1日目. ステータスを確認します
「ふう……」
一仕事を終えた葉月は大きく息をついた。
グゥとおなかが鳴って、おなかがすいていることに気づく。
ゲームでは採取やクラフトなどの行動をすると空腹になる空腹度システムがあったが、この世界でもそれは変わらないようだ。
とはいえ、何か行動すればおなかがすくのは人間として当たり前の行動だ。
(一応、確認しておこうかな?)
葉月が持ち物一覧ではなく、ステータス画面が表示されるように念ずると、ファークラと同じステータス画面が目前に展開される。
ステータス画面とはいっても、確認できるのは装備の一覧、毒などのステータス異常状態、空腹度と体力ゲージくらいだった。
葉月が予想していた通り、空腹度を示す十個の丸の内、半分の五個が塗りつぶされ、残りは枠だけが表示されていた。つまり空腹度は5/10なので、五割ということだ。
葉月はインベントリを開くと、りんごを取り出した。
空腹度を回復するには食物を摂取するしか方法はない。ゲームではりんご一つでゲージが一つ半くらい回復するが、特に農業やクラフトをしなくても入手可能なりんごは、序盤では大変お世話になる食料の一つである。
真っ赤なりんごはなんの品種なのか葉月にはわからない。が、要は食べられれば良いのだ。この世界でもりんごはちゃんとりんごなのか確認がてら、葉月は皮も剥かずにかじりつく。
しゃくりとした食感は、この世界でも変わらない。甘みと酸味のバランスもほどよく、なかなかおいしい。
おなかがすいていたこともあって、あっという間にりんごを食べ終えた葉月は、芯の部分に種が入っていることに気づいた。
(もしかしてこの種、育てられるかも……)
インベントリからスコップを取り出して、ナイフに変じるように念ずる。
ゲームではナイフというツールはなかったが、神様がくれたチートなツールなら……と思った瞬間、予想通りスコップは果物ナイフに変じた。
ゲーム内でこれだけツールを揃えるとなると、インベントリを占有してしまう。インベントリに入るアイテム数には上限があり、何を入れるのかはいつも悩みどころだった。
だがこのツールならば一つで何役もこなしてくれそうだし、インベントリを占有することもない。しかもゲームの仕様にない道具も再現してくれるのだ。
(神様、ありがと)
葉月はこのツールのことを万能ツールと呼ぶことにした。
早速ナイフを使って芯からりんごの種を取り出す。種はインベントリにしまって、食べくずは地面に穴を掘って埋める。
(あ、そういえば空腹度確認してなかった)
今度はステータス画面を表示する。
空腹度は7/10に回復していた。ゲームよりは少し回復量が多いのかもしれない。
ステータスの表示を確認していると、見慣れない項目があることに気づく。
(称号、スキル?)
ファークラではスキルや称号などのシステムは実装されていなかったが、これもMODの一部なのかもしれない。
称号欄には『移住者』とある。
異世界に移住したばかりなので、確かにこの称号は正しいだろう。
次にスキル欄に目を向ける。そこには『土木:Lv.1』とあった。
(ど、土木? って、あれかぁ!)
先ほど無意味に五十メートルほど穴を掘り、埋めたことが土木のスキルに該当するのだと葉月はあたりをつける。
(まあ、あっても困らないよね。きっと、うん)
土木スキルがどのような効果があるのかわからない以上、少しずつ実験を重ねて確認していくしかない。
葉月はステータス画面を閉じる。
空を見上げると太陽は真上に位置していた。
ファークラの世界では夜になると敵対MOBが発生し、攻撃を受けると体力を消耗し、最悪の場合死ぬこともある。なのでプレイヤーがすべき第一の目的は夜をやり過ごす為の拠点の確保となる。
日が落ちるまであと半日。それまでに、土でも木でもなんでもいいので、とにかく夜をやり過ごす場所を作らなければ、待っているのは死のみだ。