6日目. 家畜がほしい
異世界に移住してから六日が過ぎたが、今日も快晴だった。
今朝は収穫可能な野菜にとうもろこしが追加された。
とうもろこしがあれば家畜の飼料にもできそうなので、たんぱく質を補充すべく、葉月は探索に出ることにした。
野生の牛、ブタ、羊、鶏などが葉月のターゲットとする家畜だ。
家畜が好みそうな野菜をいくつかインベントリに移しておく。
家畜の飼料も兼ねて、畑を開墾しておくことも忘れない。
万能ツールのお陰なのか、それとも異世界の所為なのかはわからないが、今のところ葉月の畑に連作障害は発生していない。
特に問題も無いのでそのままにしておく。
ナラの木も伐採し、また植林する。
ここまでが朝の日課だ。
いつものようにりんごとイチゴで朝食を済ませてから、今日の行動を開始する。
残っていた鉄インゴットをクラフトして、おろし金を作った。
インベントリの中にはガラスが無かったので、ストレージから砂を取り出して、かまどに入れ、ガラスの塊を生成する。
出来上がった塊を作業台に移して、ガラス瓶をいくつか作っておいた。
葉月はさっそくおろし金でりんごをすりおろし、ガラス瓶に詰めて密閉させた。
うまくいけば酵母が取れるので、パンが作れるようになる。
次は家畜を入れるための囲いを作る。
追加した畑も囲いたいので、木材を多めに加工して柵を作った。
ここまでの作業を終えてから、葉月はソラを供に探索に出発した。
これまで発見できているのは拠点の北側では、スギの森とアルパカ。
東側には砂と川。
南東の方角に岩場、そして従魔となったソラ。
南側には葉月が最初にこの異世界に転移してきた場所がある。
西側だけが未探索のままになっていた。
そんなわけで、今日は拠点の西側へ探索に向かうことにした。
タブレットを片手にマップを見ながら進む。
西側はのどかな草原が続いていた。
「なかなかいないね~」
探すとなると牛やブタの影も形も見つからず、葉月の口からは思わず愚痴が漏れた。
葉月の話し相手であるソラは、彼女に同意するようにぷよりと揺れた。
不意に、ソラが細長く体の形を変えた。
勢いをつけて葉月の肩から飛び降りて、草むらへ向かってすごいスピードで移動し始める。
「ちょっと、ソラ? どうしたの?」
葉月はソラの後を追って駆け出した。
ソラが草むらの向こうに姿を消す。
葉月はソラが消えたあたりの草を掻き分けた。
そこには、ソラに捕獲されているヒヨコの姿があった。
「ピヨピヨ」
手のひらほどのヒヨコが三羽、ソラの体に取り込まれるようにして拘束されている。
ヒヨコの顔だけがスライムの体から飛び出している状況は、傍から見るとかなりシュールだった。
「ソラ、ナイス!」
葉月はインベントリからキャベツを取り出し、ヒヨコに差し出す。
ヒヨコも最初は慌てふためいていたが、キャベツに気づくと動きを止めた。
「ソラ、放していいよ」
ソラから開放されたヒヨコは、もう逃げようとはしなかった。
キャベツをヒヨコたちの前に置けば、争うようにつつき始める。
葉月がステータス画面を開いて確認すると、『家畜:ヒヨコ×3』の記載が増えていた。
「やった!」
キャベツを食べ終えたヒヨコたちは葉月の周りをぐるぐると回っている。
葉月が歩けば後ろをついてくるようになったので、一旦拠点へと戻ることにした。
ソラが慌てて葉月の肩に飛び乗る。
葉月とソラ、そして三匹のヒヨコたちはゆっくりと歩いて拠点へと帰ってきた。
葉月は土製の小屋をヒヨコの住処にすることにする。
インベントリに仕舞っておいた麦わらを取り出し、小屋の床に敷き詰める。
木材をクラフトし、底の浅い木の箱を二つ作った。
木の箱は小屋の中に設置して、飲み水を入れておく。もう一つはえさとなる野菜などを入れておくための箱にした。
ヒヨコが育ってタマゴを産んでくれることを、葉月は大いに期待していた。
出入り口を塞いでいた玄関扉はフェンスゲートに置き換えた。もちろんヒヨコたちが逃げ出さないように、小屋の周囲はしっかりと柵で囲った。
異世界移住6日目
空腹度:●●●●●●●○○○
体力:●●●●●●●●●●
経験:Lv.29→30
従魔:ソラ(スライム:Lv.6)+子分スライム×8(トイレ用)
家畜:ヒヨコ×3 New!
称号:移住者 (初心者)、豆腐建築士、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家
スキル:土木:Lv.4、建築:Lv.5、農家:Lv.3→4、木こり:Lv.4、大工:Lv.8→9、採掘:Lv.5、調教:Lv.3、石工:Lv.3、料理:Lv.3、鍛冶:Lv.1、畜産:Lv.1 New!




