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箱庭の異世界でスローライフ万歳!  作者: Jade
村づくりを本格化させよう
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16日目. 乗り物を準備します

駕籠(かご)を作るなら、頑丈なほうがいいよね?」


 葉月はフリードリヒに相談を持ちかける。


「余り重いものはさすがに運べぬぞ?」

「だったら軽くて丈夫な素材じゃないと……。えっと、じゃあ何人くらいなら運べそう?」

「ヒュムならば五人ほどだな」

「私とアンネリーゼさんと、ウルリヒさんだったら大丈夫かな? 従魔のみんなも連れて行きたいんだけど……、重量オーバーかなぁ……」

「そなたの従魔であれば全員でも大丈夫だ」

「やったぁ!」


 フリードリヒの言葉に、葉月は飛び上がって喜ぶ。


「葉月殿、せっかくじゃがわしは留守番でよい。この年になると遠出は体に堪える。アンを連れて行ってやってくれぬか。それに誰か留守を預かる者がおったほうがよいじゃろう」

「おじじ……」

「ウルリヒさんは不参加なんだね。了解しました」


 チャッピーがぶんぶんと揺れた。


「ん、チャッピーもお留守番するの?」

「シャー」

「えぇ、クラウドもいかないの?」


 チャッピーとクラウドは留守番がいいらしい。

 そうなると温泉旅行に参加するメンバーは葉月、アンネリーゼ、ソラ、コハクの四名だ。

 人が二、三人分以内の重さで駕籠を作ればよいだろう。


「じゃあ、ちゃっちゃとクラフトしますか!」


 葉月は張り切って作業台に向かう。


「だとしたら、素材はマナの木だね」

「確かにマナの木ならば下手な金属より丈夫ですね」


 アンネリーゼの助言を受けて、葉月はストレージからマナの木材を取り出した。

 木材を薄い板と棒に加工して、パーツを作っていく。

 駕籠の底、上部の持ち手となる部分、柱と柱の間をつなぐ部分に分けてクラフトする。

 柱の間は軽量化のために格子状に組んだ木をはめて、軽量化を図ることにした。

 万能ツールのおかげで、あっという間に駕籠が組みあがっていく。

 直径二メートルほどの円柱形で、高さは二メートルほどの大きさで出来上がった。

 どちらかといえば駕籠というよりも鳥かごの外観に近い。


「フリードリヒさん、このくらいの太さでも持てる?」

「うむ。大丈夫であろう」


 持ち手の大きさを、運び手であるフリードリヒに確認する。

 本人からお墨付きをもらったので、大丈夫だろう。

 葉月は最後の仕上げとして駕籠に扉を取り付けた。


「みんな、中に入ってみてくれる?」

「くまっ」

「はい」


 コハク、アンネリーゼ、ソラが駕籠の中に入った。

 葉月も続いて中に入る。


「フリードリヒさん、試験飛行をお願いしていい?」

「かまわぬぞ」


 フリードリヒは快くうなずいた。


「大丈夫か確かめるだけだから、五十センチほど浮き上がれば十分だからね!」

「まかせておけ」


 フリードリヒはあっという間にドラゴンの姿に変身すると、ふわりと浮き上がった。

 駕籠の上部にホバリングしながらゆっくりと近づく。

 フリードリヒが駕籠の持ち手を掴むと、わずかな衝撃が伝わってくる。


「ちょーっとでいいからね!」


 葉月が何度も念押しするので、駕籠の中に乗っているメンバーの顔が不安そうになってきた。

 駕籠の周囲では、お留守番メンバーのウルリヒ、チャッピー、クラウドが心配そうに見守っている。


「葉月さん、大丈夫ですよね?」

「大丈夫、大丈夫」

「くまくまっ?」

「大丈夫だって、たぶん」


 フリードリヒがゆっくりと上昇する。

 それにあわせて駕籠は音もなく地面から離れ、地上から一メートル付近の位置で停止した。

 駕籠は特にきしんだり、ぐらついたりはしなかった。

 かすかな浮遊感以外に特に違和感はない。


「ほら、大丈夫みたいだよ?」

「くまー……」

「はい」


 コハクとアンネリーゼがほっとした表情を見せる。


「フリードリヒさん、下ろしていいよ~!」

「あいわかった」


 フリードリヒがゆっくりと降下し、地面が近づいてくる。

 残り三十センチほどになったところで、フリードリヒが不吉な声を上げた。


「あ、すまん!」


 フリードリヒが駕籠を取り落とした。


「ひいっ!」

「ちょっ!」

「ぐまーっ!」


 駕籠の中のメンバーたちの口から悲鳴がほとばしる。

 駕籠は盛大な音を立てて地面の上に着地した。

 幸いなことに、とっさにソラが薄く広がってみんなを受け止めてくれたので、内部ではほとんど衝撃はなかった。

 しかし駕籠に乗っていたメンバーの心には消えない傷が刻まれた。


「ちょっと、フリードリヒさん!」

「本当にすまぬ。勝手がわかってきたから次は大丈夫だ」

「もう! とりあえず出よう」


 まずは誰も乗せずに試験飛行すべきだったと葉月は思い至ったが、いまさらである。

 みんなを促して、駕籠の外に出る。

 葉月は駕籠を押したり引いたりして確認してみたが、これほどの衝撃を受けても駕籠が痛んだ様子はまったくない。

 とりあえず性能的には十分なことが図らずも証明された。


「大丈夫かの?」


 葉月たちにウルリヒが近づいてくる。


「ソラのおかげで大丈夫。とりあえず、おでかけの準備にかかろう」


 温泉に行くのであればそれなりに準備が必要だ。

 葉月の言葉にみんながうなずいた。


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