表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

第4話 月曜の部活は朝練とジョグ

 県立中川高等学校。

 それが俺の通う高校の名前だ。県内ではトップ層に当たる進学校というわけでは別段なく、一応は進学校と言われているが中流クラスの学校である。ただ、それでも2~3年に1度はあの旧帝国大学の中でも最大の難関、この日本を代表する東大に現役生を送ることもある。それに毎年旧帝大の北大、東北は必ず出している。だから、進学校とも言われているわけだ。中川市という県の中央に位置しているため県の北、南、西からと各地から生徒が通ってくる。

 ちなみに男子校。共学校ではない。そもそもこの県には共学校というものが存在してない。進学校の中ではの話だが……。

 さて、そんなことよりそろそろ自己紹介をしたいと思う。

 俺の名前は川波重。

 2年4組出席番号12番。誕生日2月12日。血液型A型。身長171センチ、体重58キロ。好きな食べ物ハンバーグ。嫌いな食べ物漬物。好きなこと陸上の長距離特に5000m走。陸上部所属。

 嫌いな先生 

 将軍こと大泉先生。

 これが俺のプロフィール的なものである。

 さて、いよいよ物語をはじめていこうじゃないか。


 ◇◇◇


 月曜日。

 俺は、朝6時半に起きてすぐに着替え朝食をとる。そして、お母さんに作ってもらった弁当をリュックに入れると7時に家を出る。

 上り坂と風の強い通学路を15分ほどこいで学校へとたどり着く。

 部室にたどり着くとやはり清田と冨沢の2人はすでにいた。朝練に使うグランドには線が引いていない。なので、自分たちで300mを引く。400mじゃないのはうちのグランドが小さいからだ。しかし、単純に引くだけではない。野球部のホームがある場所だけは引いてはいけないルールとなっている。ここでも、野球部に腹が立つようなことの1つだ。線を引くのがとても上手な森水の手によって何とか早く線を引き終える。

 手に付けている腕時計を確認する。現在の時刻は7時30分。あと15分で朝練が始まる。俺達の朝練は6000mのビルドになっている。グランドは歪ながら走る。

 最初の1500mは1周76秒、次の1500mは72秒、68秒、最後は62秒と上がっていく。

 沼宮内先生が来たところで7時45分。朝練は始まった。


 「はぁはぁ」


 朝は体が動かない。とりわけ月曜の朝練は走り辛い。

 俺は何とか息を切らしていたが6000mを走りきる。

 沼宮内先生は20周走るうちの15周目あたりで職員会議があるのですでにグランドから出て行っている。俺達は片づけをして、部室に戻り急いで朝のHRホームルームに間に合うように着替えを済ませる。


 「清田、1限何だっけ?」


 「ああ、ええーっと、森さんどう?」


 「ええーっと。そう、英語だった。福島先生の」


 「ああ、英語か。予習は……こないことを信じよう」


 俺は、清田に今日の授業の話を着替えながらふる。

 それに対して清田も答えることができずに森水に尋ねる。ちなみに森さんは森水のあだ名的なものだ。

 俺と清田そして森水の3人は文系であり全員が4組と同じクラスだ。ちなみにほかの中長距離2年の射水は理系2組。池山太司いけやま たいしは理系1組だ。


 「まったく、そんなんでいいのかよ。川波英語苦手だろ」


 「いやあ、どうにかなるって」


 ◇◇


 ……どうにもならなかった。


 「川波。予習はどうしたんだ?」


 「あ、あの、え、ええーと」


 絶賛今日の日付が9月30日であり、出席番号30番に当たる。そう思っていたが、福島先生はどうしたことか「ううーん、9+3で12にしよう」とか言い出したせいで出席番号12番の俺に見事当たることになったのだ。

 予習が来ないとさっきまで油断していた俺はどうしようもできなかった。

 できる場所だけ無理してやってみたがそれは、たった2行だけ。3行目から完全に分からなくなっていた。同格があるかえ、ええーっともう無理や。


 「予習はできてません!」


 どやー。

 諦めてドヤ顔でそう宣言した。


 「わかった。明日までにこの単元の単語をこのプリントに全部書いてくるように」


 福島先生はそう言って俺にプリントを渡す。


 「あ、あの福島先生これって?」


 俺が渡されたのは35行のマスがあるプリント5枚であった。しかも、両面分ある。このぎっしりのプリントに単語をひたすら書き続けるとか何のいやがらせなんだ。いや、まあ予習してこなかった俺が悪いんだけどさ。


 「ああ、明日までにやってくるんだぞ」


 「……」


 俺は絶望のあまりあいた口が閉じることができなかった。


 ◇◇

 昼休み。

 

 「おーい、重。どうだ?」


 「どうって何だよ」


 俺が必死に家でやる分の課題を減らそうと必死にthreaten~を脅かすと書いているところに友人の江口正英えぐち まさひでが声をかけてきた。


 「いや、英単語がどれだけ進んでいるのかって話」


 「見りゃあわかるだろ。すでにもうthreatenという単語の意味通りになっているわ。ってか、ゲシュタルト崩壊がかなり進んでいてそろそろ別の単語書こうと思っているころあいだ」


 俺はそう言う。すでにプリント5枚の内正確に言うと両面あるため10分の1にあたる部分をthreatenだけでひたすら誤魔化していた。すでに200近く書いたのではないか。正確な数を数えていなかったのでわからないが感覚的にそれぐらい書いたような気がした。


