「普通なら湖の辺りにわかりやすく置いてるもんよ?これは本気で難しすぎよ……」

「以前はなかったものとか、そういうのを探すしか無いか……」


 ちょっと集中してみよう。

 前に言われてたよな、僕は些細なことを見分けれるって。

 洞窟……違和感はない。

 崖……川……違う。いや、なんか変だ。


 なんとなく向かった崖。

 僕達が降りてきた所の近くだ。

 なにか気になるような。


「……この木。よく見たらなんかおかしくないか?」

「そうね、この瘤はちょっと不自然よね」


 瘤があるのはまあ分かるんだけど、長いのだ。

 それでもよく見ないと見つけれないくらいには分かりにくい。

 妙に大きいなぁ……。


 木を切ってみると中に箱が入っていた。


「……手の混んだことを……」


 これ普通の人絶対見つけられないだろこんなの。

 開けてみると……剣が入っていた。

 青白く透明な剣身が印象的な……。

 もう一つは双剣。同じ素材だ。


「エリー。これ……もしかして」

「ええ。私達の新しい武器ね。私のは双剣ね、……わぁ……凄く軽い……。魔力の通り方が凄く良いし」

「僕はこの剣か。綺麗だな……向こう側が透けて見えるなんて」


 魔力を流す。少し抵抗を感じながらも魔力が通りだすと、明らかに刃の周りの景色が歪んでいく。

 軽く切りつけてみると、触れても居ないのに切った跡が付いた。


「うわ……切れ味ってレベルじゃないぞこれ。でもそんなに魔力の通り方が良いとは思わないけどな……」

「その人に合わせて作るはずだし……あのときと同じようにしてみたら?」


 そうか。

 マナはマナのままで……明らかに変わった。

 出力も大幅に上がっているのが分かる。


 軽く風を感じるくらいにその見えない刃の範囲が広くなっている。

 氷の魔力を乗せれば周囲が凍りつき、炎の魔力を乗せれば炎上する。

 恐ろしいまでの出力を持った剣。


 試しに治癒をかければ……切りつけた木ですら治っていった。


「確かに見れば分かるけどさ……」

「あそこまで隠されていたら見ただけじゃ分かりっこないわよ……もう。でも、これは本当に凄いわね。私もユウみたいにすごい魔法使えそうよ」

「使う機会が無いほうが嬉しいけどね……」


 そうして無事に戻ると既に夕方になっている。

 試練を乗り越えた僕達は晴れて夫婦と認められることとなった。

 シールドボアはこの後皆の夕食となったのは言うまでもない。


 □□□□□□


 結婚してからちょっとだけ生活が変わった。

 僕とエリーはセシリアさんの家を出て、以前アクラ達が使っていた建物の一室を借りて生活している。

 団長が使ってた部屋だから広くて居心地がいい。

 色々と共有のものは多いんだけど、入っているのが僕達だけだから問題ない。


 何よりも……夜に色々と我慢しなくて良くなったのが大きい。

 毎日がとても充実していて、夜になれば2人で愛し合えるこの生活がとても心地良い。


 ただいつまでもそうしている訳にはいかない。

 自分たちのものをまとめて引っ越しの準備は既に進めている。


 そして今日は初めて王都に出向く日だ。

 だいぶ時間が経った気はするけどまあ、良いだろ。

 お金も振り込まれたし、僕達の立場もそれなりに上がってるし。


 まずはゲートを通って王都に行き、研究所を目指す。

 多分いきなり行っても駄目だろうから宿を取って連絡を入れるだけだな。

 許可が取れたら行って挨拶してくるつもりだ。

 アクラの名前出したらなんとかなるでしょ……多分。


 まあ、手続きだけしてとりあえずは観光だ。

 宿とった後はそのへんをブラブラして楽しもう。


 通行許可証を含めて必要なものを全部持っていく。

