前途多難?
投稿遅れました。m(__)m
差し出した手を快く笑顔で握り返してくれた聖女、もといカナリアに礼を言い、今後について話し合うことになった。
「取りあえず、色んな所を回ろう。あてのない旅をしよう。そして2人とも、気に入ったところに住んじゃえばいいしね。ほらハッピーエンドしか見えないよ」
そう言うと、カナリアは怪訝な表情を浮かべ
「それはいつかは、私たちも別れるということでしょうか?」
カナリアが俺に問いかける。
「え、そうじゃないの?べ、別にカナリアがいいなら俺は、別れなくてもいいけど……」
実を言うと別れたくない。
こんな可愛い美少女と誰が別れたいもんか!
「は、はい!そ、それよりも、今カナリアって……」
カナリアが頬を赤らめ、はにかんでいた。
女の子を名前で呼んだのは、初めてです。はい。
なんせ、前の世界では友達すらいませんでしたからね。はい。
「あ、えっと、その、俺のことも伊織って呼んでいいよ。これからは長い付き合いになりそうだからさ」
あてのない旅だ。長くないなんてことは、あり得ないだろう。
そしたら、最初から近づいていた方が、此方としてもやりやすい。
「はい、これからよろしくお願いしますね。伊織さん」
敬称付けかぁ。まぁ、今はまだいいか。
それよりも、話しておきたいことがあるな。
「カナリア。聞きたいことがあるんだが聞いてもいいか?」
「はい、私に答えられるものなら」
「ありがとう」
俺は先に礼を言う。
それ程までに、今から聞くことは大事なのだ。
これからの全てがかかっていると言っても過言ではない程に。
「俺、スキルの使い方知らんのだが……」
「……え?」
カナリアが腑抜けた表情を浮かべる。
俺としては結構真面目に言ったんだが……
「えっと、つまりスキルや魔法が使えないということですか?」
「うん。だから、教えて欲しい」
カナリアは困っているようだった。
「分かりました。スキルや魔法の使い方をお教えします。まず、スキルや魔法ですが、一度水晶に触れたことのある者なら、ステータスオープンと言うと、いつでもどこでも自分のステータスを見ることができます」
俺は試しにステータスオープンと言ってみた。
すると俺の眼前に、半透明のステータス画面が表示された。
このステータス画面は、他者が見ることはできないそうだ。でも、絶対ではないらしい。
こういうのを見るためのスキルもあるとカナリアは言った。
「では、スキルから説明したいと思います。スキルはその人の生命線でもあります。なので、不用意に他人に教えないことは、暗黙の了解となっています。
私は伊織さんのことを信じるつもりなので、今回の説明のためにスキル明かしますね。……私のスキルは【完全魔法】と呼ばれるものです。他にもいくつかありますが、今は省かせていただきます。
そして、これは固有スキルなので、私以外持つ者はいません。このスキルは、ありとあらゆる魔法の詠唱を破棄、威力を本来よりも数段上に引き上げるというものです。あとは魔力の消費量を減らすことぐらいですかね。
スキルの使い方としては、頭でスキルを使う、とイメージして魔力を操ることで使うことができます」
えっと、説明が長くてよくわからなかったが、兎に角、聖女のスキルはやばいってことだな。
詠唱破棄と威力増加に魔力消費量軽減とかもうチートだわ。しかも、他にもあると。
これを切り捨てられるほど勇者は強いスキルを持ってるってことか……
「えっとー、取りあえずイメージってことだよね?魔法もスキルも」
「はい。その解釈で大丈夫です」
俺はステータス画面のスキル欄にある【幻想創作】を目を凝らして見つめてみた。
すると、備考と出て、スキルについて詳しく分かった。
【幻想創作】:ありとあらゆる物質、魔法、スキルを創りだす。自身のイメージの強さにより、スキル成功率が変動。物質は質量により消費魔力が変動。
うわ~、なにこのチート能力。これは流石に、自分でも引くわ。
俺はカナリアにスキルのことを明かし、スキルの使用の仕方を練習した。
俺のスキルの内容を聞いた時、カナリアは絶句していた。
だがその後、「私のこと、信用してくれたんですね。ありがとうございます。ふふふ」と悩殺スマイルを決められ、本当に悩殺するかと思った。危ない娘だよ、まったく。
結論から言うと、スキルはすごく簡単だった。
この世界の人間からすると、扱いにくい類のスキルに入るらしいが、妄想力に長けた俺――というか、創作物に触れる機会の多い現代日本人には、何の支障もきたさなかった。
実に使いやすい。
「スキルも使えるようになったし、一番近い町か村目指していきますか」
今回のスキルの練習で得た魔法は使い勝手が良かった。
カナリアに教えてもらったわけだが。
使えるようになった魔法は生活魔法と空間魔法いうものだ。
生活魔法には、体の汚れや部屋などの汚れを落とす「クリア」や物を乾燥させる「ドライ」がある。
空間魔法は習得するのに時間が掛かる上に、魔力の消費が大きいため、俺のさほどない魔力量では、アイテムボックスが限界だった。
アイテムボックスは、中が時間と隔離されているため、時間は進まない。だから、食べ物が腐らない。
でも、生きたものは、入れられないらしい。
容量は魔力量に比例するとか、なんとか。それでも、使い勝手が良いのには変わりない。
カナリアの荷物がないのは、そのためかと思ったが、それもあるし、本当に荷物がなかったと言われた。
「確か、この場所から一番近い村でも、歩いて半日はかかるはずですよ?」
「え、なにそれ、聞いてない」
ここから一番近い村は、ミル村とかいう小さな村らしい。
で、その先に大きめの町があるとか。
前の世界で、半日歩き続けたことあったけど、その時はやばかった。
何がって?全身の筋肉がだよ!
