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箱庭の異世界でスローライフ万歳!  作者: Jade
村づくりを本格化させよう
39/64

11日目. 洞窟を見つけました

「キュイッキュイッ」


 更に北に進んでいくと、ふいに上空から甲高い鳴き声が聞こえた。

 葉月が空を見上げると、小さな黒っぽいものが空を飛んでいる。

 マナグラスで鑑定してみる。


『個体名:なし。種族:ケイブバット。魔法:闇。説明:洞窟に住むコウモリ』


 通常のMOBについては問題なく鑑定できるようだ。

 通常MOBについては、襲わない限りは反撃してくることはないので、無視で問題ない。

 しかも洞窟に住むケイブバットが近くにいるということは、葉月が目指す洞窟が近くにあるということに他ならない。

 周囲をよく見まわすと、岩の陰に怪しげな場所がある。

 葉月は周囲を警戒しながら進んだ。


「くまっ!」


 コハクが警告を発する。

 葉月は無言でうなずいて、岩に近づいた。

 地面に直径五メートルほどの穴が空いていて、階段状になっている。

 やはり地下へと続いているようだ。

 葉月は木刀を手に、慎重に穴の中に降りる。

 一気に視界が暗くなったので、たいまつを設置しつつ降りていく。

 二メートルほどの深さまで降りたところで、階段は途切れていた。

 周囲を見回すと、南北に地下道が続いている。道の幅は三メートルほどと、それほど広くない。

 葉月は石のブロックを降りた場所に設置し、その上にたいまつを置いた。

 石ブロックの上に置くことで、上から来たのだとわかるように目印にする。


「くまくま」

「ん? コハクが先に行ってくれるの?」

「くまっ!」

「じゃあ、お願いね」


 コハクが先頭を進んでくれるらしいので、葉月は従魔の自主性を尊重することにする。

 葉月の肩でソラがピョンピョンと跳ねる。


「うん。ソラも頼りにしてるよ」


 ソラがぷよりと揺れる。

 コハクが選んだのは北へと延びる道だった。

 葉月は十メートルほど進むたびにブロックとたいまつを設置する。たいまつはやって来た方向を指すようにして設置しておく。

 こうすれば視界を確保しつつ帰り道もわかるという寸法だ。

 石がむき出しの通路は少し肌寒い。

 そろそろ敵対MOBが現れる頃なのだが、未だに遭遇していない。


「キシャアアアア!」


 と、思っていたら敵対MOBが現れた。

 まだ距離が少しあるので、マナグラスで鑑定しておく。


『個体名:なし。種族:ケイブスパイダー。魔法:闇。説明:洞窟に住むクモ』


 これはゲーム内でも見たことのある敵対MOBだ。

 魔法を使えるとは知らなかったので、気を付けた方がいいかもしれない。


「ぐまー!」


 コハクがいつになく低い声を発しながらケイブスパイダーに向かって突進する。

 腕を振り上げ、鋭い爪でクモを切り裂く。


「ギシャァァァアア」

「こ、コハク~?」


 クモはあっさりとコハクの一撃によって葬り去られてしまう。

 これでは葉月が木刀の威力を確かめる機会がない。


「くまっ!」


 コハクはどやぁと言わんばかりに葉月の前で胸を反らしている。


「う、うん。助かったよ。ありがとうね。でも、次は私にも残しておいてくれると嬉しいな」

「くま!」


 コハクの返事は元気がいい。

 今度はソラが先頭を進む。

 少し移動速度は落ちるが、ソラにも活躍の機会は与えるべきだろう。

 ひとりと二匹はゆっくりと地下道を進む。


「キシャア!」


 でた。

 再びのケイブスパイダーである。

 今度はソラが果敢に飛びかかる。

 動きを封じ込めるようにクモに絡みついている。


「ソラ、そのままでお願いっ!」


 葉月はクモに向かって木刀を抜き放つ。

 木刀は勝手に葉月の手と体を動かして、クモを斬りつけた。

 ぐしゃりと殻がつぶれる嫌な感覚が手に伝わってくる。

 が、威力はそこそこ。

 腰から剣を抜く動作をするだけで、手が勝手に動いてくれるのがいい。

 しかもソラがクモの足止めをしてくれているので、かなり楽に戦える。

 斬るというよりは殴りつけるという感じだが、木刀なのでその辺は仕方のないことだろう。

 もう少し木刀の扱いに慣れてきたら、きちんと刃のついた刀にクラフトすればいい。

 今は木刀に慣れるのが先だった。

 一度納刀して再び抜き放つ。

 再び木刀が勝手に動いて、今度こそケイブスパイダーの息の根を止めた。


「ソラ、ありがとう。助かったよ」


 ソラは嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

 ケイブスパイダーがいた場所には、糸の束が落ちている。