 「うわぁ! 絶望的だな。やっぱり予習はしっかりやらないとな」


 正英はそんなことを言う。というよりも、実は正英は予習サボりの常習犯と言ってもいい奴だ。この半年の間に福島先生が30枚近くのプリントを渡されているはずだ。両面あるから実質60枚。1枚に約200書くとして200×60で12000もの単語を書いたはずだ。

 ……次からはしっかり予習やることにしよう。

 俺はそう誓ったのであった。


 ◇◇


 放課後。

 ついに部活の時間がやってきた。

 ……まあ、そうは言っても今日は月曜日でありグラウンドを使うことはできないんだが、明日になればグラウンドを使うことができる。その我慢だと考えておけばいい話だ。

 沼宮内先生のもとに集まり今日のメニューが言い渡される。

 今日のメニューは、60分ジョグであった。


 「60分ジョグか」


 「どうした川波?」


 「森水さあ、60分ジョグでどこ行くべきか?」


 「ああー」


 俺の嘆きに森水は頷く。

 その言葉に近くにいた池山も同意してくる。


 「だったら金井の山に行こう!」


 金井。俺達の町中川市にある地名だ。学校からは走って15分程度の場所であり60分ジョグをするのであれば十分に間に合う距離にある。

 ただ……


 「前に行かなかったか?」


 「それは、手前まででしょ。もっと、奥まで行こうよ波ちゃん」


 波ちゃんって。

 池山は俺のことをいつもそう呼んでくる。ちゃんづけされるようなキャラじゃないんだが。そもそも池山の方がかわいらしいからちゃんで呼ばれてもいい気がする。じゃなくて、俺はホモじゃない。男をかわいいとか決してやましい意味で言っているわけじゃないからな。


 「まあ、ううんいいっか」


 俺は同意してしまった。


 「川波が行くなら俺もついていくか」


 森水も同意する。


 「俺も行く」


 射水も加わる。


 「俺は足が痛いから山ジョグはちょっとつらいな。4人で行ってくれ。俺は学校の周りを走っているから」


 清田は最近足の調子が悪いと言っていたので行かないと言った。長距離となると長い距離を走る上に、俺達はグランドを使うことができず、競技場も使うことができず、基本的にはアスファルトの上を走っていることになる。アスファルトの上を走るということはかなり足に負担がかかっているということもありすぐに足が痛くなる。足のケアはとても大事だ。これ、陸上部としての当然のこと。


 「なら、清田は仕方ないから行くか」


 「「「おお」」」


 俺達4人は金井に向かって走り始めた。

 ペースとしてはキロ5分ぐらいだろうか。そこまで速くても意味がないし、逆にちんたら走って遅いのも意味がない。ちょうど自分が苦しいと思えるぐらいのペースでジョグをするのがベストだ。


 「はあはあはあ」


 山ということもありペースが速いと息が切れ始める。

 そして、絶望を味わう。


 「どこまでこの上り坂続くんだよ!」


 横で射水がキレている。

 まあ、言いたいことはとてもわかる。先ほどから俺達は右も左も鮮やかな紅葉を身にまとった木の間を走っている。一応、別の本来先輩たちが作ってくれた山コースというのは存在している。そのコースは30分永遠と登り続けて30分永遠と折り続ける極端なコースだ。山の上に遊園地があるのでそこまで走るルートとなっている。

 そして、今回のコース。上り坂が続いている。10分程度。まあ、10分と聞いてなんだ、山コースの方が長いしつらそうじゃないのと思った自分が最初の頃はいた。しかし、金井の山という魔物は突如として俺達に牙をむいた。

 坂道の傾斜角度がえげつなかった。

 いったい何度あるんだ。

 走っている気がしない。

 俺達は何をしているんだ。

 そろそろ頭がおかしくなってくる。もう山から出たい。そんなことを思った次の瞬間に池山が叫ぶ。


 「あっ! ここならば山から下りれそうだよ」


 池山の指がさしている方を見る。道が2つに分かれていた。アスファルトの道が2本ありそのうちの1つを池山がさしている形だ。

 別段、変な道という感じはしない。きちんとアスファルトであるからだ。

 

 「……山下りたい人」


 俺がそう言うと、無言で俺を除いた3人全員が手を挙げる。

 もちろん、俺は挙げていないが山を下りることに賛成だ。

 俺達は、池山に言われた道を降りることとなった。

 しかし、


 「……俺達の部活って何部だっけ?」


 「……陸上部」


 「けっして登山部とか山岳部ではない」


 「……」


 俺、森水、射水、池山の順に話す。

 さて、何が起きたのかというと、池山に差された進んだ道はとんでもない道であった。分かれ道のあとしばらくはアスファルトがあり下っていた。しかし、少し進んだ先からアスファルトがなくなり完全なけもの道となった。いや、けもの道とは大げさすぎる言い方だ。どんな感じだというと、人が1人ぐらい歩けるように草がかられているという場所だ。ちなみに、片方はけっこう深い谷となっていた。油断したら死ぬ。

 だから、もう一度言わせてほしい俺達一体何部なんだ。


 その後、どうにか生きて帰った俺らはもう二度と金井の山の方には走っていかないことを心の中で誓ったのであった。

 今日の部活はジョグと補強で終わり。

 明日はグラウンドで部活ができる。とても楽しみなまま布団の中で眠りについた。

 ちなみに今回の話は結構実話をもとに作られています。道なき道を走った経験が今でも印象深いのでネタとして使わせてもらいました。ちなみに、谷という表現がありましたが、実際は高台のようになっており転げ落ちても大けがをするぐらいで死ぬことはおそらくはありません。

 安全に気を使っています。ご安心ください。

 次回は、明日の18時に更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