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第9話 土曜日、今度こそ学校で練習でする

 県立中川高等学校。

 それが俺の通う高校の名前だ。県内ではトップ層に当たる進学校というわけでは別段なく、一応は進学校と言われているが中流クラスの学校である。ただ、それでも2~3年に1度はあの旧帝国大学の中でも最大の難関、この日本を代表する東大に現役生を送ることもある。それに毎年旧帝大の北大、東北は必ず出している。だから、進学校とも言われているわけだ。中川市という県の中央に位置しているため県の北、南、西からと各地から生徒が通ってくる。

 ちなみに男子校。共学校ではない。そもそもこの県には共学校というものが存在してない。進学校の中ではの話だが……。

 さて、そんなことよりそろそろ自己紹介をしたいと思う。

 俺の名前は川波重。

 2年2組出席番号12番。誕生日2月12日。血液型A型。身長171センチ、体重58キロ。好きな食べ物ハンバーグ。嫌いな食べ物漬物。好きなこと陸上の長距離特に5000m走。陸上部所属。

 嫌いな先生 

 将軍こと大泉先生。

 これが俺のプロフィール的なものである。

 さて、いよいよ物語をはじめていこうじゃないか。


 ◇◇◇


 土曜日。

 俺が、将軍に対して我慢の行かなくなった土曜日から2回目だ。先週の部活は将軍によって見事に邪魔されてしまった。しかし、今度は前のようにいかない。絶対に今度こそ部活を学校でやりきってみせる。

 俺は、朝ご飯を食べる。

 納豆をたくさん混ぜて、白米の上にのせる。

 納豆は美味しい。

 納豆を堪能してから、行く準備をする。

 タオル、スポーツドリンク、着替え上下、ランニングシューズ。全部しっかりエナメルバッグの中に入れた。

 忘れ物はない。

 大丈夫だ。

 俺は確認を終えたので、学校へと向かう。

 上り坂を自転車で登る。

 自転車をこいで5分で小学校の横を通り過ぎる。さらに5分。自転車をこいで中学校の横を通り過ぎる。

 俺の家から小学校、中学校、そして高校と徐々に遠くなっていた。しかも直線距離でだ。本当に迷惑の話だ。中学校の近くに女子高である中川女子高校があるのだが、そこに中川高校があってくれれば本当に家から近くて便利であったというのに。中川駅からも女子高の方が近い、いや、中川高校の方が近いか。まあ、それはともかく俺の家から遠いことに文句を言いたい。15分で着くだけまだましであるが。

 そんなこんなでいろいろと考えながら自転車をこいでようやく学校にたどり着く。

 学校の正門のそばにある時計の針は8時20分を指していた。部活が始まるのは9時であるから時間的にはまだまだ余裕がある。ちょっと早く来すぎてしまった感があるがまあいい。早いに越したことはない。部活のカギの担当は1年生に任せているし、電車の時間の関係上その1年生は、8時に着いているはずだ。

 グラウンドには誰もいなかった。野球部はどうにかいないようだ。やったぜ。

 部室に入ると案の定1年生の冨沢と部長の清田がいた。


 「おはよう」


 「おはようございます」


 「おはよう」


 俺がおはようと言うと、富沢、清田の順におはようと返事をしてくれた。

 

 「今日は野球部なさそうだな」


 「そうだな。朝にいないとなれば今日は練習も試合もないのだろう。または、どこかで練習試合でもしているんじゃないか」


 「そうだな」


 野球部の話をしていると次々とメンバーが集まってきた。

 9時5分前の8時45分になると部室の外に出る。外にはすでに沼宮内先生が待っていた。


 「お前ら遅いぞ。早く外に出ることぐらいしなさい」


 沼宮内先生はいつも来るのが遅いのだが、今日は早い。きっと先週のようなことにならないように早めにグラウンドに来ていたのだろう。ただでさえ、学校に来るのも遅いのだというのに。それほど先生も気合が入っているということだと考えてもいいのだろう。


 「では、気を付け。礼」


 田澤が号令をかける。全員が、礼をする。


 「よし、今日のメニューは短距離と長距離の合同でエンドレスリレーにしよう。3+(プラス)1な。全部で3チーム作ってもらう。1人当たり全部で7回走ってもらうから覚悟するように」


