3日目. 空色だからソラ!
スライムの体に取り込まれたりんごはじわじわと姿を消していく。
食事を終えたスライムの体は、心なしか艶々としているように見えた。
満足そうにぷよりぷよりと体を揺らせているスライムに、葉月はクスリと笑った。
「ね、私と一緒に来る? りんご以外にも食べるものあるし……」
一人で過ごすのは嫌いではないが、独り言が増えてしまうのも悲しい。
スライムがいれば、少しは生活が楽しくなるかもしれないと、葉月は気がつけばそんなを提案していた。
スライムはぴょんと驚いたように飛び跳ねたあと、ぷよりとゆれた。
おそらく返事はYesだ。
「よーし、じゃあ名前を決めようか!」
スライムがぷよりとゆれる。
葉月は少し考えて、名前の候補を口にする。
「私名前付けるの苦手なんだよなぁ……。さすがにポチとかタマじゃダメだよね?」
スライムはぶるぶると体を震わせる。
「えっと、スラりん、もダメだし……。うーん、体が水色だからミズ……じゃ、ちょっとなぁ」
スライムはずっと震えている。
「うーん、空色だからソラはどう?」
スライムはぷよりとゆれた。
あまり発想方法は変わっていないが、どうやらお許しが出たようだ。妥協の産物かもしれないが。
ステータス画面を表示して確認すると、従魔の記載が増えていた。
スライム、改め、ソラはこうして葉月の従魔となった。
「よし! 君はソラだね。さあ、お家に帰るよ!」
葉月が声を掛けると、ソラはぴょんと飛び上がって、葉月の肩に乗った。けれど、さほど重さを感じない。
大きさがサッカーボールほどだが、中身が詰まっているような見た目に反して重さはサッカーボールほどしかない。
葉月はタブレットを片手に、肩にはソラを乗せ、拠点に向かって歩き始めた。
帰りはまっすぐに拠点を目指したので、一時間ほどで帰ってくることができた。
ソラと友好を深めるのもいいが、今日は先にしたいことがある。
「ソラはこの辺で遊んでいてくれる? 柵の中なら安全だと思うよ?」
ソラは葉月の肩からぴょんと飛び降りると、ぽよぽよと弾みながら拠点の探索を始めた。
葉月はソラを見送って、作業台に向かった。
まずはインベントリのナラの丸太を木材に加工する。
今日は砂も採取してきたので、新たにそのためのストレージを作成しなければならない。
葉月はナラの木材からストレージを三つほど作成し、すでにあるストレージの隣に並べた。
インベントリの石と砂を全てストレージに収納してから、丸太を全て木材にクラフトする。
できた木材も一旦新たにクラフトしたストレージに収納した。
インベントリの中がすっきりした。
次はどんぐりのついた枝を取り出す。
どんぐりは手で取って、残った枝は適当な大きさに切っておく。あとで焚き付けにでも使えばいいだろう。
全部で二十個ほど採取できたどんぐりは、柵の外側に一定の間隔をあけて植えた。
万能ツールで耕した場所に植えたので、明日には木が生えているはずだ。
この植林が成功すれば、当分木材に困ることはなくなるだろう。
「よし、次はかまどだね」
ストレージから石材を多めに取り出し、葉月は再び作業台に向かった。
石材を八個作業台の上に置き、ハンマーで叩く。
次の瞬間、作業台の上にはかまどが完成していた。
これでようやく火が使えるようになった。
かまどは上下に二つの部屋に分かれていて、上の部分はオーブンとして使えるようになっている。
葉月は全部で四つのかまどをクラフトし、三つは外に、もう一つは小屋の中に設置した。
外に設置したかまどには木材を上の段に入れ、下の段にはナラの枝を投入する。
下の段に入った枝に万能ツールを火打石に変化させ、火をつける。
本来ならば火口と呼ばれる火のつきやすい乾いたキノコや麻の繊維などに火をつけてから、枝に火を移す必要があるのだが、万能ツールの補正のおかげで、簡単に枝に火がつく。
もう一つのかまどにも同様に木材を投入し、火をつけた。
これで木炭ができる。木材でも煮炊きは可能だが、燃料のもちがまったく違うので木材にしたほうが断然いいのだ。
あとは鍋があればお湯が沸かせるのだが、残念ながら万能ツールを鍋に変化させることはできなかった。
「うーん、お風呂はまだ無理かぁ……」
がっくりと葉月はうなだれた。
異世界移住3日目
空腹度:●●●●●●●●○○
体力:●●●●●●●●●●
経験:Lv.23
従魔:ソラ(スライム:Lv.1) New!
称号:移住者 (かけだし)、豆腐建築士、臆病剣士、ソラの飼い主 New!
スキル:土木:Lv.3、建築:Lv.1、農家:Lv.2、木こり:Lv.3、大工:Lv.3、採掘:Lv.2、調教:Lv.1 New!、石工:Lv.1 New!




