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小さな色

作者: 青空ト卜

*4/18 一部訂正 訂正箇所は後書きに

 ――自分が生きている理由が分からなかった。


 何をやっても中途半端で、長期間続けることが出来なかった。

 どんな事にも自分よりも上位の存在がいて、いつも平均的な結果しか残せなかった。

 努力が出来ず、それを生業にして食っていきたいと思っていた夢でさえ、いつの間にか儚い過去の思い出になっていた。


 きっと、本当に心の底からその夢を叶えたいとは思っていなかったのだ。


 結局俺は、その日その日を緩く生きていた。

 生きるために稼いで、最低限の衣食住を満たし、あとはパソコンを弄っているだけ。

 凹凸の無い人生に嫌気が差していた。

 気力もないのに、社会の波に呑まれ、打ちひしがれて、のたうち回って、絶望して。


 ――何度も死のうと思った。


 だけど、そんな事は出来なかった。

 怖いから。


 今眠ればすぐに朝が、新しい一日が来る。

 それが嫌で、今日もまた意味の無い徹夜。


 気づけば朝だった。


 目覚まし時計が朝を喚き散らす。


 眠気覚ましにシャワーを浴びた。

 仕事着に着替えてカロリーメイトを消費する。

 歯を磨いてバス停へ向かう。


 同じような社会人や学生が列を作っていた。

 どの顔も毎日見ている者だ。

 皆現実から目を逸らすように手に持ったスマホに集中する。


 何も変わらない。全部同じで、どこを見てもモノクロ。今日は曇りだ。


 やってきたバスに、つまらなそうな面を浮かべて乗り込む。


 席に座り、窓から外を眺める。

 流れる景色はいつもと同じで、だから気付いた。小さな出会いに。


 いつもは何も無いはずの道路の脇に、小さな花が咲いていたのを見つけた。

 一瞬で通り過ぎたその場所を、俺はずっと見続けていた。


 帰りにあの花に水をやろう。


 俺は心の中でそう呟き、前を見据える。

 前を向く途中で、窓に反射して映った自分の顔は、少しだけ色付いていた。

*訂正箇所 鏡→窓に反射

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― 新着の感想 ―
[良い点]  短い物語ですが、そこがまた良い。  タイトルも大好きになりました。 [一言] 『前を向く途中で、鏡に映った自分の顔は、少しだけ色付いていた。』  最後のこの一文にグッときました。  少し…
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