十日夜
右手を伸ばした先に切り抜かれた空が
明かすことの出来ない輪郭の裡へ
吹き荒ぶ嵐に引き裂かれ 自らの
重さを見失い 飲み込まれていく
透明な中心はどこまでも引き伸ばされ
空白さらなる隙間 淵が流れ出し
屋根を越え 純粋な不在は止まず
掻き消された沈黙の名が降り注ぐ
拡散し続ける静寂 朝が束の間の命を映す
少し欠けた虚ろな月に戻るべき体を繋ぎ
足元から背の高い影が空を見上げている
左手を伸ばした先に押し寄せる太陽が
破れる程に光を折り畳み 白い煙を立ち昇らせた
冷たい時間に留め置かれた小さな夜
この響き渡る声の先で 幽かなふたりは出会う