 試練の時に受け取った剣や、その後でもらった盾、そして軽鎧はストレージに入れてある。

 何もないと思うけどまあ一応念の為だ。


「行こうか」

「そうね」


 ゲートが淡い光を湛えている。

 そこに……一歩踏み込んだ。


 次の瞬間いつものあの感覚が体を包み……空気が変わった。


 土むき出しだった地面は、綺麗に敷かれた石畳に。

 周りには沢山の人達が歩いているのが分かる。

 僕達は広場の中心に出たようだ。

 けど……あっという間に武装した人たちに取り囲まれた。


「身分証の提示を」

「ああ、これですけど……」


 剣に手をかけていつでも抜けるようにしている人達に囲まれるとか、めっちゃ怖いんだけど。

 あの戦闘で近接の人たちがどういう戦い方が出来るかを知ってるからなおさらだ。


 隊長らしき人がじっくりと僕達の身分証を確認している。

 何やら魔道具のようなやつに差し込んだりしているけど、あれは何なんだろう?


「失礼、治癒術士の認定証はお持ちかな?」

「あります」

「……なるほど、ダラム村のエリー、同村のユウ。王都ホープへようこそ、歓迎いたします」


 ……大丈夫だったようだ。

 彼らに案内されて一度大きな建物の中へと入っていく。

 警備関連の建物らしい。


 少し待たされて一人の人が入ってきた。

 エドに似てる感じだけど、こっちのほうがよっぽど威圧的な感じだ……。


「部下が失礼した。王都警備団の団長バーナードだ。君がユウ……あの、ドラゴンスレイヤーのユウか」

「ええまぁ……」

「いや、どうにもイメージが沸かなくてな……まさかドラゴンを倒したものが兵士でもウィザードでもなくヒーラーだというのだから。そしてエリーといったな、君もまたその場では活躍していたと聞いている。まさかあの辺境の地にそこまでの人材が居るとは」


 なんか品定めされているようで落ち着かない。

 とりえず疑いとかは持たれてないようだから良いんだけど。


「あのゲートは限られたものしか使うことが出来ず、君たちは初めてだったため顔が登録されていなかったのだ。次からは問題なく使うことが出来るが必ずここに来て手続きだけはしてもらうことを了承して欲しい」

「ああ、なるほどそういうことでしたか。分かりました。見た感じここは王都の中のようですし、正規の手続きをせずに入ってきたことになってしまうんですね?」


 当然手続きせずに中に入ったら、ブレナークでも犯罪者だ。

 だからこの警備兵の居るところに繋がってるんだろう。

 ……村は……うん、別に税金とってるわけでもなし、入るのも出るのも自由だからね……。


「物分りがよくて助かるよ。その通りだ。身分証は確認させてもらったし……ヒーラーの認定証も本物だったのは確認できた。こちらに来た理由を聞いても?」

「プレイグの時に来たアクラさんからの紹介です。王立研究所へ行きたいんですけど……やっぱり事前の許可が必要ですよね」

「研究所か。なるほど……ではこちらで取り次いでおこう。明日には返事を出せるはずだが、宿は決まっていないな?」

「初めてきたもので全然わかりません。その案内とかもしてもらえると助かるんですけど」


 いかつい顔を緩めて親切に教えてくれた。

 意外と優しいな。

 宿が決まったら伝えてくれれば、後ほど連絡が直接行くようにしてくれるそうだ。


 ただ……かなり広い。

 簡単な地図を見せてくれたけど、中央寄りに王城を含む広大な土地があり、それを囲むように街が形成されている。

 大きく東西南北に分けられ、その一つ一つが中心に近い部分には貴族などが住む場所などが集まり、その外側に商業地区、工業地区などがあり、普通の王国民が住む場所などが広がっている。

