チョップは痛い
投稿遅れてすいません。大晦日にお正月!
あぁやる気が起きませんね!そういうわけです!
あ、いや、ほんと、ごめんなさい。
ゴリ男を倒した後、目的地へと向かった俺たち2人は、目の前に聳える、でかい建物に呆然と立ち尽くしていた。
「おっきいですね」
独り言ともとれる声に、辛うじて頭を縦に振ることで同意した。
今、俺たちの目の前に聳えている建物は、冒険者ギルドだ。
建物はこの街一番の大きさだろう。圧巻の一言に尽きる。
そんなギルドの入り口では、流石と言うべきか、多くの人が行き交っていた。
「えっと、取りあえず入ろうか」
俺はそう促し、数メートル先にある、ギルドの入り口に足を運ぶ。
ちなみに、カナリアの手はギルドが見える距離に来た時点で、俺の服の裾から離されていた。
名残惜しいなんて、豆腐メンタルな俺には言えない。
べ、別に強がってねぇし……
冒険者ギルド。
現代日本のサブカルチャーに触れたことのある者なら、大体の人はこの言葉に夢を見るだろう。
まぁ、俺もその一人な訳だが。
そして、入った瞬間に絡まれるのがテンプレである。
俺らは、その前にゴリ男に絡まれているため、そんなことはないと思いたい。
流石に2回は面倒だ。また、もやしを生やさなければいけなくなる。
ゴリ男のもやしはそろそろ萎れる頃じゃないだろうか。だってもやしって暗所で育てるものだし。
まぁ、もやしとゴリ男のことはどうでもよくて、
俺は日本で培ったスルースキルを全開にして、俺たちはギルドに足を踏み入れた。
――風が吹く
そう錯覚してしまうほどに、俺とカナリアに向けられた威圧は強かった。
しかも、多少なりとも殺気が乗っている。
ンヒィィィィいきなりやばいお。
カナリアを一瞥すると、少しばかり震えていた。
「カ、カナリア。い、行くぞ。それと、存在感は消しておけ。ほら、俺みたいに」
「は、はい。……あ、あれ?伊織さん?どこに……?」
いや、こういう時にボケっていらないから。割とガチだから。
それとも、そこまで俺の影は薄かったのか?
ショックだ。……泣いても、いいですか?
極力気配を消しながら、冒険者登録をするために、ソソソ―っと受付へ向かう。
しかし、テンプレの神は見逃さない。
ご察しの通り、絡まれてしまいました。
「おい、そこのヒョロいのと、嬢ちゃん」
「ぼ、僕たちのことですか?」
動揺してしまい、一人称が変わってしまった。
ヒョロいのはないだろ!ヒョロいのは!
と心は訴えるが、そんなこと口にできる俺ではない。
コ、コミュ障なめんなよ!
心で威勢を張ってみたが、何の自慢にもならない。
寧ろ、自分はダメな奴です、と公言しているに近い。
声に出していないので、厳密には公言ではないが……
「あぁ、お前らのことだ。……副業と言えど、冒険者は命を賭す職だ。お前らのような子どもが、遊び半分で来るようなところじゃねぇんだよ、ここは」
今のおっさんの言葉は、忠告として受け取っておこう。それっぽかったし。
でも、
「い、いや、直接危ないことをしようとか言うわけでは、なくてですね。魔石を売るには冒険者登録をしないといけないと聞いたので、ちょっと寄っただけですよ。そ、それに、魔物の討伐以外にも採取や手伝いなどの比較的安全な依頼だってあるそうじゃないですか」
冒険者ギルドについては多少リサーチ済みだ。
主にラブホの人からだが……人のいい人でよかった。俺たちが入った時に、にやけていたが。
畜生。思い返したら腹が立ってきた。
今はどうでもいいな。
「魔石だと?どうせそこらで他の冒険者が落としたのを拾っただけだろ?それなら誰かに頼んで換金してもらえばいいだろうが」
む、なんて心外な。
ちゃんと倒しましたよ~だ。
「ご忠告、ありがとうございました。では、受付へ向かいたいのでそこをどいてもらっても、よろしいでしょうか。それと、魔石は拾ったものではなく、自分たちで手ずから取ったものです」
おぉ、自分でも驚くくらいにしっかりと言えた。
生まれて初めてでゴザル。
