クリスマス特別編 聖夜前祭 脱!クリぼっち!
ガチで非リアな僕が!一生懸命妄想に妄想を重ねて書きました!妄想バンザーイ
尚、本編とは時系列的にも、ストーリー的にも全く関係ありません。飛ばしていただいても結構です。
悲しいクリぼっちが時間を潰すために書いただけです。ほんと、悲しいかな。
べ、別に彼女なんていら、いらないけどね!
街を行き交う雑踏が、今日はやけに騒がしい。
そして街灯は装飾が施されていた。
季節は冬となり、今は夜のため気温もぐっと下がっている。
そんな街を白い息を吐きながら、今いる都の拠点に向かう男女2人。
――俺とカナリアだ。
「なあ、いつもこんなに賑わってたっけ?」
この街は大概騒がしいが、いつにも増して騒がしい気がする。
何か行事ごとでもあるのだろうか。
「いえ……ここまで騒がしくはなかったと思いますが……」
金髪金眼の美少女は答える。
「それにしても、リア充……カップル多くないか?そういう行事とか知らない?」
この季節にリア充を見ると、地球で独り寂しく過ごした嫌な行事を思い出す。
「えぇっと……あ、そういえば今日は『聖夜前祭』でした。私、このような行事ごとに参加したことがなかったので、すぐに思い出せんでした。すみません」
カナリアは謝る。
正直言って、カナリアって謝りすぎだと思う。
何だか罪悪感にかられるから、あまり謝らないでほしい。
そんなことはどうでもよくて
「『聖夜前祭』って何?あれ?キリストの生誕祭なはずなのに、いつの間にか非リアを除け者にしてリア充共が勝手に盛り上がってるクリスマスとかクリスマスイヴのこと?」
クリスマスになどいい思い出は無い。
毎年毎年、部屋にこもってネトゲやらアニメ鑑賞やらをただひたすらしていた思い出しかない。
べ、別に彼女なんて欲しいとか思ったことねぇし……
「『ひりあ』や『くりすます』のことはよく分かりませんが、過去の偉人の生誕祭という認識は間違ってません。それに、何故かこの時期になると番いの方が増えるんです。なんででしょうね」
ほんとに謎だ。
世界三大怪奇イベントとか言ってしまっても差し違えないのではなかろうか。
他の二つは、その内考えるとしよう。
「まぁ、取りあえず帰りますか」
「そうですね」
カナリアも同意する。
非リアでぼっちでハブかれ者の俺らには、全く関係ない行事ごとだ。
なんだろう……自分で言っておいて、悲しいかな。
拠点へ戻った俺たち2人は、何をするわけでもなく、ただただぐでーっと暖をとっていた。
どういうわけか、時間が過ぎるのがやけに遅く感じる。
暇を潰しに、リア充が沢山いる街にでも繰り出すか。
いや、決して手を繋いだリア充の真ん中を通ろうとか、生卵ぶつけようとか思ってないから。
「ちょっと、散歩しに街に行ってくるよ。カナリアはどうする?」
「ついて行ってもよろしいでしょうか?私も丁度夜風を浴びに行こうと思ってましたので……」
「じゃあ行こうか」
俺たちは雑踏を踏み分け、色んな店を冷かし回る。
カナリアはちょっぴりドジッ娘属性も持ち合わせているので、はぐれないようにと俺の隣で地味に袖を握っている。
童貞くんには刺激が強いであります。
こうしてると、周りからはリア充に見えたりするんだろうか。
なんて、彼女いない歴=年齢の童貞くんはご都合な考えに想いを馳せてしまいます。
そうして調子に乗って告白した奴の末路を知っている。
なんて世界は残酷なんだ!って嘆くほどのもんだね、あれは。
しかし、女の子と――それもこんな美少女と並んで歩いたことなどない俺は、ちょっとばかし期待してしまう。
「見てください。雪が降ってきましたよ」
カナリアの言葉に妄想世界から帰還した俺は頭上を見上げる。
この世界に来て初めて見る雪だ。
地球の雪とは違い、降る雪の一つ一つがしっかりとした、肉眼で分かるほどの結晶の形をしている。
まだ地面が冷えていないために、雪が積もることはないが、降っている雪を見るだけでも一興といえる。
なんかおっさんくさいな。
頭をよぎった言葉に、苦笑する。
「なんていうか、幻想的だな」
