8日目. 味噌を仕込みつつマナについて学んでみよう
葉月は味噌作りを再開させた。
吸水させた麦を蒸したあと、麹菌をつけて一定の温度を保てばよかったはずだ。
葉月はテレビ番組で見た味噌作りの手順を思い起こす。
「あ、蒸し器が無い」
葉月は慌てて木材で蒸篭とふたをクラフトする。
それから蒸すためのガーゼっぽい布が必要になる。
「いろいろと準備が抜けてるなぁ……」
葉月は亜麻の茎をインベントリから取り出してクラフトし、繊維を取り出す。
繊維を縦方向と横方向に重ねてクラフトすれば、布の完成だ。
ソラは葉月の作業が気になっているのか、肩の上で揺れながら様子を見守っている。
麦の吸水を待つ間に、大豆の準備にとりかかる。
葉月は大豆を洗って、吸水のため桶につけておく。
一晩ほど吸水させたあと、大豆を茹でてつぶし、塩、麦麹を混ぜて樽で熟成させれば味噌になるはずだ。
かまどに石炭をセットして、鍋に水を張り、蒸篭を乗せる。
蒸篭の底に布を敷き、麦を入れ、ふたをしてかまどに火をつけた。
どれくらい蒸せばいいのか覚えていないので、その辺はフィーリングでやってみるしかない。
蒸し上がりを待つ間に、葉月は昨日手に入れたマナ関連のアイテムをクラフトすることにした。
先ほど作った繊維をカットしてクラフトすると、巻物っぽい紙ができた。
巻物とビンに入ったマナの水をクラフトしてみる。
が、反応がない。
どうやら材料が足りないようだ。こうなったら総当りだ。
マナデイジー、マナアスター、マナローズ、マナダリアを順番に追加してクラフトしてみる。
巻物、マナの水、マナローズを合わせてクラフトした瞬間、一冊の本が出来上がった。
黒色の装丁の本を開けば、目次らしきものがあった。ルーン文字のような直線を組み合わせたような文字が並んでいる。
「よ、読めないんだけど……」
葉月はぶるぶると震えた。
そばで見ていたソラも葉月のまねをして震えた。
「神様、そりゃないよ……」
魔法が使えるという期待がみるみるしぼんでいく。
葉月が未練がましく書かれている文字を指でなぞると、頭の中に何かが浮かび上がってくる。
「え? 嘘……!」
読むことはできないが、文字をなぞれば意味が頭に流れ込んできた。
マナについての説明、使い方、ため方などが書かれているようだ。
葉月はさっそく『はじめに』と書かれているページを開く。
『マナとは、魔法を使うために必要な力です。』
「ふんふん。やっぱり魔法に関係しているんだね」
『魔法を使うには、マナをためておく器官とマナを発動させるための器官が必要です。』
ここまで読み進めた葉月は絶望に目の前が真っ暗になった。
ただの人間でしかない葉月には、マナを扱うための器官などあるはずが無い。
『生まれつきそういった器官を持っている種族もいますが、もしあなたが持っていなくても大丈夫。
なければ作ればいいのです。
このマナの書ではマナを扱うための道具の作り方も説明しています。』
「だったら、早くそう言ってよ」
葉月は突っ込みを入れつつマナの書を読み進めた。
『道具の章ではマナをためておくためのマナストレージ、マナを発動させるマナワンドの作り方を紹介します。
魔法の章では実際にマナを魔法として発動させるための知識について触れます。
この書を読み終える頃には、あなたもきっと立派なマナ使いになっていることでしょう。』
「マナ使いか……。ふふふ」
葉月の口から思わず笑いがこぼれた。
葉月の肩に乗っていたソラが、葉月の不審な様子にビクリと体を強張らせている。
「でもどんな魔法が使えるのかは大事だよね」
葉月はマナの書をめくって、魔法の章を開く。
そこには簡単な魔法の説明が載っていた。
魔法には、『火・気・水・土・光・闇・無』の七つの根源があり、これらの根源を組み合わせることによって魔法を使うことができるらしい。
たとえば明かりを灯す魔法ならば火まはた光の根源を持つマナを使えば使うことができるらしい。
火の根源を使った場合、光と同時に熱も発生するので、熱を発生させたくない場合は光の根源を使ったほうがいいらしい。
なかなか根源を使いこなすのは難しそうだ。
「とりあえず、ストレージを作ってみればいいか」
葉月は道具の章を開いた。
「マナストレージを作るには……っと」
マナクリスタルと金が必要だとある。
「金……」
マナクリスタルは昨日入手したものがあるので使えそうだが、金は採掘しなければ入手できない。
どうやらマナストレージのクラフトはお預けのようだった。
ならばと、マナワンドのレシピも確認する。
マナクリスタルのほかにマナフラワー、マナの水、マナの土のいずれかと棒があれば作れるようだ。
マナフラワーとは昨日葉月が入手したマナデイジー、マナアスター、マナローズ、マナダリアなどの花のことらしい。
マナクリスタルは一つしかないので、マナワンドを作ってしまうとストレージは作れなくなってしまう。
「ま、いいか。作ってみよう」
例えば光の根源を含むマナデイジーと、気の根源を含むマナアスターを使って杖を作れば、光と木の魔法が使えるということらしい。
つまりは根源を含む素材を使って作ればいいらしい。
棒は木でも金属でもいいが、木よりも鉄、鉄よりも金のほうが魔法の威力が強まるとある。
「ま、最初だから木でいいか……」
葉月は手持ちの素材から使えそうなものを選び出し、作業台の上に並べていく。
木の棒、マナデイジー、マナアスター、マナローズ、マナダリア、マナの水をクラフトする。
すると指揮棒のような、飾り気のない杖が出来上がった。
「まあ、マナストレージがないからインベントリの肥やしだね」
葉月は一旦マナ関連のクラフトを保留にして、味噌作りを再開させた。
蒸篭のふたを外し、麦を少しつまんで食べてみる。
どうやら蒸しあがったようだ。
麦を蒸篭から取り出して作業台の上に移動させる。
「さて、テレビだと種麹を混ぜていた気がするんだけど……。種麹を作るしかないか……」
葉月はかまどに麦わらを入れて燃やし、灰を作った。
麦の穂自体に麹菌が含まれていると聞いたことがある。が、そのままだとほか菌も一緒に増えるので灰を混ぜると、麹菌のみが生き残るのだと聞いたことがある。
葉月は万能ツールをしゃもじに変化させ、蒸した麦に灰を混ぜ込んでみる。
蒸した布で麦を包んで、部屋の中でもかまどに近い温かな場所に置いておく。
明日になれば、成功か失敗かはわかるだろう。
今日のクラフトはここまでだ。
異世界移住8日目
経験:Lv.22→25
従魔:ソラ(スライム:Lv.9→12)+子分スライム×8(トイレ用)
家畜:ニワトリ×3、はなこ(乳牛:雌)、太郎(乳牛:雄)、乳牛
称号:開拓者、豆腐建築士、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家
スキル:土木:Lv.4→5、建築:Lv.6、農業:Lv.6、伐採:Lv.5、木工:Lv.9→10、採掘:Lv.5、調教:Lv.4、石工:Lv.4→5、料理:Lv.5、鍛冶:Lv.3、畜産:Lv.4、マナ:Lv.0→1




