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箱庭の異世界でスローライフ万歳!  作者: Jade
村づくりを本格化させよう
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15日目. いよいよ村らしくなってきました

「ん、どうかした?」


 いつの間にかどこかに行っていたソラが葉月の元に戻ってきた。

 そしてなぜか背後には、子分スライムを引き連れている。


「ソラ、また子分を増やしたの?」


 ソラはぷよりと揺れた。

 アンネリーゼとウルリヒのために子分を増やしてくれたらしい。

 ソラの周りでは子分スライムたちが元気よく跳ねているのが、若干シュールだ。


「ありがとうね。それじゃあ、カーテン設置とあわせて一緒にトイレも作っておこう」


 葉月は作業台に向き直り、木材をトイレ用のドアにクラフトした。

 それから粘土をクラフトして、かまどで焼けば便器ができあがる。

 自分の家のぶんとあわせてクラフトして、かまどに入れておく。


「クラウドー、カーテンを作った布はまだ余ってる?」

「シャー!」


 焼成している間に、葉月は別の作業に取り掛かった。

 クラウドから余り布をもらい、まとめるためのタッセルをクラフトする。

 ほかにもカーテンを取り付けるためのフックなど細かな部品も作った。


「こんなものかな?」


 葉月はカーテンと便器をインベントリに入れ、ソラと子分スライムを引き連れて、ツリーハウスに向かった。

 ツリーハウスではちょうどアンネリーゼが室内に家具を配置し終えたところだった。


「葉月さん、そのスライムたちは?」

「ソラの子分たちだよ。トイレを掃除してくれるからこの家に住まわせてあげてくれる?」

「それはかまわないのですが……、どういった?」


 アンネリーゼはソラたちの姿に怪訝そうな表情を見せた。

 住まわせてほしいという意味がいまいち理解できていないようだ。

 葉月は口で説明するよりも、やって見せるほうが早いと、すぐさまトイレを設置することにした。

 部屋の隅を壁で仕切って個室を作る。

 それから個室の床を三十センチほど上げ、もう一段上にも床をはって、子分スライムたちが住む空間を作る。

 新しくはった床には穴を開けて便器を設置。

 ドアを取り付けえれば、トイレは完成だ。

 ソラの子分スライムが次々と元気よく便器の中に飛び込んでいく。


「これは……」

「ってことで、ここのトイレを使ってね。ソラの子分だからちゃんと言うことを聞いてくれるし、においや汚れもないからかなり快適だと思う」

「それはすごい……」


 アンネリーゼはひたすら圧倒されていた。


「あと、こっちの窓にカーテンを取り付けたいから、手伝ってもらえる?」

「はい!」


 葉月は窓の上にカーテンレールを取り付け、クラウドが作ってくれたカーテンを吊った。

 カーテンを取り付けるとかなり室内の雰囲気が変わった。


「生成りの布だから、あとで好きな色に染めたらいいと思う」

「そうですね。染色の素材には困らなさそうですし」


 先に運び込まれていた家具とあわせて、かなり快適な住環境になったのではないだろうか。

 ツリーハウスはこれで完成となる。


「それじゃ、あとはご自由に」

「葉月さんは何を?」

「今日はお茶の木が新しく増えたから、栽培環境を作っておこうかと」


 今朝の謎の種からはお茶の木が生えていた。

 この世界に来てから飲み物といえばお水か果物のジュースくらいしか飲めていない。

 嗜好品であるお茶の木が手に入ったのはかなりありがたい。

 お茶の木さえあれば緑茶、ほうじ茶、紅茶からウーロン茶までかなりの種類のお茶が作れるのがいい。


「何度聞いてもすごいです。神から直々に種を与えられるなんて」

「そうかなあ……」


 尊敬の眼差しで見つめてくるアンネリーゼに、葉月は面映(おもはゆ)くなる。

 葉月としては万能ツールや謎の種はうっかり殺されかけたというか、殺された慰謝料だと思っている。

 もちろん神様に対しての感謝はあるが、ある程度はもらって当然の権利だという認識だ。

 そんなわけで、葉月はソラと一緒に畑の増設に取り掛かった。

 茶の木に生った実を収穫し、一直線に並べて植えて茶畑を作る。

 本格的な収穫は明日以降になるだろうが、試験的に今生えている木から少しだけ葉を摘んでみる。


「そうそう。この先端の一芯二葉(いっしんによう)の部分だけ摘んでね」


 少し贅沢だが、お茶の葉の先端の柔らかな部分だけを収穫するように、葉月はソラに指示した。

 小さな木から取れた茶葉はわずかだ。

 けれど二、三回分は確保できたので、ほうじ茶を作ってみることにする。

 お茶の葉をきれいに洗ってから、水がついたままフライパンで焦げないように蒸し焼きにする。

 ここまでは葉月が担当した。

 次の工程はソラの得意な作業だ。

 葉がしんなりとしてきたら葉を移し、板の上で揉んで丸い塊を作るのだ。


「ソラ、こういうのはすごく上手だよね」


 ソラがかすかに赤くなった。

 ソラが揉んで丸くなった塊を、葉月は手でほぐしながら麦わらで編んだ(むしろ)の上に広げて乾かす。

 しばらく乾かしてから、再び揉んで丸い塊を作ることを繰り返す。

 揉んだときに葉っぱが折れそうになるまで乾かしたら、フライパンで乾煎(からいり)すればほうじ茶の完成だ。

 今日は干す作業までで精一杯だろう。

 残念ながら試飲は明日に持ち越しとなった。

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