 僕達がいるのは南側の中心付近だ。

 丁度貴族街の外側って感じか。

 見えている門の片側がその境界線ってことらしい。


 僕達はとりあえず宿に行くけど、貴族街の方は身分証がまた少し違うのが必要ってことで、僕はまだ入れない。


「当然城に行く用事があるだろうが、そのときにはこの道を通るといい。ここは誰でも通行可能となっている」

「まあ貴族街とか縁ないだろうしなぁ」

「何を言っている?あれだけの称号を得た者が爵位を貰えないわけがないだろう」

「え?そうなんですか?」

「未だ誰も成し遂げたことのない偉業を成し遂げ、更には国を救ったのだ。当然だろう……。そういった者に報いるための物があるのだ。知らなかったのか?」

「知りませんでした……縁がないと思ってたから……」


 そもそも研究所で働く人たちは皆それなりの身分の人たちだった。

 ……ってことはマーレとかライラとかも……。


「ああ、彼らも貴族だ。……が、研究所の連中は少々特殊でな。基本的には研究にしか興味がないせいか少々世俗的な所がある。だから本当の貴族からは顔をしかめられるときもあるが……優秀だ。その成果のお陰で生活できているから誰も文句を言えん」

「なんとなく、分かる気がします」

「話をしていても大分個性的と言うか……だったもんね?」


 まあ……そうだよな。

 あれが貴族?って感じはする。


「さて、長々と引き止めて悪かった。宿が決まったらここの誰にでも良いから教えてもらいたい。後、帰る時に顔を登録してもらう。でなければ今日のような事が毎回行われることになるぞ」

「それは流石に勘弁してほしいですね」


 帰り際に案内された所で、魔道具を使って僕とエリーの顔を登録した。……らしい。

 どう処理してるのか全然わからないんだけど。

 ただまあ凄く便利っぽい。


 バーナードに教えてもらったとおりに宿屋街に向かうと、途中で賑やかな通りに出た。

 商業地区だ。

 色々な店がみっちりと集まっていてとても活気がある。

 後でゆっくりと見て回りたいな。


 そして少し静かな宿屋街に。

 こっちはあまり賑やかにならないように少し規制がかかっているらしくて、お陰で大分静かで過ごしやすそうだ。

 バーナードおすすめの宿屋は……あれか。


 高くもないが安いわけでもない、丁度いい程度のランク。

 高級を求める人には足りないけど、そうでないならば丁度いいだろうってことで教えてもらった所だ。

 しっかりと人の出入りが管理されてるって話だから相当安心できそうだな。


 部屋を案内してもらったけど料金以上って感じがする。

 2人部屋でベッドはふかふか。掃除も行き届いていてとても綺麗だ。

 窓にはあまり歪みのないガラスが嵌め込まれていて外がよく見える。

 これたしか結構高かったような気がするけど……。


「いい部屋ね」

「そうだね。流石王都だ……」

「うわ、このベッド凄いわ……凄く柔らかい」

「ホントだ。寝心地良さそうだなぁ」


 触ってもふかふかだと思ってたけど、ベッド自体が凄く柔らかい。

 ばふっ、と飛び込んでみたらもう……包まれるかのような感じで凄くいい。

 これ欲しい……。


 しかも。なんとこの部屋にはシャワーが付いていた。

 温水も出るよ!

 トイレも付いてるよ!