 葉月はありがたくドロップ品を拾ってインベントリに仕舞う。

 剣道と違って居合であるため、刀が鞘に仕舞われた状態から、抜き放つ動作で攻撃を加える技術であるため、いちいち鞘に戻すのが少々面倒ではある。

 しかも両手ではなく片手で抜きながらの攻撃のため、万能ツールの剣に比べると攻撃力が低く、手数を多くしなければならないという弱点もある。

 けれど、なによりも勝手に動いて攻撃してくれるのは葉月にとって何よりも勝る利点であった。

 剣よりもリーチが長いのもいい。

 葉月は改めてこの刀剣MODの良さを実感していた。


「ソラ、この調子でお願いね。コハクは背後からの敵にも注意して」

「くまっ」


 索敵能力がほとんどない葉月が先頭を進むよりはましだろう。

 ソラ、葉月、コハクの順に地下通路を進む。

 少し広くなった場所で地下道は行き止まりになっていた。

 天井までは五メートルほどで

 ここにたどり着くまでに葉月はなんどかケイブスパイダーに遭遇したが、ソラの足止めのおかげで問題なく倒すことができた。


「ん~、こっちは行き止まりみたいだね。反対側を探索してみようか」

「くまっ!」


 みんなの意見がまとまったところで来た道を引き返すことにする。


「ぐまっ!!」


 コハクの警告に葉月が慌てて振り返ると、かなり大きなケイブスパイダーが天井から糸を垂らしながらぶら下がっていた。


「うわっ!」


 葉月は驚いて思わず飛び上がる。

 けれどなぜかケイブスパイダーは葉月たちに飛びかかってこない。

 コハクは警戒姿勢を崩さないものの、攻撃する様子がない。それはソラも同様だった。

 これはもしかして新たな従魔を得るチャンスなのではないだろうか。

 葉月はゆっくりと大きなケイブスパイダーに近づいた。

 ふとマナグラスで鑑定していないことに気付き、慌てて鑑定する。


『個体名:未定。種族:ケイブスパイダー。魔法:闇。説明:洞窟に住むクモ。状態:魅了』


「ん? 未定とか魅了って何だろう?」


 鑑定結果にいろいろと疑問はあるが、この場に答えられる者はいない。

 葉月はインベントリからクモが好みそうなものを探した。

 しかし葉月の記憶ではクモは小さな虫を食べて生きていた気がする。

 葉月が持っている食料の中でクモが好きそうなものなどあっただろうか。急に不安になる。

 りんごとオレンジ、ブドウを取り出してみる。

 クモにオレンジを差し出した時、ぎちぎちと口が動いた。

 どうやらクモはオレンジが好きらしい。

 オレンジを手渡すと、クモは皮ごとむしゃむしゃと食べてしまう。


「よし。君にも名前をつけてあげよう。ん~、クモだから雲で、クラウドかな?」


 ネーミングセンスはお察しである。

 早速マナグラスで鑑定してみる。


『個体名:クラウド。種族:ケイブスパイダー。魔法:闇。説明:葉月の従魔。洞窟の支配者。裁縫が得意』


「おお、裁縫が得意なのか」


 鑑定結果には名付けたばかりの名前もきちんと表示されている。

 説明が増えている。


「くまっ」


 ソラとコハクが葉月の手にしていたりんごとブドウを欲しがったので手渡した。

 念のためソラとコハクももう一度鑑定しておく。


『個体名:ソラ。種族:万能スライム。魔法:水。説明:葉月の従魔。なかなか人前に姿を現さない。錬金が得意』

『個体名:コハク。種族:ハニーベア。魔法:気。説明:葉月の従魔。森の守護者。養蜂が得意』


 よく見ると説明が増えていた。

 鑑定のレベルが上がっているからかもしれない。


「よし、皆でお家に帰ろうか」

「くまっ」

「シャー」


 ぷよりと揺れたソラ。

 葉月は洞窟探索を中断し、新たな仲間と共に拠点へ戻ることにした。


異世界移住11日目


経験:Lv.16→18

従魔:ソラ(スライム:Lv.16→18)+子分スライム×8(トイレ用)、コハク(ハニーベア:Lv.2→3)、チャッピー(ハニービー:Lv.2→3)、クラウド(ケイブスパイダー:Lv.1) New!

家畜:ニワトリ×3、ヒヨコ×1、はなこ(乳牛:雌)、太郎(乳牛:雄)、すみれ(乳牛:雌)、アルパカ


称号:開拓者、豆腐建築士、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家、武士みならい New!

スキル:土木:Lv.5、建築:Lv.7、農業:Lv.7、伐採:Lv.6、木工:Lv.12、採掘:Lv.7→8、調教:Lv.6、石工:Lv.5、料理:Lv.7、鍛冶:Lv.3、畜産:Lv.5、マナ:Lv.2、鑑定:Lv.1→3、居合:Lv.1→2



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