表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/64

8日目. 今日はのんびりの日

 目が覚めると、かすかに水の音が聞こえていた。


「雨か……」


 目を開けると、ソラが布団の中でぷよぷよと揺れている。

 葉月はソラを起こさないように、そっと布団を除け、ベッドを離れた。

 窓の外を見れば、細い糸のような雨が降っている。

 今日は家の外の作業は最小限にして、家の中でできることをすることにする。

 雨が降っていても、家畜の世話と野菜の収穫は待ってはくれない。

 葉月は鶏小屋に足を踏み入れた。


「コケーッ」


 ニワトリたちが葉月にまとわりついてくる。

 少しは葉月に慣れてくれたのだろうか。

 床の麦わらを交換していると、今日もタマゴが落ちていた。あとで頂こう。

 水を入れ替え、エサ箱を綺麗にしてから新しいキャベツとトウモロコシを入れておく。

 ニワトリたちはすぐにエサに群がった。

 葉月はニワトリたちを横目に牛小屋へ向かった。


「太郎~、はなこ~!」

「ブモモモモー」


 葉月が声をかけると、三頭の牛が近寄ってきた。


「おはよう~。って、大きくなったね」


 昨日まで子牛だったのが、すっかり大きくなっていた。

 太郎とはなこの子は甘えるように葉月に鼻先をすり寄せてくる。


「性別がわかったら、名前を付けてあげようね」

「ブモー」


 葉月の声に応えるように、子牛が鳴く。

 牛小屋の水も交換して、エサ箱を綺麗にしてから新しい麦わらを入れる。

 トウモロコシをインベントリから取り出すと、かなり反応していたのでこれもエサ箱に入れておく。

 牛たちがエサを食べている間に乳絞りをしようと思っていた葉月は、ふと気づいて声を上げた。


「ソラがいないんだった……」


 ソラを起こさずに来てしまったため、乳しぼり要員がいない。

 はなこの乳はパンパンに張っていて辛そうに見える。

 葉月がどうしようか戸惑っていると、背後からぽよんぽよんと跳ねる音が聞こえてきた。


「ソラ、起きたんだ」


 ソラはぴょんと跳ねて葉月の肩に飛び乗った。が、いつもと様子が違っている。

 ソラはとげとげしく体を変形させながら、葉月の頬をつついた。


「え、なに? 拗ねてるの?」


 ぷよりとソラが揺れる。

 葉月の推測は間違っていないようだ。


「え、どうして? 起こさなかったから?」


 再びソラが揺れる。


「ふふ。ごめんごめん。次からはちゃんと起こすね」


 葉月がそう言うと、ソラはようやく頬をつつくのをやめてくれた。


「よし、じゃあお寝坊のソラに早速お願い。乳しぼりをお願いできる?」


 ソラはぷよりと揺れて、葉月の肩から飛び降りた。

 葉月が桶をはなこのお腹の下にセットすると、ソラがはなこの胸に飛びついた。

 ソラのおかげで今日もたくさんの牛乳が採取できた。

 葉月は牛乳をインベントリに収納して、畑に移動した。

 ソラが飛び跳ねつつ、葉月のうしろをついてくる。

 いつものように野菜を収穫して種をクラフトする。できた種をソラに渡し、葉月が畑を耕すと、ソラが種まきをする。

 かなり良いチームワークができてきた。

 ちなみに今日の謎の種はなんと大豆だった。

 大豆があれば枝豆ができるし、味噌や豆腐が作れるだろう。

 葉月は一気にやる気が出てきた。

 この調子で、砂糖が採れるサトウキビかテンサイが生えてくれることを期待して、葉月は謎の種を植えた。

 ついでに昨日採取した亜麻の種も植えておく。亜麻が増えれば繊維が取れるので麻の服や紙が作れるし、種からは油が採れる。亜麻はぜひとも増やしたい植物の一つだった。

 しかしここにきて、あまり畑を増やしすぎると、世話が行き届かない可能性が出てきた。

 食料はどれほどあっても困ることは無いし、気候が変わって冬が来たら農作業が難しくなる可能性もある。葉月は万全の備えをしておきたかった。

 人手についてはあとでゆっくりと考えることにする。

 アボカドとりんごの収穫も忘れずにしておいた。

 ソラのおかげで思ったよりも作業が捗ったので、植林も済ませてしまうことにする。

 新しい建物を作ろうとするなら木材は必須なので、木材もできるだけ多く確保しておきたいところだ。

 どんぐりを採取してからナラの木を切り、葉月が地面を耕す。ソラがどんぐりを植えていく。

 かなりこの作業にも慣れてきた。

 日課をすべて済ませてから、葉月はソラと共に家に戻った。

 家の中に入ると、さっそくソラが雨に濡れた葉月の身体に飛びついて、ぐっしょりとしていた服から水分を吸収してくれた。


「ソラ、助かるよ。ありがとう」


 葉月は全身の水分をソラに吸収してもらい、すっかり快適な状態に戻る。

 ソラの身体はいつもより少し大きくなっていた。


「さて、今日は雨だし、お家でのんびりしようか」


 ソラが揺れて同意する。

 万能ツールをタブレットに変化させ、TODOリストを表示させた。

 最初に立てた目標は、お風呂以外はおおよそ達成している。

 新たに魔法が使えるようになったらしいことも含め、再度目標を立て直すことにした。

 

<短期目標>

1.お風呂に入りたい。

2.着替えとインテリア充実のため、羊毛などの布の材料が欲しい。

3.家畜と植林と野菜の世話にもう少し人手が欲しい。

4.魔法を使えるようにする。

5.肉か魚が食べたい。

6.調味料を増やしたい。


<長期目標>

1.近くに人が住んでいないか調査する。

2.住人を増やしたい。


「こんなところかな?」


 葉月は元の目標を消し、新たな目標を書き込んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