「はい。人と見る雪は一層綺麗に見えます。これも伊織さんのおかげですね」
カナリアが微笑みかける。
やめてくださいすいません理性がふっとびますうちに秘められし獣の魂が……うわぁぁぁあああああああああああああああああ
童貞殺しの天然カナリアの微笑みパンチで混乱に陥った俺は数十秒の時を経て、復活した。
アブナカッタ。
正直、何が危なかったのか自分でもよく分からない。
ただ、本能が危険だと叫んでいた。
「少しだけ、別行動してもよろしいでしょうか?」
カナリアが何か思いついたのか、そう切り出してきた。
「あぁ、いいけど何するんだ?」
「内緒です」
カナリアがつやっと潤った唇に人差し指をあて、にこりと悪戯を思い付いた子どものように笑う。
「そそそそ、そうか。よ、夜道は危険だし、気をつけろよ?……この人の多さだから集合は拠点でな」
俺がそう言うと、カナリアは少し楽しそうに雑踏の中へと消えていった。
さて、俺は何をするかねぇ。
あぁ、そうだ。いいこと思い付いた。
俺は1人、カナリアのように笑った。
周りに気付かれないように、小さく笑ったから安心して。
小一時間、別々に店を回り、拠点へと帰還した。
「ただいま」
カナリアはまだ帰ってきていないようだ。
数分してからカナリアは帰ってきた。
「伊織さん、あの、ちょっといいですか?」
「はい、どうぞ」
何故か背筋をピンと伸ばし、畏まってしまった。
「いつもお世話になっているお礼です。……その、これからもよろしくお願いしますね、伊織さん!」
カナリアはそう言うと、背後に回した手から綺麗に包装された箱を出した。
「あ、ありがとう……中、確認していいか?」
半ば予想していたとはいえ、やはり驚くものは驚くのだ。少し、たじろいでしまった。
それに、滅茶苦茶嬉しい。生まれてよかったと、異世界に来てよかったと思えるほどに。
「はい、どうぞ」
カナリアがはにかみながら返事をする。
この世界では上質といえる紙を使っている包装紙を、破らないように慎重に取っていく。
包装を取り、箱を開けると中には銀色のブレスレットが入っていた。
ブレスレットには紅色の宝石が埋め込まれており、それだけでもかなりの額だと分かるほど良いものだった。
俺は早速ブレスレットを嵌めた。
「そのブレスレットには特殊な効果は含まれていませんが、その紅色の宝石は心からの願いが1つだけ叶う願いの宝石とも言われているです。私は特に何も出来ませんから……その、伊織さんには、とても感謝しているので……せめてものお礼をと……」
「……ありがとう」
俺はもう一度礼を言い、赤く染まってしまった顔を、見られぬようにとそっぽを向いた。
たぶん、気付かれていると思うが……
少しの時間を有し、気を取り直してカナリアを見る。
カナリアは首を傾げた。
「……実は、俺からもあるんだ。その……えっと……贈り物が」
「え!?」
カナリアが心底驚いた表情を見せたが、俺は言葉を続ける。
「目、瞑ってくれないかな……?や、やましいことするつもりはないから!」
流れ的にちょっといけない雰囲気になりそうだったので、慌てて否定したが、カナリアは分かっていたような表情でそっと目を閉じた。
あ、うぅ、焦っていた俺が恥ずかしい。
俺はそっとカナリアの後ろに回り、首にペンダントをかけた。
「目開けていいよ」
カナリアは閉じたときと同じようにそっと目を開け、首にかけられたペンダントを凝視する。
「こ、これって……」
「被ったちゃったみたいだな」
俺があげたのは、紅色の宝石が埋まったペンダントだ。
ブレスレットを貰った時は「あ、どうしよ」とか心配したが、杞憂に終わったようだ。
「……お揃い……ですね」
カナリアは顔を上げ、今日一番……いや、出会ってから一番の笑顔でそう言うのだった。
――友達以上恋人未満。まぁ、ハブかれただけだけど……
――大切な人に贈る願いの宝石。
性なる……間違えた。
聖なる夜もたまには悪くないかな。
なんて、柄にもなく思う伊織だった。
はい、この後は健全におやすみしたのでご安心を。