私はこれから・・・
最後だけ見てもらっても結構です。
聖女side
生まれて1年程経つと、ステータスチェックと言って水晶による鑑定が行われます。
そこに表示された職業によって、その人の将来は決まってしまいます。
自分の才能が十分に活かせる職につけるんですから、不満を持つ人はほとんどいません。
騎士も王女も国王でさえ、生まれたときに決まってしまうのです。
そして、私が生まれ持った職業は聖女というものでした。
聖女は世界に数人といない珍しい職業だそうです。それ故、強力な固有スキルを有しています。
そして、聖女の仕事というのは、その強力な力を活かし、人々を、民を守ることでした。
物心つく前から、聖女としての作法や力の使い方など、色々なことを学びました。
もちろん、自分の時間なんて寝る前くらいしかありませんでした。
それでも、自分の力が誰かを救えるということが励みになり、続けることが出来ました。
時間は流れゆき、15歳を迎えた年でした。
突如として、沈黙を保っていた魔界と呼ばれる国が動き始めたのです。
その日から魔物の数は格段と増え、都市の外はとても危険な場所となってしまいました。
そんな中、私に与えられた仕事は、人々の命を最優先に、魔王軍と呼ばれる侵略者の排除でした。
魔王軍と真面にやり合えることのできる人間なんてたかが知れています。
魔族はとても強いのです。なので、獣人と手を組み、殲滅戦を行ったのですが、結果は敗北でした。
それでも、魔王軍に痛手を負わせることができました。
それから数か月は冷戦状態になりました。
しかし、また最近になって魔王軍は動き始めました。
それに気付くのが遅れ、魔界に一番近い村は壊滅。誰一人として、生きている者はいませんでした。
そこで私は自分の背負っているものに気が付きました。
それは一人の少女が背負うには重すぎるもの。つまり
――命
私は自分を恨みました。
どうしてこんな職業を発現させたのかと。
お門違いというのは、わかっています。でも、それでもこうする他にどうしようもなかった。
仕方なかったんです。
王城に召喚されたのはそれから少し経ってからです。
「お前はもう用済みとなった。人を守れずして何が聖女じゃ。今しがた、勇者召喚に成功した。これでお前の仕事は無くなったというわけじゃ。さらばだ、聖女カナリア・セインティーンよ」
「なん……で……」
私から漏れたのはその一言だけでした。
漏れだした声は室内を反響し、消えてなくなっていきました。
それと同時に踵を返し、走って王城を飛び出してここを出ようと決めました。
元々、荷物といえるものすら持っていなかったので、手ぶらで王城から直接門まで向かいました。
世界というものは狭いもので、私が聖女ではなくなったことは、すぐに知れ渡っていました。
どうやら、今の今まで知らなかったのは私だけのようでした。
聖女でない私を門番が捕まえ、嫌なことを無理矢理させようとしてきました。
人に力を使うわけにもいかず、周りは関係ないとばかりに目を背ける者ばかりでした。
そこで出会ったのが珍しい黒髪の少年です。
彼は他の人と同様に、私を見ていながらも、素通りして門から出ようとしていました。
魔王軍が迫ってきている今、門から出るのは護衛をつけた商人ぐらいのものです。
そして彼は見るからに商人ではなかったし、見たことのない服を着ていました。
だからもしや、彼が勇者なのでは?彼ならば助けてくれるのでは?と淡い期待を抱き、助けを求めました。
「待ってください!助けてください!」
彼はやってしまったという後悔の表情を浮かべた後、私を見て覚悟を決めたような表情に変えました。
私、そんなに必死の形相だったのでしょうか?ちょっとショックです。
彼は門番の男性の背後に周り、急所を蹴り上げた後、私の手を掴みました。
そして私たちは門をくぐり抜け、走り続け、やがて止まりました。
うぅ……とても恥ずかしかったです。
頬が熱くなるのを必死に抑え、彼との対話に挑みます。
すると、彼は勇者ではなく、一緒に召喚されただけのただの一般人で、だから王城からつまみ出されたと言っていました。
細かい点は違えど、私と似ています。私はそんな彼に興味をひかれました。
そして彼は今、私の眼前で頭を下げ、手を差し伸べています。
プロポーズみたいでとてもとても恥ずかしいです。
でも、彼に応えなければなりません。
見ず知らずの私を助け、自分と同じ境遇にいる彼がどういう人物で、どういうことをしていくのか。
ついて行くのか行かないのか、決めるのは私です。
私は今、自由なのですから。
いろいろな想いを胸に、私は彼に差し伸べられた手を
――強く握り返しました。
何だかよく分からなくなってしまいました。2000字程度ですかね。
いろいろ待ってます。