ちなみに、コミュ障分析をすると、俺は受け答えはできるが、挙動不審になるタイプ。
カナリアはめっきり話せなくなるタイプだ。
心底どうでもいいな、これ。
男がどく気配がなかったため、カナリアに声をかけ、受付へと向かった。
「こ、怖かったですね」
カナリアの一言に、首を縦にブンブン振った。
マ ジ で やめてほしい。
寿命が数日縮んだ気がする。
その間に受付に着いたので、「冒険者登録をしたい」と言うと、すぐに取り掛かってくれた。
受付嬢は結構可愛かった。
まだカナリアがトップを走るが。
「冒険者の説明をさせて頂きます」
受付嬢がそう切り出し、説明が始まった。
数分で終わった説明だが、要約するとこうだ。
――ギルドランクなるものは、F~S(下から順にF、E、D、C、B、A、S)まであり、Fからのスタート。このランクは、依頼の達成数や魔物の討伐数、依頼人の評価など、あらゆる面での評価で決まるらしい。
重要そう、且つ俺の興味を引いた説明はこれだけだったので、後は聞き流した。
カナリアは真剣に聞いていた様だし、分からなくなったらカナリアに訊けばいいさ。
何だろ、俺がすごいダメな奴に思える。
それに要約するまでもなかったし。
「ギルドカードを発行しますので、必要事項を記載してください」
そう言って渡された紙を見てみると、氏名、年齢、保有スキル、魔法などいろいろな項目があった。
「えっと、出身地とかスキル、魔法は書かなくてもいいんですか?」
「はい、そういう方はよくいますね。名前と年齢さえ記入していただければ、大丈夫ですよ」
これ、身分証明書代わりだろ?
緩くね?
2人とも書き終わり、紙を受付嬢に渡すと受付嬢は奥へと消えていった。
数分して受付嬢が戻ってきた。
「こちらがギルドカードです。紛失した際は料金が発生しますので、くれぐれも無くさないようにお願いします」
受け取ったギルドカードは銀色で、さっき紙に書いたことと、ギルドランクが載っていた。
なんでも、ギルドカードは魔道具(魔石や魔法陣を触媒として使用する魔法の道具)といわれるものらしく、自動的にギルドランクを改変するらしい。
異世界何でもありだな。
「では、次に試験に移ります」
受付嬢の言葉に顔を上げると、受付嬢は、さも当然のように試験とやらの準備に取り掛かっていた。
ちょ、試験とか聞いてないんですけど……
カナリアの方を見ると、困惑した表情を浮かべていた。
たぶん、俺も似たような表情なんだろう。
「まぁ、試験と言ってもごく簡単なもので、この魔力量を測る水晶に手を当ててもらうことと、後は実際にCランクの冒険者と戦ってもらうことです。今このギルドにいるCランクの冒険者は先程あなたに声をかけていた方ですね」
良かった簡単で。
ていうか、さっきの奴Cランクなのかよ!
意外に強いじゃないか!
そんなことを考えていると、いつの間に取り出したのか、受付のテーブルの上には水晶が置かれていた。
「ではどちらか手を当ててください」
「私から行きますね」
カナリアはそう言うと、淡く光る水晶に手を当てた。
すると水晶は先程とは比べ物にならないくらい強い光を発した。
目が……目がぁぁああ
「す、すごいです!Sランク冒険者よりも高い魔力量ですよ!これは!ささ、隣の方もぜひ!ぜひ!」
美人の受付嬢が興奮し、急かしてきたので、俺は急いで水晶に手を当てた。
手を当てると、水晶はカナリア程とは言わないものの、強い光を放った。
「うーん、Sランク冒険者とAランク冒険者の中間と言ったところでしょうか。残念ですね」
受付嬢は見るからに気分を沈ませた。
え、ちょ、その言い草はなくね?
そもそもAランクもSランクも国に数人程度何だろ?俺すごいじゃんか!なんでそこまで言われなきゃなの!?
しかも、カナリアは聖女だよ!?勝てるわけ無いじゃんか!
泣くぞ!?
男の涙なんて誰得だよって感じなのだが、この状況は嘆くしかないだろ?そうだろ?
豆腐メンタル何だよ!脆弱とかゆうな!