 部屋からでなくていいじゃないか最高。


 食事以外で外行かなくても良いんじゃないかってくらい居心地がいいんだけど。


 まあでも折角王都に来たわけだし、やっぱり色々見たい。

 あ、それにオーウェンに頼まれてたものもあるな。

 魔法金属が幾つかと魔石と普通の鉱物数種類。

 まあこの辺は適当に見つかるだろうと思う。


 外に出て商業地区へと向かうと段々に賑やかになって……大量の人通りがあるところに出る。

 漂ってくる美味しそうな匂いが食欲を刺激しまくってくる……。


「ちょっとお腹空いてきたわね……そこに並んでる出店で何か買う?」

「そうだね。こんな美味しそうな匂いとか嗅いだら我慢出来ないよ」

「じゃあ行きましょ、何にする?」


 色々な料理が並んでいる。

 肉を串に刺したものであったり、ちょっとカラフルな色をしたコメを焼いたものとか、めちゃくちゃ美味しそうな匂いのするスープとか。

 かと思えば甘い匂いが漂うお菓子なんかもある。

 フルーツを剥いたものを置いているところも。


 幾つか適当に見繕って食べながら歩いてるとだいぶ腹が満たされた。

 どれもこれも美味しくて大分買食いしてしまった気がする。

 まあいいか。


 食事関連のところを過ぎると色々なお店が並んでいる所が広がる。

 服だったり、武器だったり、薬だったり。

 職業病ではあるけど薬が気になったので入ってみた。


 様々な薬草やきのこ、鉱物なんかがずらりと並んでいる。

 これは全部薬のもととなるものばかりだ。


「うわ、なんかこう、痛そう」

「やっぱり男の人ってそう思うのね」

「そりゃそうだろこんなの……」


 男性器そのものが並んでるのを見て、同じ思いをしない男性が居るだろうか。

 いやこれ別に魔物のなんだけどさ。

 乾燥させてすり潰してやると精力剤となる。


 正直僕達には必要のないものだな!

 そもそも薬の大半が僕達は必要としないけど。自分で治せるし。

 だけど魔法薬はまた別だ。

 魔法による麻痺とかに関しては、魔法薬を使うとすぐに治せる場合がある。

 もちろん怪我をした時に患部に掛けると消毒と傷口を塞ぐまでをしてくれるものもあるし、解毒用のものもある。


 解毒などに関しては魔法を使うよりは飲んだほうが早いし、幾つか見繕って買っておいた。

 何気に良いなって思ったのは……容器がそのまま食べれるものになってること。

 一回分を噛めば中身が流れ出てきて飲み込めるし、その容器になっているものはそのまま食べてしまって構わないという。

 味は特にないし美味しいわけじゃないからそれだけ吐き捨てても良いっていうけど、戦闘中とかの緊急時だと重宝するだろうな。

 今までのような瓶だと蓋を開けて飲まなきゃならない分、少しだけ時間が掛かるし。


 他にも武器屋とか魔道具屋とかも覗いてみて色々と気になったものを買ってみたりした。

 どれもここでしか見れないようなものだろうと思う。

 まあそこは重要じゃないから割愛だ。


 ただ、基本的に少し装飾が多いように感じる。

 やっぱり潤っているからなのか、市民でも結構小奇麗な格好をしている人達は多いし、身につけているものも少しばかりおしゃれだったりするのだ。

 村の方では実用一辺倒って感じの物が基本だからちょっと新鮮に見える。


 ナイフ一本とっても、デザインが少しばかり凝っていたり、柄や刃に装飾が入っていたり。

 あまり主張しない程度ではあってもそのワンポイントがとてもかっこよかったりするのだ。

 実用的には意味はないものだけどね。


 そして食事に関しては……物が沢山あるのもあるけど、種類が物凄く多い。

 魔物の肉よりも家畜の肉が多いのは、おそらく安定して畜産が出来ているからなんだろう。

 当然穀物や野菜、果物に関しても見たことがないものが結構ある。


 流石は全てが集まる場所。一番栄えている場所だ。


 公共浴場も結構たくさんあるのが印象的だ。

 大きな物が1つっていうイメージが強かったけど、ここはそれぞれが特色を持った営業をしているようで、マッサージを全面に押し出していたり、お湯に薬を混ぜた効能を謳っていたりと様々だ。


 夜のサービスを売りにしているのもあるけど……まあ、うん。行かない。


 そんな感じで宿が決まったことを報告しつつ、王都を堪能した。

 ま、広すぎて全然回れないんだけどね。



お金ないのにバイトにも行けんしああもう。

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