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箱庭の異世界でスローライフ万歳!  作者: Jade
村づくりを本格化させよう
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14日目. 新たな出会い

「ん~、見つからないねぇ」

「くまー」

「シャー」


 湿地の端まで横断してみたのだが、粘土が取れそうな場所が見つからない。

 泥が取れそうな場所ならばあるのだが、水分が多すぎて採取が難しい。


「あ、これなら何とかなるかも」


 葉月はインベントリから杖を取り出した。


「ちょっと離れててね」

「くまっ」

「シャ」


 従魔たちをうしろに下がらせて、葉月は杖を振った。


「ウォータだけど、こっちの水をあっちにやっちゃってー!」


 杖を振った瞬間、近場の水が勢いよく飛び出し、杖を指した方向へ向かって放たれた。

 葉月たちの周囲五メートルほどの水がなくなり、湿地の底が見えるようになっていた。


「おお~! これで採取できるね」

「くまくまっ!」

「シャシャー!」


 見えるようになった底では小さな魚や沼エビがぴちぴちと跳ねている。

 クラウドが目ざとく魚を見つけては捕まえていた。

 あまりの素早い動きに葉月は思わず見とれた。


「はっ、それより粘土を採取しないと!」

「くまっ!」


 周囲からは再び水が染み込み始めている。

 さっさと作業に取り掛からなければ、魔法を使った意味がなくなってしまう。

 葉月はコハクに手伝ってもらいつつ、採取していく。

 しかし五メートルほどの範囲では大した量を採取できない。

 葉月は移動して、再びウォータの魔法を使って水を抜くことを繰り返した。

 どうにかインベントリの二枠ほど分の粘土を確保することができた。

 どうやら一気にたくさんはとれそうにないので、何度か足を運んだ方がよさそうだ。


「シャー」


 クラウドが採取したエビと魚を葉月に渡してきた。


『名称:小魚。説明:たぶん川魚の稚魚。大きくなったら名前がわかる』


「鑑定結果、いい加減じゃない?」


 鑑定してみてもあいまいな結果しか表示されない。

 泥臭そうであまりおいしそうには見えないが、食べられるのだろうか?

 とりあえずインベントリに仕舞っておく。


「よし! 帰ろう」


 昼間ということもあり特に敵対MOBに襲われることもなく、無事に拠点へ帰り着いた。

 まずはクラウドに頼まれて、ため池の一つに捕まえた魚とエビを放流した。

 池でしばらく放し飼いにしておけば泥臭さが抜けるかもしれないと期待してのことだ。

 クラウドはさっそく綿花でなにかを作ってくれるらしく、地下の採掘場にこもっていた。

 コハクは養蜂作業に向かったので、葉月はソラと一緒に荷物を片づけることにした。

 粘土は一旦ストレージに仕舞っておく。

 田んぼはもう少し後になるので、レンコンもストレージへ。

 それから綿花を畑に植える。

 畑が手狭になってきたので、二面ほど拡張しておいた。

 畑を拡張し終えた葉月は、腰に手を当てて畑を眺める。


「んー、だいぶいい感じ」


 かなり拠点が出来上がってきている感じがした。


「よし。この調子で新居の基礎だけでも作っておこうかな?」


 ソラがぷよりと揺れて同意する。

 ふいにソラがびくりと跳ねあがった。


「ん、どうかした?」


 アカシアの木の間からチャッピーがすごい勢いで飛んで来る。

 コハクもチャッピーのあとを追って走って来る。


「え、え?」


 物々しい従魔たちの雰囲気に、葉月はうろたえた。


「ぐまっ!」

「ギシャー」


 クラウドも地下から上って来ている。

 従魔たちの様子からすると、敵対MOBが近くにいるのかもしれない。

 だが、昼間だということ、周囲に柵を巡らせてあることを考えると、考えにくい。

 従魔たちが視線向けている先に、葉月も目を凝らした。

 どうやらマナの森の方から何者かが近づいてきているのは間違いないようだ。

 葉月は念のため竹光を手にした。

 チャッピーがわずかに音のする方向に向かって突撃する。

 コハクとクラウドが前に出て、葉月を守るように陣取った。

 ソラは、葉月の肩で小刻みに揺れている。

 やがて森からふたりの人影が現れた。チャッピーが二人の上でぐるぐると飛んでいる。

 チャッピーの様子から、コハクとクラウドが少しだけ警戒を緩める。

 ゆっくりと歩み寄るふたりは、背の高い女性と、少し背の低いひげを生やした男性だった。

 葉月は五十メートルほど離れた場所にいる二人に向けて声をかけた。


「あの~、どちら様です?」

「我らは森の民。あまりに立派なマナの森を見つけ、どのような森かと調べに参りました次第。もしやあなた様がこの森の主であらせられますか?」


 背の高い女性が問いかけてくる。

 以前拠点に来襲してきたドラゴニアのフリードリヒとは態度が大違いだ。

 葉月は褒められている気がして、少し照れながら答える。


「あ、はい。私が植林したらちょっと大きくなり過ぎちゃって……」

「なんと! あなたがこのような立派な森を育てられたというのか!」


 女性はよく見ると耳が兎のように長く、尖っている。

 女性の隣で言葉を発していないひげを生やした男性の耳は、ふわふわとした髪に隠れてよく見えないが、とがっている。

 ときおり耳がぴくぴくと動く様子に、葉月はつい視線を向けてしまう。

 彼女たちはかなり友好的な様子である。

 従魔たちも先ほどよりは警戒を解いているようだ。


「もしよろしければご案内しましょうか?」

「それはぜひに!」

「あ、私は葉月と言います。この子たちは私の従魔で、ソラ、コハク、チャッピー、クラウドです」

「名乗り遅れて申し訳ありません。私は森の民でアンネリーゼ、こちらは私の祖父でウルリヒと申します」


 それまで黙ってアンネリーゼの隣にいた老人が口を開いた。


「ウルリヒじゃ。よしなに」

「じゃあ、まずはやっぱり森から案内しますね」


 葉月の出会った二人目の異世界人は森の民だった。

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