17日目. お風呂がついに我が家にも!
葉月は軽く昼食を済ませると、作業の続きに取り掛かった。
湯船が完成したので、次は建物を作っていく。
アンネリーゼとコハクには葉月の手伝いを、クラウドには水路作りを続けてもらう。
ソラはなにやら用事があるらしく、午前中からずっと葉月に隠れてなにかをしているようだ。ソラのことなので、悪いようにはならないだろう。
葉月はソラを放置してコハクとアンネリーゼに声をかけた。
「この辺に石を置いてくれる? 三段くらい重ねて」
「くまくまっ!」
「了解です」
湯船を囲むように石材を配置して、基礎を作る。水がかかって腐りやすい部分なので、立ち上がり部分はいつもより多めに積んで高くした。
力持ちのコハクが次々とストレージから石材を取り出しては、湯船の周りに積み上げていく。
アンネリーゼも以外に力持ちで、コハクほどではないが、順調に基礎を積み上げていく。
そのあいだ、葉月は足りなくなりそうな木材を万能ツールでクラフトしておいた。
「これを基礎の上に積んでくれる?」
「くまくまっ」
「了解です」
基礎の上には土台を横にかけ、四隅には柱を立てる。この作業は小屋や家を作るのになんども繰り返した作業なので、コハクは手馴れたものだ。
「ツリーハウスとはまた違った建て方なのですね」
ツリーハウスを建てたときはアンネリーゼにも手伝ってもらったが、ツリーハウスと、小屋ではちょっと作り方が違うので、戸惑いがあるようだ。
「そうだね~、あっちは基礎がなかったからね。あ、こっちの壁の上の方と、反対側の壁は木を積まずに空けておいてね。窓ガラスをはめたいから」
「なるほど。上の窓は採光用ですね。でも反対側の壁は、塞がないと周りから丸見えになりませんか?」
首をかしげるアンネリーゼ。
「こっち側は外に囲いを作るから大丈夫。坪庭にしたいんだ」
「坪庭……ですか?」
「くまくま?」
「そ、小さな庭を造るの。岩を置いたり、砂利をひいたり、苔を敷き詰めたりして作るんだ。木は植えても一本か二本くらいで、落ち着いた感じにしたいなぁ」
葉月の説明に、アンネリーゼとコハクは首をかしげている。
「ま、見てみた方が早いかもね」
「そのようです」
「くま~」
「よし! じゃあ、さっさとお風呂場を完成させちゃおう!」
「はいっ!」
「くまま!」
コハクとアンネリーゼが手早く柱と壁をくみ上げていく。こちらの作業はふたりとも慣れているのですぐに終わるだろう。
その間に葉月はかまどに砂を入れてガラスを作ることにする。
壁一面を窓ガラスにするつもりなので、かなりの分量が必要になるはずだ。
かまどから赤くドロドロに溶けたガラスを取り出し、作業台の上でクラフトして板ガラスに加工する。
一瞬で冷えて綺麗な透明の板ガラスになる様子は、なんど見ても不思議だった。
「アンネリーゼさん、このガラスを壁の空いた部分にはめてもらえる?」
「了解です」
「コハクは、屋根を作ってね。三角形の切妻がいいな」
「くままっ!」
ふたりに別々の作業をお願いしておいて、葉月は湯船の周りを仕上げに掛かる。
湯船の周りに石を敷き詰めて、隙間を湯船と同じように粘土で塞ぎ、ファイアの魔法で焼いて固める。
それから、泉と湯船の間に水路を作る。湯船と水路の接続部分にはフリードリヒの別荘で見つけたマナストーンをセットできるように、石を積みあげた。
葉月が石の上に火の根源を含むマナストーンを配置しているあいだに、アンネリーゼとコハクの作業も終わっていた。
「よし! 開通式をしよう!」
「シャー!」
「くまっ」
「楽しみです」
ちょうど排水路を作っていたクラウドの作業も終わったらしい。
「では、行きます!」
葉月は水路をせき止めていた板を外して、湯船に水を引き込んだ。
ごぽごぽと音を立て、水が勢いよく湯船に流れ込む。
マナストーンがほのかに赤く光り、温まった水が湯船に溜まっていく。
「おお!」
「すごくいい感じです」
「くまくまっ!」
「シャー?」
クラウドだけはあまり喜んでいない様子だ。自分の作った排水路がどう役立つのかわかっていないのだろう。
「お湯があふれたら、クラウドの作った排水路が活躍するはずだから、もう少し待っててね」
「シャシャー!」
元気のいいクラウドの返事に、葉月はふふふと笑う。
お湯が溜まるのを待っているあいだに、葉月は出かけることを思いつく。
「アンネリーゼさんは、脱衣所を作ってもらえますか? お風呂の隣に、小さくていいので。クラウドも手伝って欲しいな」
「承知しました。葉月さんはお出かけですか?」
「坪庭を作る素材を探しに行こうと思って」
「なるほど」
「やっぱり和風庭園がいいよねぇ……。砂利、苔、岩、あとは笹とか形のいい木が見つかるといいんだけど」
竹は和風な感じが出そうだが、成長が早いので、坪庭に植えるとあっという間に侵食されてしまうので却下だ。
木の根元の土がむき出しだと、周囲を囲む壁が汚れるので、土をカバーできる植物が必要だ。砂利を敷いてもいいのだが、ちょっと味気ないので、ちょうどいい植物が見つかることを期待する。
「コハクー! ソラー! 出かけるよ~?」
「くまくまっ!」
ずっと姿を見せなかったソラが、葉月の肩に飛び乗った。
「いざ、素材探しへ!」
葉月は万能ツールを手に出かけることとなった。