 『えー!』


 今日のメニューにブーイングが出る。主に長距離からだ。エンドレスリレー通称エンドレをすること自体に文句があるとは思っていない。彼らがとりわけ射水が文句を言っているのが短距離と一緒にやるということだ。短距離の方が足が速い。スピードが短距離の方があるのでリレーをするとなると短距離の方が有利になるのだ。長距離以降になると体力が持前になるので本数を重ねたほうが強い。でも、7本程度であるのならばまだ短距離の方が強い。だから、ブーイングが出たのだ。


 「文句言わない。さあ、アップをしてメインは9時45分から始めるぞ」


 『はーい』


 沼宮内先生に言われた以上練習をしなければならないので返事をする。とりわけ長距離陣の返事はやる気のないような返事であったが。

 アップをする。

 グラウンドを1周歩いた後、3周程度ジョギングをする。そのあとは、屈伸から始める準備を体操をして最後にドリルをする。

 俺は腰回りが固いので足を動かす際に上半身と下半身が同時に動いてしまいドリルをうまくできない。もっと、きちんとしたドリルができればいいのだけど……そんなこと言っても俺の能力の限界だから仕方ない。諦めている俺が心の中にいた。

そして、メイン開始の5分前になった。まだチーム分けをしていないのでチーム分けをするために一度集まる。


 「じゃあ、どういったチームにしようか」


 田澤が部長として切り出す。


 「普通に早い奴3人ずつ取っていくのでいいんじゃないか? それならば同じ力になるだろうし」


 清田が主張する。清田の言っていることは、最初にこの陸上部で足の速い3人を輩出する。次に残ったメンバーの中から同じ速さのメンバー3人ずつのグループを作り、その中でじゃんけんをする。じゃんけんの勝ち負けで最初の3人のどこかのチームに入るというものだ。幸い陸上部は27人。3×9で1チーム9人で出来上がる。

 余りが出ることがなくてよかった。


 「じゃあ、さっそくチーム分けな」


 田澤、安川、渡辺の3人が陸上部で速いので選ばれる。


 「安川。けがはもう治ったのか?」


 「ああ、もう大丈夫だ。なあ、田澤くーん」


 「うっとしい。もう少し怪我しておとなしくしていればよかったものを」


 「その言い方ひどくないっ!」


 「……完全に安川の言い方に問題があるだろ……」


 安川英也は、俺と同じ2年だ。ただ、お調子者だという欠点がありよく田澤に絡んでは田澤にやられている。こんな安川であるが実は陸上部で最も100mから400mまでの記録がいいというギャップを持っている。

 もう少し、安川に対してホモっぽい接し方をしなければ好かれるのだと思うけど。まあ、それがあの2人なりの人間関係だし俺は口出しをする必要がないな。


 「おい、川波じゃんけんしようぜ」


 俺が組んだのは、森水、清田であった。池山は中距離ということもあり俺よりもスピードがある。だから、短距離の1年とじゃんけんをしている。射水はスピードが俺異常にないため1年長距離とじゃんけんをしている。

 こうしてチームが出来上がった。

 チームのメンバーは以下のとおりである。


 チームA:田澤、富湖、清田、射水、小川、水谷、津田、長島、溝口

 チームB:安川、池山、森水、沼旗、北川、瀬戸、湯浅、水上、清野

 チームC:渡辺、河合、川波、浜岡、冨沢、堀、浅見、滝元、濱田


 俺が所属したのはチームCだ。全体的に見るとチームCが一番遅いと言える。それは、いつもの練習と大会などのタイムから考察したものだ。渡辺は陸上部内で速いが、安川、田澤にはかなわない。その点において負けている。河合は富湖とみこに負けている。俺も清田に負けているようにメンバーのいずれもがほかのチームの奴に負けているという特徴がある。

 さあ、俺達はこのメンバーでどこまで持つのだろうか。


 ◇◇◇

 練習開始から5分後。

 1人当たり2本目の中盤というところか。すでに俺達Cチームはほかのチームに対して圧倒的に差をつけられ始めていた。

 負ける。 

 圧倒的な差で。

 俺はそう思った。


 「まったく、力の差が出ちゃ練習の意味がなくなってしまうだろ。浅見、チームBと一緒にスタートしろ」


 俺達のチームは沼宮内先生によって繰り上げスタートを余儀なくさせられた。

 その後、数度にわたって繰り上げスタートをしてこの日の練習は終わった。

 今日は、将軍の邪魔がなかった。

 それだけは本当に良かったことだ。

 来週の月曜からが本番だ。

 こうして、俺は明日のオフを迎えることになった。

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