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決着の時

ハブハブの設定が紛失してそれによる体調不良の所為で遅れました。

豆腐メンタルだから体調不良になるんでしょうか。

鋼の心が欲しいです(切実)

 短期決戦のコツとしては急所をつくことにある。

 各種族ごとに急所の位置は決まっているが、個体差があり多少のずれが生じる。

 だから、魔物の軍勢との戦いでは定期的に鑑定スキルを使用していた。

 鑑定スキルのレベルアップによって急所の把握が途中から出来るようになっていたのだ。


 そんなことよりも今は目の前の敵に集中しないとな。


 鑑定スキルを使って敵の急所を探る。


 まあ、解っていたと思うが、そんなものは見つからない。

 そもそも碧竜ディペストの名前が分かった時点で急所も分かるはずなのだ。

 分からないってことは俺のスキルのレベルが足りないのか、急所や弱点が元々ないかだが。


 どっちにしろ、攻撃を仕掛けてみないといけないことには、かわりない。


 そう思い地面を踏み込み、距離を詰める。

 10メートルくらいなら影化している今なら、一瞬で肉薄できる。


 ディペストの顔の正面に着いた所で、その眼に向かって思いっきり剣を突き立てる。


 ――が、相手は竜種だ。

 見えていたと言わんばかりに、(まぶた)を閉じることで剣を弾く。


「――ッ!瞼も硬いのか!」


 力いっぱい剣を突き下ろしたために、その反動で肘から指先にかけて強烈な痺れが走るが、気にしている程の余裕はない。


 左から襲ってくる致命傷確定の竜の爪をディペストの顔を蹴ることで躱し、距離をとる。


 間髪入れずに接近し、何度か攻撃を入れるもほんの数ミリ単位の浅い傷しかつけられない。

 それに、皮膚が硬すぎて剣の消耗が激しい。一撃で刃こぼれを起こすほどだ。

 こっちには【幻想創作(イメージクリエイト)具現化(リアリゼーション)】があるから、余程問題じゃないが、普通だとそうもいかないんだろうな。


「いきます!」


 何度目かの攻撃の後、カナリアからの声が飛ぶ。


 何してんだろ、と思っていたらどうやら魔力を練っていたらしい。


「ヘルフレイム!」


 火の上級魔法に値する技だ。


 空気が揺ぐ。

 瞬間、ディペストを中心として超熱量の火炎が渦を巻く。


「あぶっ、熱っ!」


 回避するのが少し遅れたせいで熱かった。

 髪とか燃えてないよね?大丈夫?一生ハゲとかやだよ?


 影に潜って退避する方法もあったのだが、いかんせんあれは消費魔力が多い。

 大量の魔力を消費すると影化による強化(ブースト)の時間が縮まる。

 それはどうしても避けたい。


 っと、どうやらヘルフレイムの炎が消えたようだ。

 これで倒れてくれればな、なんて思ったりもしたが現実はそう甘くない。


 草ひとつない焦土の上に立つ強者(ディペスト)には目立った傷は付いていない。

 若干、皮膚に火傷の跡が残っている気もするが、ディペストにとって大した傷ではないのだろう。


「グギャァァァアアアアアアア!!」


 熱かったのか鬱陶しかったのか知らんが、怒ってしまった。

 しかも最悪なことにその憎悪(へイト)はカナリアに向き、標的(ターゲット)が移ってしまった。


 何とかしてこっちに注意を移さないと。


 カナリアは近接戦闘が苦手だ。

 聖女時代?に護身術を習った程度だと言っていた。

 一度だけ魔物相手にしてもらったのだが……

 まあ、そのハイスッペックな才能(センス)のおかげであれは護身術なのかも疑わしい。

 あれは格闘技って言ってもいいんじゃないだろうか。


 そんなカナリアだがステータスのスキル構成は完全な後衛職だ。見たことないけどたぶんそうなのだろう。

 あんな華奢な身体に竜を殴れるほどの力がないことくらい赤ちゃんでも分かることだ。


 さて、どうしたもんか……


 色々な手を考えながらも、ペチペチと斬撃を加えていく。

 斬撃がペチペチというのもどうかと思うが。


 本当なら斧とか槌で打撃を与えたいのだが、打撃系のスキルはどうしてか取得できない。

 そういうわけで現在進行形でペチペチしている。


 ペチペチ


 ペチペチペチ


 ペチペチペチペチ


 ペチペチペチペチペチペチペチペチ



「ギャァァァアアアア!!」


 余りにも鬱陶しかったらしく標的(ターゲット)がこっちに移った。


 何というか……結果オーライだ!


 しかし喜んでいる暇はない。

 時間がないのだ。

 影化の残り時間(タイムリミット)はあと3分と言ったところか。


 外部からの攻撃の効かない相手には内部からの、体内への直接攻撃が有効なはず。

 それには口を開かせないとな。


「カナリア!打撃系とか、こう悶絶しそうな痛みを与える魔法を頼む!俺のことは気にしなくていいから!どんどんやっちゃって!」


「や、やってみます!」


 テキトーな指示だが、カナリアならやってくれるだろう。たぶん。


 直後、ディペストを囲むようにして大きな岩がいくつも出現する。

 からの一斉射撃。


 ドドドドドという轟音を立て、弾丸の速度並みの岩がディペストへと衝突していく。


 轟音が鳴りやまぬ中、風がディペストに向かって吹いて行った。


 ……風?