普段運動しない俺にはキツイ。しかも、道はあまり整っていない。
「……頑張りましょう、伊織さん!さぁ、行きましょう!」
カナリアの元気が、どこから来るのか知りたい俺であった。
歩くこと数時間。村まであと3/4の距離まで来たぐらいだ。
奴が現れた。
そう。ゴブリンどもである。
緑色の荒れた肌に、獣の皮のような腰巻を身に着け、稚拙な剣を持ち、ギーギー喚きながら、俺たちと相対している。
その数は約15体。
「むぅ……やはり人型の魔物を討つのは、気が進みません」
カナリアはそう言いつつも、周りの木々を燃やさぬよう、風魔法でビシビシとゴブリンに首ちょんぱしていた。
「いや、今の状況を見て、そう思ってるとは到底思えないんだが……あ、5体くらい残しといて。実践練習するから」
俺がそう言うとカナリアは、キッチリ5体だけ残して攻撃を止めた。
「さんきゅ。てか、うん、器用だな」
カナリアの技量には、正直驚いた。
聖女さんマジぱねぇっす!ぐらい。伝わらん。
残ったゴブリンに、今しがた創った装飾品の類が一切ない、質朴な両刃剣をゴブリンに向ける。
これは、装飾のない寂しい剣だが、ZDP-189鋼(?)をチタンでサンドした――何だっけ?あぁ、クラッド鋼とかいう素材で作った、電流を流せばギガ〇レイクっぽいのまで撃てちゃう、なんかすごい剣なのだ!
切れ味サイコーなのだ!
上段から斬りかかってきたゴブリンの攻撃を、半身になって避け足をかける。
態勢が崩れたゴブリンの首に剣を振り下ろす。
振り下ろされた剣は、空を切るような軽い感覚のまま、ゴブリンの首をすっぱりとちょんぱし、ゴブリンの頭を落とした。
ひいぃぃぃ!?切れすぎ!怖い!
あまりの切れ味に、創った本人の俺もびびったが、まぁ、俺作だし、うん、仕方ないってことにしよう。
今度から違う剣を使うことにします。はい。
残りの4体のゴブリンに再び向かい合い、相手の動きを待った。
この世界のゴブリンは意外にも、学習能力が高く、俺を包囲してきた。
だが、数が数だ。4体じゃ真面に囲めない。
俺は一番近くにいたゴブリンに肉薄し、真一文字に剣を薙ぐ。
斬られたゴブリンは、体が真っ二つに分かれたが、その末路を見ずに半回転し、剣を突き出す。
突き出された剣は接近していた2体のゴブリンを貫き、串刺しにした。
やっぱりゴブリンのおつむは弱かった。
頭が良ければ、背後も対応されると、今ので分かるはずなのに、最後の1体が俺の背後から飛びかかってきたからだ。
俺は飛びかかるゴブリンを一瞥し、刺さったままの剣を引き抜くのと連動した右肘をゴブリンの横っ面にぶつけた。
ちょっと痺れた。
吹き飛ぶまではいかないものの、ゴブリンは数歩たたらを踏んだ。
その隙を見逃さず、右肩から腰までの深い傷を与え、命を奪った。
初めて魔物の命を奪ったが、特にこれといった心情の変化はない。
俺って冷めてるんだろうか……?
ちょっと不安になってきた。
「初めての戦闘にしては、手際が良かったですね。流石と言うべき何でしょうか?」
「……どうかしましたか?そんな顔されて」
あれ、表情に出てたのか。
そう言えば昔、先生たちにも言われたな。露骨に嫌な顔すんなって。した覚えないのに……
それで、よく怒られたんだよな。なんて理不尽な顔だよ!?
それはいいとして――よくねぇけど……
「いんや、ちょっと気になったことがな。……カナリアはさ、初めて魔物を殺したとき、どう思った?」
「気持ち悪いですって思いました」
はい、即答でした。
どうやら、この世界の住人は、こんなもんだそうです。
日本人の優しさが実感できる世界ですよ、ここは。
この世界では、俺は冷たくない。でも、あっちでは非道。ってことだな。
ま、それでもいいか。
こういう適当に割り切っちゃう所が冷たいって思われるんだろうな。
考えるのが億劫になったので、自己完結させときました。
「さぁ~いくぞ~」
魔物の心臓部から取れる魔石を、カナリアの指示に従い、剥ぎ取り、「クリア」で返り血を落として、俺たちは村を目指してまた歩き始めた。
着きました。ミル村。
村の大きさは……分かりません。すいません。目分量で距離とか分からないタイプの人間ですいません。
人口は50人前後とそこそこ少なめで、寂れた感じが否めない。
「宿屋がこの村にあるんでしょうか?」
「なかったら野宿だな」
「それはお断りしたいです」
村に入り、辺りを見回すが、特にめぼしい物はない。
すると、村の住人がやってきた。
結構な年寄りの爺さんだ。
「旅のお方ですかな?見ての通りこの村には何もありませぬ。なので、おもてなしも何も出来ませんが、それでよろしければ空いた民家を自由にお使い下さい。私は村長なので、少しの融通はきかせましょう」
村長はしわがれた声でそう言うと、村の一番大きな家へと帰って行った。
「どうする?なんかやばそうな雰囲気なんだけど……?」
なんか大事になりそうだなぁと思いながら、隣にいるカナリアに訊いた。
「根源は絶ちましょう!伊織さん!」
カナリアは目を輝かせて言う。
「お前、ほんとそういうとこ聖女だよな」
何だかいいように使われてる気がすんのは俺の勘違いだと思いたい。
感想とか待ってます。誤字脱字も。
文才欲しいぃぃぃいいいいいいいい