10日目. 新しい住民のお家を作ろう
拠点に帰ってきた葉月は、早速コハクとチャッピーの住居を作りに取り掛かる。
その間に、ソラにはニセアカシアの苗を植えてもらうことにする。
「ソラ、チャッピーと一緒にニセアカシアの苗を植えてきてくれる?」
ソラがぷよりと揺れ、チャッピーがぶんぶんと羽を鳴らした。
ソラは葉月から苗を受け取って、チャッピーが示した方向へ向かう。
「コハクは巣箱作りを手伝ってくれるよね?」
「くまっ!」
葉月は作業台の上に木材を取り出し、巣箱作りに取り掛かった。
「確か蒸し器を重ねたような感じだったよね……」
「くっくま」
「えっと、これくらいの大きさでいいのかなぁ?」
「くまくまくまくま……」
葉月は記憶を掘り起こしながら万能ツールを操り、コハクの指示を受けつつ、まずは木材で蒸し器よりも二周りほど大きな四角い枠を作っていく。
風通しをよくしないといけなかったはずなので、打ち付ける板の隙間をあけておく。
さらに枠の中に差し込んで使うための、仕切りとなる小さな枠も十個ほど作った。
この小さな枠にチャッピーが巣を作ってくれるらしい。
枠の間はチャッピーが歩いて通れる位の大きさでと、コハクの指示でクラフトする。
底と蓋についてもコハクの指示で取り外しができるようにした。
「ここだね」
「くまくまっ」
「はいはい。これでいい?」
「くま……」
「じゃあ、こう?」
「くまっ!」
とにかくコハクの指示に従ってクラフトしていく。
こうしてあまりにも四角いチャッピーの家が完成した。
豆腐建築士という不名誉な称号を思い出した葉月は、追加で巣箱の上に乗せられる三角屋根を作っておく。
これならば見栄えだけでなく、強すぎる日差しを適度に遮ってくれるだろう。
「うん、これならいいかな」
チャッピーとソラが植えたアカシアの苗の中心に巣箱を設置して、葉月は三角屋根を乗せた。
大型犬の犬小屋よりも大きな蜂の巣箱が完成した。
「チャッピーのお家の完成だよ!」
「くまっ!」
コハクが手を腰に当てて、どや顔をしているかと思えば、チャッピーがぶんぶんと羽を鳴らし、ソラがぷよりぷよりと揺れる。
葉月の従魔たちはかなり自己主張が激しい。
明日には苗が育って立派なニセアカシアの木に成長していることだろう。
チャッピーはさっそく巣の材料を集めるべく、飛んで行ってしまった。
やはりチャッピーはかなり自由な性格をしている。
「よーし、次はコハクの住処も作るよ!」
「くまっくまっ!」
葉月はストレージから家を増築するための材料を取り出した。
室内に作業台やかまどを入れたために、家がかなり手狭になっていたのでちょうどいいタイミングだった。
これまでのワンルームをLDKにして、寝室を新たに増築することにする。
本来であれば家を増築すると増築部分と既存の家との接続部分が傷みやすかったりするのだが、ここはゲームと同じ世界だ。
そこまで難しく考える必要もない。
「やるよ~!」
「くま~!」
いつものように地面を掘って、石で基礎を作る。土台を乗せ、床、柱、梁、壁を作っていく。
「ここに柱を立ててくれる?」
「くまっ」
コハクに頼むと、するすると柱を登りつつ、木材ブロックを接続してくれた。
足場を作らなくても作業が捗るのがありがたい。
「ソラ、こっち側の壁だけ壊してくれる?」
ソラがぷよりと揺れて壁の一部を吸収しにかかった。
今回は既存の家にL字形に接続するように増築したので、外壁だった一部を取り壊す必要があった。
ソラが壁を一面取り払ってくれたので、コハクには屋内の仕切り用の壁の作りなおしを手伝ってもらう。
新しいドアも取りつけた。
屋根は接続部分を考慮してきれいな切妻になるように一部を壊して作り直す。
二匹の従魔のおかげで劇的増築はあっという間に終了した。