ていうか、AランクとSランクの間の俺が【幻想創作】したら疲れるってことは、どんだけこのスキル、俺の魔力喰ってんだよ。
ほんと、そんなことはどうでもよくて――てか、どうでもいいこと考えすぎじゃね?俺――次の実技試験が問題だ。
相手は仮にもCランク。仮じゃないけど。
ギルドが所有している闘技場に来ました。
とっても面倒です。ただ魔石を売りに来ただけなのにね。
「では、一対一で、Cランク冒険者から一撃あてたら試験終了です。尚、10分経っても攻撃を当てられなかった場合、また後日ということで!行きますよー、バトルースタート!」
やけにテンションの高い受付嬢の合図と同時に俺は走りだす。
さっきカナリアから試験を受けたため、実技試験は俺が先にやることになった。
俺はギルドで忠告してきたゴリゴリ(命名)に肉薄する。
ゴリゴリが扱うのは大戦斧と呼ばれるでかい斧だ。
それならば、相手が斧を振りきる前に懐へ入ってしまえばなんの問題もない。
肉薄した俺だったが、ゴリゴリはそれを予測していたかのように、飛翔して後退する。
「なかなかやるじゃねぇか」
ゴリゴリが声をかける。
「戦いの途中なのにお喋りなんて随分余裕ですね。やられても知りませんよ?」
「んだと、てめぇ!」
避けられたことに少しイラッとしたので、皮肉ってみたら、予想以上に怒った。
煽り耐性なさすぎではないのか?ゴリゴリ君や。
煽られたゴリゴリは、怒り心頭という感じで突っ込んできた。ゴリゴリは予想以上に脳筋でした。
薙ぎ払われた大戦斧を屈んで避け、鳩尾に1発!
と思ったが、ゴリゴリの使っている大戦斧は両刃タイプなため、折り返してきたその斧を、素手で戦っている俺に防ぐすべはなく、また屈んで避けるしかなかった。
むぅ……じれったいな。すぐ終わらせてやる。
屈んで曲がった膝を、思いっきり伸ばして、上に飛ぶ。
そして、手を真っ直ぐに揃え、重力に従い――
「アチョーーー」
チョップを食らわせてやった。
チョップは脳天にクリティカルした。
するとゴリゴリの身体がグワンと揺れ、ドスンという大きな音を立てて倒れた。
ちなみに俺な手はジンジンしております。
正直痛いです。涙目ですよ。まったく。
チョップする寸前に、手よ固くなれ〜ってイメージしたのが幸いし、骨は折れなかった。
「実技試験終了!まさか、倒してしまうなんて!それも一撃で!おぉぉ」
興奮する受付嬢はいつも以上に煩い。
「えぇ、ゴオリさんも倒れてしまい、現在、ギルドにCランク以上の冒険者がいないため、カナリアさんの試験は合格とし、全ての試験を終了致します。お疲れ様でした」
え、待って!?
カナリアは試験無し!?え!?
俺は手を痛めたのに!?
理不尽だよ!
「すみません、伊織さん。何だか私だけ楽をしてしまって」
「い、いや、いいよ。気にしてないから。それよりもさ、魔石売りに行こ」
クッ、ここで強く出れないのがコミュ障の性というやつか。悔やまれる。
程なくしてギルドに戻った俺らは魔石を売った。
ゴブリンの魔石が40個近くと、オークの魔石が15個程、5、6匹の群れで行動するシルバーウルフの魔石が20個程度。
それを換金すると、全部で銀貨5枚と銅貨が少しになった。
ちなみに、この世界では
銅貨1枚=100円
銀貨1枚=銅貨100枚=1万円
金貨1枚=銀貨100枚=100万円
白金貨1枚=金貨100枚=1億円
という塩梅である。
覚えやすくて助かる。
今泊まっている宿屋は一泊おひとり様銀貨2枚だ。
この世界では高いらしい。
まぁ、そりゃ、ラブホだしな。
日本のラブホ事情は知らん。だって、俺、彼女いたことないし、童貞くんだから。
か、悲しくなんかねぇし。
むしろ、魔法使いになれるって喜んでるし。
「この後はどうしますか?」
いつの間にかギルドを出ていたと思ったら、不意にカナリアに声をかけられた。
「んとじゃあ、買い物でも行くか。色んな物を新調しないとだしな」
そう言うとカナリアは目を輝かせて、
「やっと食材があつめられますね!後街を回るのもたのしそうです!」
と上目遣いで元気に言うもんだから、
可愛い。でも、やべ。
女子の買い物ってそれはそれは最悪だよって、イケメンの友達に言われたんだっけな。
何が最悪かっていうと長くて色んな所を回るもんだから疲れるらしい。
言うのやめときゃよかった。
と、後悔するのであった。
それでも、
「ありがとうごさいます、伊織さん」
何気ないことにも感謝を述べてくるこの金髪美少女の上目遣いを見れてよかったな、と何だか得した気分になるのだった。
プロットとか考えてないんですよね。
なんかこんなんあったらおもしろいなぁって軽い気持ちで始めたので。
時間があったら考えときます。