第3話 日曜日の練習はオフ
県立中川高等学校。
それが俺の通う高校の名前だ。県内ではトップ層に当たる進学校というわけでは別段なく、一応は進学校と言われているが中流クラスの学校である。ただ、それでも2~3年に1度はあの旧帝国大学の中でも最大の難関、この日本を代表する東大に現役生を送ることもある。それに毎年旧帝大の北大、東北は必ず出している。だから、進学校とも言われているわけだ。中川市という県の中央に位置しているため県の北、南、西からと各地から生徒が通ってくる。
ちなみに男子校。共学校ではない。そもそもこの県には共学校というものが存在してない。進学校の中ではの話だが……。
さて、そんなことよりそろそろ自己紹介をしたいと思う。
俺の名前は川波重。
2年4組出席番号12番。誕生日2月12日。血液型A型。身長171センチ、体重58キロ。好きな食べ物ハンバーグ。嫌いな食べ物漬物。好きなこと陸上の長距離特に5000m走。陸上部所属。
嫌いな先生
将軍こと大泉先生。
これが俺のプロフィール的なものである。
さて、いよいよ物語をはじめていこうじゃないか。
◇◇◇
日曜日。
今日は1週間ある曜日の中でも唯一部活が休みの日だ。
休みの日ということで俺は、ごろごろとするつもりだ。
だから、布団の中でずっと眠っていた。
「起きなさい!」
……寝るつもりだった。12時になったら起きればいいと思っていた。しかし、現在の時刻は8時。完全にいつもと同じような時間だ。
お母さんの声が俺の頭の中に響く。
まだ、寝ていたい。
「起きたくない」
俺は文句をお母さんに言う。
お母さんは俺が起きないのでこんなことを言った。
「じゃあ、朝ご飯は自分で作ってよ」
「はい。起きます」
ご飯を自分で作るのはとてもめんどくさい。と、なれば寝たくても眠くても起きなくてはいけない。毎週毎週このような感じで日曜日が始まる。いい加減に何か学習をしておくべきじゃないかと自分でも思うがそんなことができない。自分が残念すぎる。
結局そのまま起き上がる。
1階に下りてみると机の上にはご飯が置かれていた。昨日の残りであるから揚げも数個残っていた。昨日はもっとあったのに5個しか残っていないことを考えると俺が起きるまでの間に父さん、母さん、妹あたりが食べてしまったのだろう。……もっと早く起きるべきであった。
ご飯を食べ終えた後、昨日録画していた深夜アニメを見るためにテレビのあるリビングへと移動した。しかし、テレビの音が流れてくる。
テレビは妹の真奈美が占領していた。リビングでゴロゴロしながら、机にはどうやら中学校の宿題が置かれた状況でドラマを見ていた。
ながら勉強は身にしみないんじゃなかったっけ。そんなことが頭の中によぎったがこの妹はいつまでたっても注意しても治らない。諦めるしかないことはもうわかりきったことだ。
「真奈美、いつになったら俺にテレビを譲ってくれるか」
「うーん、あと3本見終わったらね」
テレビの視聴権は完全に妹のものであった。こうなったらしばらくテレビを見ることができない。3本見終わったらと言っているがドラマを妹は見ているわけであってドラマは1本あたり1時間であるため、3本見終わるのには3時間かかる。だから、待っている暇など俺にはない。だったら、ほかのことでもやっている。時間がもったいない。休日ぐらいやりたいことをやらせてほしい。
だから、自分の部屋にでも言って読書でもしようかと考える。
俺の部屋にある本──だいたいはライトノベルだ。ライトノベルだけでも200冊は軽く超えている。しかし、大体の本はもう読み終わっているし、何回も読んでいるのでそろそろ新しい本でも買おうと考える。
「ちょっと、出かけてくる!」
お母さんにそう言う。
「どこ行くの? まあ、ワンダーブックだと思うけど」
俺が出かけるというと、お母さんは当然のように俺の行先を当てる。俺の行動は単純のようだ。
ワンダーブックというのは、本屋の名前だ。全国展開もしているほどの決行メジャーな企業でもある。まあ、北陸、四国、沖縄に出店していないため全国と言えるかどうかは怪しいところであるが。
俺は、近所の本屋へと行くため自転車をこぐ。
近所の本屋は結構本の品ぞろえがいい。
そのため、しょっちゅう立ち寄っている。学校帰りにとか。でも、実は本屋の位置は俺の家を少し通り過ぎた場所にある。だから、学校帰りによるとわざわざ遠回りになってしまうのだ。でも、それでも俺は結構な頻度でそんなことをやっている。なんでかって? それはもちろんライトノベルが好きだからだ。
さて、本屋の中に入ってライトノベルコーナーへと向かう。
まず、目につくのが新刊が置かれている棚だ。