 そう思うや否やディペストを中心地として竜巻が天に向けて昇った。


 取り囲んでいた岩は全て打ち上げられ、周囲へと拡散されていく。

 あの岩が頭にでも当たったらただでは済まないだろう。てか、即死だな。


 天に昇る竜巻が突如として軌道を変えた。


 ――俺に向かって


 竜巻の先?が矛のように鋭く尖り、纏う風が螺旋を描く。


 避けられないッ!?


 地を踏み込もうにも踏ん張るのがやっとだ。

 もし、無理にでも走ろうと片足を地面から離した瞬間、螺旋に渦巻く風に攫われて風の矛の餌食になるだろう。

 そうなれば死は免れない。


 一瞬で考えをまとめ上げる。


「影移動」


 影化により影に潜ることができるから可能な技だ。


 世界が反転する。

 色鮮やかだった視界は白と黒のモノクロームへ変わり、時間の流れが緩やかになる。


 影移動はその名の通り、影から影へと移動することが出来る。

 そして、今いるこの影世界では時間の流れが現実世界に比べて、格段と遅い。

 だからといってずっと潜れるわけではないが。


 影世界は昼間の方が安定している。光が強いと影も濃いからだろう。

 夜は逆に不安定だ。ノイズが走るように影世界は揺らいだりする。

 だが、新月の夜は一番安定している。何故だろうか。

 推測だが、新月の夜は全てが影として扱われているのだろう。そうしよう。


 今日は運よく満月だ。影世界もそれなりに安定している。

 これなら少し長い距離も移動できるだろう。


 影世界の地を蹴っ飛ばし、カナリアの影へと移動する。


 再び、世界が反転した。


 今まで俺が立っていた場所は風の矛に抉られ、大きな穴となっていた。

 あそこに居たら今頃俺は、ミキサーにかけられた果物のようにグチャグチャになっていただろう。


「伊織さん!」


 カナリアの悲痛な叫びが鼓膜を震わす。


 恥ずかしいとは思うが、現実を認めろ。

 俺はここにいるぞ、カナリアよ。


 無駄な少しの勇気を持ってカナリアに話しかける。


「すまん、カナリア。俺はここにいるぞ」


 カナリアがビクッと肩を上げ、後ろを振り向く。


 そこにいるのは当然、俺。


「い、伊織さん。無事で、本当に、よかった、です」


 そう言うカナリアの声は震えていて、目も少しだけ潤んでいた。


 なにこの娘、かわいすぎ!それ反則!


 カナリアの心配をよそに、俺のテンションは上がっていた。

 も、モチベは大事だもんな!


 本来であれば、ここからギャルゲ……いや、エロゲ展開に持ち込むのだが(妄想で)、今は緊急事態だ。


「カナリア、そろそろ仕留めにかかるぞ」


 そう言って俺はある物体を創り出す。


「それは?」


 カナリアもどうやら気になるようだ。


「ふふん、これか?これはな――」


 秘密兵器の説明をした後に作戦を伝える。


「まずは俺とカナリアの2人であいつの動きを封じる。動きを封じても魔法は使えるから要注意な。その後にカナリアの魔法であいつの大口を開かせてくれ。転移魔法でも重力魔法でもなんでもいいから。何なら倒してくれても構わない。そしたら俺がこれ(・・)を口の中に放り込むから」


 影移動で魔力の大半を失った。

 影化できるのは後1分弱ってところだろう。

 その前にケリをつける!


「影縛り」「ホーリーバインド」


 同時に魔法を発動する。


 ディペストの影がディペスト自身に絡みつき、動きを制限している間に、カナリアから飛んで行った閃光がその上から巻き付く。


 これで動きは封殺した。


「グギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 今までで一番大きな咆哮を上げ、ディペストは次々と魔法を構築していく。

 しかし、俺はすでに走り出している。


 土魔法によってできた(つぶて)が風魔法の影響を受け、弾速を優に超す。


 それらを新たに創り上げた一本のナイフで往なし、躱しながら駆ける。

 捌き切れなかった(つぶて)はカナリアの後方支援で撃ち落とされていく。

 人差し指くらいの大きさしかない礫をよくピンポイントで叩き落せるものだ。

 カナリア様様だな。


 魔力の節約の為にナイフ一本なのは秘密で。


 俺とディペストの距離が縮まる。

 距離にして3メートル。

 一気に加速する。あと30センチ。

 そこにきて数多くの弾速礫を受けてきたナイフが砕けるが――


 ――上出来


 俺はニヤリと笑う。


「終わりだ碧竜ディペスト。【幻想創作(イメージクリエイト)】」


 魔力が枯渇しない程度の最大の魔力を使い、物体を何十個も創り上げる。


「おみやげグレネードでも食らっとけ!」


 創り出したおよそ100個近くの大量の手榴弾をディペストの大きな口に詰め込む。

 カナリアの何らかの魔法のおかげで口が全開だったので、詰め易かった。

 何をしたんだろうか。恐ろしくて訊けない。


 おみやげグレネードを詰め終わったところで、後方に思い切り飛び、退避する。


 刹那、ディペストの身体が膨張する。


 身体中からプスプスと黒い煙を上げ、地に伏せた。


「伊織さん!」


 カナリアが駆け寄ってくる。


 退避した時に丁度カナリアと反対に避けてしまったため、カナリアはディペストの横を通らなければいけないのだが――


 ――目が開いている!?