「お疲れ様でした~」
「くま~」
葉月はベッドを新しい寝室に移動させた。
「チャッピーは巣箱でいいとして、コハクはどこで寝る?」
「くまっ!」
コハクは葉月のベッドをびしりと指した。
「コハクも一緒に寝るのでいいのね」
ソラが葉月の肩でぶるぶると揺れはじめた。
「え、ソラはいやなの?」
「く~ま~」
ソラの揺れ方を見ていると反対でもないが、賛成でもないようだ。
「えっと、ちょっと狭い?」
ぷより。
どうやら正解のようだ。
「だったら、この際ベッドをもう一つくっつけて大きくすればいいじゃない?」
「くまくま!」
ソラがぷよりと揺れ、コハクも賛成してくれた。
シングルベッドを二つ並べればそれなりに広く眠れるだろう。
葉月は作業台へ移動する。
「あ、だめだ」
「く~ま?」
「毛のブロックが足りない」
いざ作ろうとして、ベッドの材料となる毛が足りないことに気づく。
亜麻があればシーツは作れるが、中のふんわりとした詰め物は羊かアルパカの毛でなければ作れない。
こうなったら、もう一度アルパカの毛を取りに行くしかない。
「ソラ、毛を取りに行くからついてきてくれる?」
ソラがぴょんと葉月の肩に飛び乗る。
「くっくま!」
コハクもついて来る気いっぱいのようだ。
「じゃあ、コハクもお願い。チャッピーはどうするの?」
チャッピーはブンブンと羽を鳴らし、巣箱の上を八の字に飛行していた。
ここを守るということらしい。
「じゃあ、お留守番お願いね」
一人と二匹は以前アルパカを見かけた拠点のすぐ北に急行した。
数日前のことなので移動してしまった可能性もある。
葉月は陽が沈みかけ、少し暗くなってきた中を急いで歩く。
手には万能ツールの剣を持ち、肩ではソラが周囲を警戒してくれている。
コハクはあまり危機感がないのか、足取りも軽やかに葉月のうしろをついて来る。
「フエェェェェエ」
聞き覚えのある鳴き声が葉月の耳に届いた。
「いたー!」
「くま~!」
茶色の毛を持つアルパカがいた場所は以前とほとんど変わっていなかった。
数日前に葉月が採取したばかりのはずだが、万能ツールで採取したおかげなのか、すっかり毛は生えそろい、もこもことしている。
葉月は万能ツールを毛刈りばさみに変化させた。
「アルパカさん、ちょっと毛をもらうね~」
「フエェェェェエ」
アルパカは大人しく葉月に毛を刈られている。
「お前もうちに来てくれたら助かるんだけどね……」
「くまっくまっ」
「え? 連れて行こうって?」
コハクが拠点の方を指さしながら、期待するような目で見つめてくる。
ソラが葉月の肩でぷよりと揺れた。
「ファークラにアルパカはいなかったから、なにが好きかわからないんだよねぇ」
葉月はインベントリを漁って、麦わらとりんごを取り出した。
アルパカはりんごには反応しなかったが、麦わらを見せると、首を伸ばし、葉月の手から奪う様にもしゃもしゃと食べ始めた。
ステータス画面を開いて確認すると、家畜の欄に『アルパカ』の表示が増えていた。
「やった!」
喜ぶ葉月とコハクとは対照的に、ソラはなにか気に入らないことがあるようだ。
ぶるぶると震えている。
「え、どうしたの? ソラ」
ソラは震えるだけで、なにかを伝えようとはしない。
これは拗ねているのだろうか?
「あ、もしかして!」
葉月が先ほどインベントリから取り出したりんごを再び取り出すと、ソラの震えが止まった。
「はい、ソラ。今日もいろいろと協力ありがとうね」
今日は新しい従魔や家畜を得るために、りんごを見せるだけ見せておいて、ソラにはなにも上げていないことを思い出したのだ。
ソラはぷよりと揺れて、美味しそうにりんごを吸収し始めた。
「ソラでもすねるってことあるんだね」
葉月がソラの体をつつくと、ソラはりんごを食べながらかすかに赤くなった。