中でも俺が買おうと思っていたのが、ギルド文庫の新刊だ。ギルド文庫は株式会社ギルドが出版しているライトノベル系レーベルの1つだ。株式会社ギルドは鉄道、出版社、遊園地、不動産など多種多様の異業種に取り組んでいる大企業であり、ライトノベル人気が近年目立っていることを見て業界に参入してきた。
そのため、ギルド文庫が創刊したのは今から3年前。まだまだ新興のレーベルに過ぎない。大手企業が元と言っても小さなレーベルであるため毎月の刊行数は大体5冊前後。少ないときは3冊程度で多くても8冊。売り上げもそこそこのものである。書籍ランキングでも1万部行く作品は数店あればいいぐらいものだ。しかしながた、大手企業ということを活かしてどんなに売れなかった作品でも3巻までは出すというレーベルの方針を固く守っておりほとんどの作品が最低3巻へとたどり着くことができている。
利益度外視というのは企業としてどうかと思うけど、それもまた成功のための企業戦略であるのではないかと経済が専門の俺は考えてみる。
そんなギルド文庫の今月の新刊である『二級魔術師のギン5』、『祖竜事変黙示録4』、『エンジェル・ウィング2』、『インフル・パンデミックス1』、『悲劇のプリンスロード1』の5冊を俺は買い物かごに入れた。
ギルド文庫の作品は毎月全部買っている。
それ以外にもFA文庫、進撃文庫、ネクストファンタジー文庫の作品を何冊かかごの中に入れた。
そして、会計で5210円を払ってそのまま足はやに本屋を出る。
家に着くとさっそく買ってきた本を読むことにする。最初に読むのは、ずっと楽しみにしていた『二級魔術師のギン5』からだ。
二級魔術師のギンは、二級魔術師という魔術師の階級にある主人公ギンが任務の傍らで突如として自分の前から姿を消した父親を探すという物語である。旅の先々で新たにヒロインが仲間として加わっていくハーレム系でもあった。
1巻では、ピーチェ、2巻ではレイ、3巻ではアイリスというヒロインがどんどんと増えていく。4巻はツーサンという謎のキャラクターと科学文明についての話をやったが、ヒロインが増えることなくこれ以上増えないのかと思われたが5巻のあらすじで新ヒロインが登場することが示唆されていたのでとても楽しみにしていた。
さっそく読み始める。
──1時間後。
俺は読み終えた。
「あー、新ヒロインのリーナめっちゃかわいいわ」
新ヒロインの魅力に憑りつかれていた。
そのあとも、買ってきた本を読み続けた。
『祖竜事変黙示録4』は、今までの伏線が大きく回収される場面でとても面白かった。シリーズ累計も30万部を突破したみたいでギルド文庫の『RPG』50万部、『ギン』35万部に続く大人気作でありドラマCD化が決定したと帯に書かれていた。
『エンジェル・ウィング2』は、第3回ギルド文庫大賞銀賞受賞作である。今回の話としては、主人公の新たな力が覚醒することでボスを倒せていいテンポであった。
『インフル・パンデミックス1』は、タイトル通りにある学校がインフルエンザでどんどんと閉鎖されていく様子をゾンビ物のように恐怖感溢れる感じに描かれた何ともおかしなものであった。しかし、個人的には微妙であった。おそらくは、3巻で完結する作品となるだろう。
最後に、『悲劇のプリンスロード1』は亡国の姫の話であった。簡単に言えば、国を失った王女がだれも信用できなくなり、1人さまよっていたところに主人公が駆けつけるというものであった。どちらかというと、女性向けの内容ではないかと思われた。
こうして、ずっとライトノベルを読んでいたら夜になっていた。
フリーの日の過ごし方はこれでいい。ずっとこうしてきた。明日は朝の7時45分から朝練がある。だから、今日は明日の朝練に向けてもう寝ておく。現在の時刻は23時。まあ、これぐらいが妥当だろう。明日の朝練はグランドが使える。本当に朝練ぐらいでしか最近グランドが使えなくて不便だ。トラックは学校から10キロ程度離れているし、しかも弱小J2のサッカーチームの練習の方が優先されるとかマジでありえない。
俺は、そんな文句をいろいろと抱えながら寝た。
明日も将軍に関する波乱が起きることをこの時はまだ知らなかった──
今回登場したギルド文庫作品の元ネタは、『RPG』、『二級魔術師のギン』は私の連載しているほかの作品です。『インフル・パンデミックス』は、タイトルだけ思い浮かんだ作品であり実際に自分でも書いていません。『エンジェル・ウイング』、『祖竜事変黙示録』は友達が昔書いてくれた小説のタイトルとなっています。とりわけ祖竜はとても面白かったので友達は一応なろうに投稿していますが、いつか書いてくれることを信じています。ただ、本人は忙しいと言ってかけないみたいですが。