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率直な海

作者: rutu


暑い日差しを割って歩く。

一歩、二歩。


時間が後についてくる。


見慣れた街はなかなか目に入らない。


ただ見えるのは慣れない人、人。


その間を鳩が歩く、歩く。

雲がぐっと近づいて、涼しくなった。



前のカップルを追い越す。

ぐんぐん前へ加速していく、街並を過ぎて振り返る。


相変わらず街は黙ったまま。



信号が青に変わったらしい。単調な足音。間には相打ちを打つように鞄の中身がぶつぶつ。



先を歩く人が振り向く。



手で押さえて音が出ないようにして、苦しく歩き続けた。



満員電車だったが、頑張って歩たから、席にどうにか座ることができた。


ガタンゴトン。



前を見るとあのカップルも席に座ることができていた。



視界が人にさえぎられる。

十分だ。




席を人に譲り、電車をおりた。



日の光が飛び込んできた。


蝉の死骸を紙一重でかわし


新しい街に包み込まれて。


叫びたくなる。



夕焼けがしみる。



急に後ろに加速して、ふっと位置がわからなくなる。


ぐんぐん自分が前に離れて行く。



気がつくと最初に飛び出した街だった。


見慣れた街は優しいピンクに染まり。


自分の色を思いださせてくれた。



鳩が空に飛び立つのを見送った。



さっき地面に叩きつけた自分の荷物が道路に散乱している。



ふと、視線を落とした。



しゃがんで一つ一つ手に取って拾ってくれている彼女がいた。



ごめんと謝った。



そして、彼女は言った。


いいよ。


そして、元きた道を戻ることにきめた。



リーン、リーン


鈴虫がないていた。



もう、溺れはしない。



ただ正直になったら海はずっとずっとしょっぱくなった。


ためこんでいたものがせきをきっている。


いままで、押さえてきたもの。


ただ、いまは悪い気はしない。


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