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10日目. 魔法使いへの道は遠く

 採掘場から地上へと戻った葉月は、クラフトに必要な素材を残してストレージへ収納した。

 身軽になったところで、いよいよずっと試したかったマナストレージのクラフトに取り掛かる。

 とはいえ、マナストレージにはマナクリスタルと金が必要になる。

 金は先ほど採掘した金鉱石をかまどで精錬すればできることを知っていたが、マナクリスタルは敵対MOBのドロップ品であり、マナワンドを作るのに消費してしまっている。

 だが、葉月には試してみたいことがあった。

 採取したばかりのマナの土をかまどに入れ、石炭をセットする。

 隣のかまどでは同時に金の精錬を行う。

 しばらく待ってから、マナの土を入れたかまどを確認すると、予想通りマナクリスタルができていた。


「やっぱり、クラフトできるじゃない!」


 金インゴットもかまどから取り出し、葉月は作業台の上にマナクリスタルと金を並べた。

 マナの書にはマナワンドで軽く叩けば、クラフトできると書かれていた。

 葉月は万能ツールを仕舞って、インベントリから先日クラフトしたマナワンドを取り出す。


「行くよ?」


 葉月は肩で揺れているソラに声をかけた。

 ソラは葉月を励ますように、ぷよりと揺れた。

 葉月が杖で作業台に触れると、六角柱の形の結晶に金細工の装飾が施されたマナストレージが現れる。

 葉月は作業台にそっと手を伸ばし、マナストレージに触れた。

 すると、マナストレージはふっと掻き消えた。


「え? どこに行った?」


 葉月が周囲を見回してみるが、どこにもマナストレージは落ちていない。インベントリにもなかった。

 葉月はあせる。

 ソラが肩の上でぴょんぴょんと跳ねた。


「落ち着けって?」


 葉月はソラのアドバイスにしたがって深呼吸する。

 そしてステータスを確認していないことを思い出す。

 もしかして、何か変わっているかもしれない。

 ステータス画面を表示させた葉月は、そこに変化を見つけてほっとした。

 マナのレベルが上がっていたのだ。


「わー! やっとレベルが上がったよ!」


 葉月は思わずぴょんぴょんと跳ね上がって喜んだ。

 葉月の肩でもソラがぴょんぴょんと跳ねている。


「よーし、よし、よし! じゃあ、早速魔法を使ってみようか」


 葉月はマナの書を手に持ち、魔法の章のページを開いた。


「魔法を使うには……」



『魔法を使うにはマナが必要です。マナの溜まっている場所を探し出し、マナワンドをかざしてマナを集めましょう。

光、気、闇、火、水、土、無の七つの根源を集めて、魔法を使ってみましょう』



 マナの書を読み進めた葉月は、がっくり落ち込んだ。

 魔法を使うのはそう簡単ではないらしい。


「マナの溜まっている場所って、どこ?」


 葉月はマナの書の続きに目を通す。



『マナが見えない人でも、マナグラス使えばマナの溜まっている場所が見えるようになります』



「つまり、マナグラスを作らないとダメってことか……」


 葉月はぱらぱらとページをめくり、道具の章を開いた。

 マナグラスの作り方が載っている。


「なになに、ガラス、マナフラワー、マナの水、鉄インゴットがあればいいの?」


 マナの水は余っていた瓶に汲んできた分しかなく、足りるのか心もとない。

 ガラスにしてもいろいろと使ってしまったので、できれば補充しておきたい。

 マナフラワーと鉄インゴットについては余裕があった。


「ないなら取りに行くしかないね」


 葉月は装備を固め、マナの泉に水を汲みに行くことにした。

 今度は空き瓶ではなく、バケツをクラフトして持っていく。ガラスがないと空き瓶が作れないということもあるが、インベントリに入れておけばバケツの水がこぼれるということもないので、大量に液体を持ち運ぶにはバケツが一番だった。

 葉月は精錬したばかりの鉄インゴットをバケツにクラフトした。


「ソラ、行くよ!」


 葉月はマップを開き、拠点の南西にあるマナの泉に向かって旅立った。

 一度行った場所ということもあり、さほど時間をかけずにたどり着くことができた。途中で見つけたマナフラワーの採取も忘れずにしておいた。

 マナの泉に到着した葉月は、早速バケツで泉の水をくみ出す。

 バケツ二つ分くらいを確保して、ついでに付近を探索する。

 前回はこの泉のあたりで亜麻を採取できたので、葉月は今回もなにかないかと期待していた。

 そんなことを考えていたのがいけなかったのか、ふいにブーンという音が葉月の耳に届いた。


「ん?」


 耳元をブーンという羽音のようなものが通り過ぎる。

 一瞬過ぎてよく見えなかったが、こげ茶色っぽかった気がする。

 小鳥ほどの大きさだったが、葉月にはよく見えなかったのでわからない。

 ソラが葉月の肩の上で、臨戦態勢を取る。

 葉月は慌てて万能ツールを剣に変化させた。

 遠ざかった羽音が再び近づいて来る。

 葉月は剣を構え、接近に備えた。

 やがて高速の飛行物体が葉月の前に現れた。

 小鳥よりも大きいが、姿は確かにハチだった。

 雀蜂や足長蜂とも違う、どちらかと言えば熊蜂のようなずんぐりとした姿をしている。


「わ! やだ!」


 葉月の頭の周りをブンブンと音をたててハチが飛び回る。

 葉月が思わず手で振り払おうとしたため、ハチは更に攻撃的になって葉月の頭のあたりにまとわりついている。


「ソラ~! 助けて~!」


 完全に戦闘を放棄した葉月はソラに助けを求めた。

 ソラはハチが飛びかかってきた瞬間を狙いすまし、ハチを自分の身体でぐるりと包み込む。

 ハチは最初はブンブンと元気よく羽を動かしていたが、ソラの身体に頭を包み込まれている所為か、次第に大人しくなってくる。

 ハチが完全に羽を動かすのをやめたところで、ソラはハチを包み込んだまま地面に飛び降りた。

 ソラが拘束を解いて地面に転がしても、ハチは動かずじっとしていた。


「し、死んじゃった?」


 ソラはぶるぶると震えて否定する。

 とりあえず身の危険は去ったようだ。

 葉月はほっと胸をなでおろした。

 けれどソラがびくりと震え、再び臨戦態勢を取る。


「え、なに? まだいるの?」


 今度はガサゴソと草をかき分ける音が近づいていた。

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