「カナリア!あぶな――」


 言い終わるよりも先に、竜の尾がカナリアに襲い掛かる。


 影世界のように時がゆっくりと感じ取られた。


 振り下ろされるその竜の尾が、俺には死神の鎌にしか見えなかった。


 ここで!ここで死なせてたまるかッ!


 咄嗟に影転移を発動する。

 対象の影と入れ替わったり対象の影の下へ影を通じて転移できる技だ。


 今回は瞬時にカナリアに被害が及ばない選択をしたために入れ替わりだ。

 そっちのほうがタイムロスも少ない。


 衝撃に身構えるよりも早く、竜の尾が身体を弾く。


 魔力が十分ならば、影化による影響で魔力と引き換えにダメージがなくなるのだが、その魔力がない上に完全な影化を保つこともできなかった。


 結果、俺の身体は地面に背中から叩き付けられる。


 ディペストの死に際の一撃だったのだろう。追撃はこなかった。


 そんなことよりダメージが酷い。

 骨とはそぼろ並みにポロポロに砕けているんじゃないだろうか。

 体がピクリとも動かない。


 俺は死ぬのかな。カナリアが助かったならそれでもいい、か。


 視界の隅にカナリアの姿が映る。


 視界を占めるカナリアの割合が大きくなる。


「伊織さん……伊織さん、死なないでください――完全回復(エクスヒール)!」


 カナリアが寝そべる俺に手を(かざ)し、最高位の回復魔法を唱える。

 優しい光に包まれて、すべての損傷が逆再生のように治っていく。

 手を開閉させてみるが、違和感も感じない。


 どうやら助かったみたいだ。死ななくてよかったぁ。


 カナリアが手を差し伸べた。


 手を取るのが気恥ずかしかったが、役得と思いカナリアの手を借り、立ち上がる。


「ありがとう」


 簡潔に。でもありったけの感謝の気持ちを込めて礼を言う。

 カナリアのおかげで今を生きれているんだ。

 そう思うと名状しがたい気持ちになってくる。


「――さい」


「ん?」


「もう、やめてください!あんな無茶をするのは!」


 カナリアが伏せていた顔をバッと上げる。


「無茶をするのは……もう、やめてください」


 そういうカナリアの顔は、今にも泣きそうで、俺は何も言えなかった。


「私は、前にも、言いました。あなたが……伊織さんがいなくなってしまったら、私は1人になってしまうと。私の()(まま)で構いません。私は……私は、1人は、もう、いや……なんです」


 知っているのに。知っていたのに。

 1人の辛さも、悲しさも。

 なのに……それを怖がる1人の少女に、それをさせてしまいそうになった。


 握った拳の爪が食い込み、血が流れる。


「戦う前に約束しました。勝負に負けた方は勝った方の言うことを1つ聞くと。私は勝負に勝ちました。……だから、私のお願いを聞いてください」


 カナリアは真剣な目付きでこう言った。


「あんな無茶はしないでください。……私を、1人にしないでください」


 そう言うカナリアは――泣いていた。


「……あぁ……絶対にカナリアを1人にはしないから」


 そう言うほかなかった。


 俺はこの日、心に誓った。

 ――カナリアを1人で泣かせない、と


「……一生、ですよ?」


 カナリアが首を傾げながら、上目使いで問いかけてきた。


 え!?一生!?け、結婚とかしちゃってもいいってこと!?

 あ、そういうわけじゃない?あ、はい。


 自業自得なのだが、早くも心ごと心の誓いは砕けそうだった。


「一生、な」


 返事を済まし、倒れている碧竜ディペストに近寄る。


 こいつを、生物の頂点の一角を倒したんだなと感慨深い気持ちになった。


 だが、こいつの所為で死にそうになったし、カナリアも泣いた(責任転嫁)。


 憤慨しそうになりながらも、何か報いらなければと思い、


 口にもやしを詰めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この戦いの後、カナリア・セインティーンと神作伊織はこう言われることになる。

 月の光も霞んで見える、金糸の如くきらめくその金の髪から《月光》

 月の光に映える影の如く黒い髪から《月影》

 月の光と月の影。その2つから《一対の月(ツヴァイ)》と


 この一戦は、のちに作られるこの2人のためだけの歴史書――〈月の暦〉の序章に過ぎない。

戦闘描写は難しい。

あと閑話や勇者sideの話を入れたら一章完結ですかね。

二章はどこを旅しましょうか。

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