15日目. 木の上にお家を建てます
結局、時間も遅いということことで森の民二人は葉月の家に泊まっていくことになり、葉月は慌ててベッドを二つクラフトする羽目になった。
急ごしらえだったが、アルパカの毛で作ったベッドはかなり好評だったらしく、ふたりはよく眠れたようだ。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう」
家の中に他人がいるのは不思議な気分だ。
だが久しぶりの人の気配に何となく葉月の心は浮き立っている。
「朝食の前に、ひと仕事しましょうか」
「はい」
「うむ。働かざる者食うべからずじゃからの」
手伝うと強固に主張するので、アンネリーゼには農作業を、ウルリヒには牧畜手伝ってもらうことにした。
葉月たちはいつものように日課の農作業、木の伐採と植林、家畜の世話に取り掛かる。
ソラは葉月の手伝い。コハクとチャッピーは養蜂作業、クラウドは採掘と、特に指示をしなくともそれぞれに作業をこなしてくれる。
「こんな果物があったなんて!」
「ううむ、かわいいモウじゃな」
ふたりは大げさに驚きながらも精力的に作業を進めてくれたので、あっという間に朝食前のひと仕事は片付いた。
みんなで朝食をとったら、今日の作業について最終確認を行う。
「本当に、ここに住むんですね?」
「うむ」
「森の村に戻らなくとも支障はありません。ぜひ住まわせてくださいませ」
「だったら、やっぱりお家を建てないとダメだよね」
葉月はアンネリーゼとウルリヒが住む家を建てることにした。
「どこにお家を作ったらいいのかな?」
「やはり森の中ではないか?」
「そうですね。寝床とは別に祭壇があると嬉しいですね」
葉月はふたりから意見を聞きながら計画を煮詰めていく。
「森の中ってことはツリーハウスとか?」
「ツリーハウス?」
「それはどういった家じゃ?」
「んー、口で説明するとなると難しいな。生えている木をそのまま柱にして木の上に家を作るんだよ~。秘密基地みたいでちょっと作ってみたかったんだよね」
「木の上に家があるのか」
「そうそう。難点があるとすれば、風で揺れるから船酔いするらしいってことなんだけど……」
「船酔いとはなんじゃ? アンは知っておるか?」
「残念ながら知りませんね。ですが風に揺れるのもまた良いのではないでしょうか?」
「うむ。風に吹かれるまま、気の向くままに生きるのは森の民として正しい姿じゃ。ならば、それでお願いしたいがどうかのぅ?」
「任されましたっ!」
葉月はびしりと敬礼のポーズを決めた。
葉月の肩でソラがぷよりと跳ねた。
葉月はさっそくツリーハウスの作成に着手する。
ストレージにあるありったけの丸太をインベントリに移してから、ツリーハウスに良さそうな木の選定に入った。
マナの木は直径三メートルほどもある。
普通ならば長方形または正方形に並んでいる木を選んで柱にするのだが、これほど大きければ幹に沿ってらせん階段を作り、木の上に家を置くような形でも建てられる。
「ここはどうかな?」
葉月はため池のすぐ脇にある大きなマナの木を示した。
「水場も近くてよいのぅ」
「よいのではないでしょうか?」
「じゃあ、ここで作るね」
葉月はナラの木材を一メートルほどの長さ、幅二十五センチほど、厚さが五センチほどの木材に加工した。
これを階段の踏み板として木の幹に沿ってぐるりと配置していく。
アンネリーゼとコハクに木材を運ぶのを手伝ってもらう。
ウルリヒには下から全体の形を確認してもらう役目をお願いした。
葉月たちは少しずつ上りながら、らせん状に木材をくみ上げていく。
「この辺でいい?」
「もう少し上がいいのぅ」
「りょうか~い」
ウルリヒにチェックしてもらいながら、彼らの好みに合わせて位置を決める。
最終的に三メートルほど上った位置でウルリヒのOKがでた。
マナの木を中心にして囲う様に梁を渡して土台にする。
この梁の上に板を張って九メートル四方の広さのデッキにする。
小屋の作り方は平地に作るのと大して変わらない。
デッキの外周部は、手すりを巡らせてウッドデッキとしてくつろげる場所にした。
あとは一メートルほど内側に入ったところに柱を立て、梁を渡し、屋根をつけて壁を作ればいい。
「こっち支えてて」
「はいっ」
「くまくまっ」
三人で作業をするので、あっという間に組み立て上がっていく。
屋根をふくときだけ、マナの木の周囲に回り込ませるのが少し難しかったくらいで、作業は順調に進んだ。
最後に窓にガラスをはめると一気に家らしくなる。
葉月は一旦下に降りて、作業台で扉を作ってから作業に戻る。
外から見ると屋根の上から木が生えているように見える。
部屋のど真ん中にマナの木が鎮座していて、森の民にとても相応しい気がした。
玄関扉をつけ、階段に手すりをつけて完成だ。
「素晴らしい……。これぞ我らのための住処じゃ」
「本当に」
感動に打ち震える二人をよそに、葉月は次の作業に取り掛かる。
「まだなにかを作るのでしょうか?」
「え、だって祭壇もいるんでしょ?」
「そうじゃったな!」
葉月は勢いに任せて隣のマナの木にもらせん階段を作る。
地面から四メートルほどの位置にデッキを作成し、周囲に手すりを巡らせた。
こちらはマナの木の真ん中ではなく、梁の端をマナの木に固定する片持ち梁にして作った。
一段高い場所も作って、祭壇に相応しい立派なキャンチバルコニーができた。
先ほど作った小屋とデッキの間に橋を架けて、往来可能なようにする。
「これで祭壇になるかな?」
「完璧じゃ! 森の民にこれ以上相応しい祭壇はない!」
ウルリヒはいそいそと荷物からなにかをごそごそと取り出し、飾りつけを始めた。
「じゃあ、アンネリーゼさんはベッドを運んでもらえるかな。その間に私は家具を作っておくから」
「了解しました」
「コハクは私のお手伝いをお願い」
アンネリーゼが葉月の家から昨夜作ったベッドをツリーハウスに運び入れている間に、葉月は次々と家具をクラフトしていく。
まずはストレージをタンス代わりにクラフトする。
できた家具はコハクとアンネリーゼが交代で運んでいく。
葉月はマナウォルナットを素材にしてテーブルと椅子を二脚、それからロッキングチェアを作った。
「シャー」
布の塊を抱えたクラウドが現れた。
「ん、なあに?」
今朝収穫したばかりの綿花でカーテンを作ったらしい。
これは新居に相応しいプレゼントになりそうだ。




