7話〜ケール村〜
1時間ほど歩くと遂に村が見えてきた。そこそこ大きい村のようで、畑や物見櫓があった。
「ちょっとここで待ってて、いきなりドラゴンが村に来るとみんな驚くだろうから、村のみんなにウルのことを説明してくるよ。」
そう言ってザンは村へ走っていった。
普通のドラゴンの大きさなんて知らないが、俺の大きさはだいたい2mくらいだし突然村に現れたらそりゃ驚くだろうな。仕方ない、大人しく待っていよう。
20分くらいすると村の方からザンが走って戻って来た。
「村のみんなと村長にウルの事話してきたよ、一緒に行こう!!」
俺はザンの後ろについて行って村へ向かった。村に入ると村の人達、主に子供たちに囲まれた。そして村人達の間をぬって1人の筋骨隆々の男性が俺の前に出てきた。
「あんたがザンを助けてくれたのか。息子を救ってくれてありがとう。俺は鍛冶師のプレシウって言うんだ。よろしくな!!」
その男性はザンの父で村で鍛冶師をやっていてそれなりの地位を得ているらしい。プレシウはお礼をしたいと俺を家に招いてくれた。俺はそのお誘いに頷いて答えた。そして俺がザンの家へ向かおうとした時に異様な者を見つけた。
人型の靄?
村の隅の方に黒い人型の靄を見つけた。輪郭がハッキリしないが真っ赤な2つの眼でこちらを見ている。
気味悪いな、一応魔眼で見ておくか。
UNKNOWN
えっ...これだけ?
ウィンドウにはUNKNOWNの表示のみ出ていた。その人型の靄は俺が魔眼で見た事が分かったのかその顔に対して巨大過ぎる口で笑っていた。そしてゆっくりと口を動かし始めた。
〝ミ...ツ...ケ...タ...〟
見つけた?何を言っているんだってアレ?あいつどこに行った?
俺は眼を逸らしても瞬きをした訳でも無いのにその靄を見失った。
ホントに何なんだよあいつ気味悪いな。
「どうしたんだい?体調でも悪いのか?」
突然立ち止まった俺を心配してかプレシウが問いかけてきた。俺は首を振って答えると、プレシウは再び歩き初めた。俺はさっきの事を考えているとどうやらザンの家に着いたらしい。
「お礼はするっつったけど俺には鍛冶しか出来ないからな...そうだあんたに取っておきの装備をやろう!!ちょっと待ってな。」
装備って俺はドラゴンだぞ?ドラゴンの装備なんてあるのか?
少しするとプレシウが人用にしては大きめの腕輪を持ってきた。あくまで人用だったら大きめなだけで俺の腕にははまりそうにない。その腕輪を見て俺が首を傾げていると
「ハッハッハ不思議に思うのも仕方ない。騙されたと思って腕を出してみてくれ。」
俺が腕を前に出すとプレシウがその腕輪を俺の腕に通した。なんと腕輪は俺の腕に合うように大きさを変えていった。
「これは【規模可変】の付与が施されたパワーリングだ。【規模可変】は少し希少な付与だがあんたにやる。大切に使ってくれよ。」
おぉすげぇ!!この世界にきて始めてマジックアイテムっぽいの見た!!
「あとあんたにお願いがあるんだがもしこれから旅に出るんならザンも連れて行ってくれないか?あいつ旅に出たいって言う癖に弱っちくて見てらんないんだよ。あんたならザンのやつも信頼しているようだし安心して任せられるんだがどうだい?」
俺としてもこの世界に詳しい人がいてくれたら有難いし、断る理由も無いからな。
俺は頷いて返事をした。
「そうか良かった。今ザンを連れてくるから待っててくれ。」
家の前で10分程待っていると小さめのポーチを身につけたザンが家から出てきた。
「えっと...突然だけどウルこれからよろしくね。」
俺はそれに一声小さく鳴いて答えた。もうこの村にいる理由は無くなったし行くか。
こうして俺とザンの旅が始まった。
アカウント名・叢雨 (ムラサメ)
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