7日目. なにかが増えた……はず
一夜明けて、葉月は新MOD導入に向けて意気込んでいた。
まずは木材の採取と植林。それから野菜の収穫に取り掛かる。
ソラと一緒に畑に向かうと、謎の木が生えていた。
「ね、ソラ。あれなんだと思う?」
ソラが葉月の肩でぷよぷよと揺れた。
「まあ、わからないよね」
葉月が木に近づくと、黒っぽい手のひらほどの大きさの、ごつごつとした実がなっている。
今日の謎の種はアボカドだったようだ。
アボカドを野菜に分類してもいいのかわからないが、脂質も多く、ここでアボカドを手に入れられたのは幸運だった。
実の中の種から油が取れるはずなので、食生活の改善に期待が持てる。
いいこと尽くめのようだが、葉月には一つ心配な点があった。
幸いにもアボカドの木がほかの畝を押しつぶすようなことにはならなかったが、今後起こらないとも限らない。
謎の種を植えるときはほかの畑から少し離して植えることを心に誓う。
アボカドを収穫し、木は邪魔なので切り倒して切り株も掘り起こした。
アボカドの木からアボカドの種が取れたので、りんごと同じように大きな畑を用意し、種を植え替えておく。
野菜の収穫も終え、とりあえずはインベントリに仕舞う。
「次は家畜のチェックだね」
鶏小屋を確認すると、白い鳥が小屋の中を元気に駆け回っていた。
一日で黄色いヒヨコがニワトリに成長していた。
床の麦わらと飲み水を交換し、エサとなるキャベツもえさ箱に入れた。とうもろこしをインベントリから取り出すと、すごい勢いで食いついてきたので、一緒に入れておく。
麦わらの交換をしていたときに小屋の隅にタマゴが転がっているのを発見した。ニワトリのうち少なくとも一羽は雌のようだ。卵はあとでありがたく朝食にさせていただく。
次にチェックした牛小屋では子牛が生まれていた。
どうやら牛二頭は雄と雌のカップルだったらしい。片方の牛の乳房が膨らんでいた。
「よし、お前の名前は『はなこ』ね! で、雄のほうは……『太郎』でいいか」
葉月にはネーミングセンスが欠如していた。
雌はひらがなで、雄は漢字で命名することだけは決めてあった。ソラは……性別不明なのでカタカナで問題ないだろう。
ニワトリは雄と雌の見分けがつかなかったので、命名を保留にする。
子牛も同じ理由で保留にした。
葉月は木材で桶をクラフトし、牛乳を搾ってみることにした。
「動かないでね~」
はなこに声をかけ、葉月は乳房に手を伸ばした。
だが、葉月がいくら乳房を絞っても牛乳は一滴も出てこない。
見かねたソラがはなこの乳房に飛びつくと、桶の中に勢いよく牛乳が噴き出した。
「……ソラ、乳搾りはお願いしてもいい?」
ソラは牛の乳に取り付いたまま、ぷよりと震えた。
どうやら葉月には乳絞りの才能も無いようだ。
搾乳した牛乳はガラス瓶に移し、インベントリに仕舞った。
インベントリ内では時間が止まっているので腐ることは無いが、冷やす機能が無いので、冷たい牛乳が飲めない。
葉月は冷蔵庫のクラフトの可能性を真剣に考え始めた。
若干のハプニングはあったものの、本日のメインイベントにとりかかる。
その前に鉄インゴットを使って、全身分の装備をクラフトしておくことも忘れない。
ストックしておいた鉄インゴットを全て使い果たしてしまったが、背に腹は変えられなかった。
これだけ装備を整えておけば、敵対MODが出現したとしても、すぐに命の危険は無い。
たとえ臆病剣士の称号が進化しようとも、ここだけは譲れなかった。
「ソラ、準備をよろしくね」
ソラは任せておけと言わんばかりに、葉月の肩の上でぷよりとゆれた。
葉月はステータス画面を表示させ、『Yes』を選択した。
『経験値を消費して、新たなMODを追加しますか?』 ▲Yes △No
葉月は万能ツールの剣を構え、何が起こるのかとわくわくしていたが、しばらく待っても何かが起こる気配は無かった。
スキル名称を整理しました。
異世界移住7日目
空腹度:●●●●●●●●●●
体力:●●●●●●●●●●
経験:Lv.30→20
従魔:ソラ(スライム:Lv.7→8)+子分スライム×8(トイレ用)
家畜:ヒヨコ→ニワトリ×3 New!、はなこ(乳牛:雌)、太郎(乳牛:雄)、子牛 New!
<装備>
頭部:アイアンヘルム New!
腹部:アイアンアーマー New!
脚部:アイアンブーツ New!
装飾品:なし
右手:万能ツール(剣)
左手:アイアンガントレット New!
称号:移住者 (初心者)→開拓者、豆腐建築士、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家
スキル:土木:Lv.4、建築:Lv.6、(農家改め)農業:Lv.4、(木こり改め)伐採:Lv.4、(大工改め)木工:Lv.9、採掘:Lv.5、調教:Lv.3、石工:Lv.4、料理:Lv.4、鍛冶:Lv.1→3、畜産:Lv.2→3




