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こんなにいたのか魔物くん!?

バレンタインデーは身内だけからチョコを貰いましたorz

バレンタインデー?何それ美味しいの?って感じですよね、ほんと、はい。世のリア充たちはさぞ、美味しかったでしょうね。


投稿遅れてすいません。

~~とある冒険者side~~

 緊急クエストの発令というのは「迷いの森」に近いこの都市――ダニアでは多いことだ。


 「迷いの森」は魔力溜まりと呼ばれる魔力濃度の高い場所が広範囲にわたっている森で、その魔力に(あて)てられた樹々が突然変化を繰り返し、迷宮のように入り組んでできているため、一部の者からはダンジョンとも言われている。


 そして、魔力溜まりのある所では当然、魔物が湧きやすい。


 森から出てしまった間抜けな魔物というのは多いものだ。

 その時は近場にいた冒険者にのみ緊急クエストを発令する。


 荒くれた冒険者がこの命令に従うのは、見返りが通常よりもいいからだ。

 緊急クエスト専門の冒険者もいると聞いたことがある。


 だから、今回の緊急クエストも同じようなものだろうと、魔道具による放送が繋がった時は思っていた。


『緊急クエスト!緊急クエスト!戦闘可能な冒険者は夕刻までに戦闘準備を完了させ、森に面した防壁付近へ各自集合せよ!これは強制である!もう一度繰り返す!これは強制である!』


 いつもと違う緊迫した口調の放送がダニアを包み込んだ。


 ダニアは冒険者業が中々に盛んで、冒険者には戦闘員と非戦闘員がいるが世界中でも冒険者数が多いほうだ。

 その戦闘可能な冒険者全てに発令された緊急クエスト。


 異例中の異例だった。




 そして日が傾き、辺りが橙色に染め上げられた頃、魔物(やつら)は来た。


「お、おい……嘘だろ……?」


 言葉が一人でに漏れ出した。


 視界を占領するのは総勢2万にも達するほどの魔物の大軍勢。


 こちらの冒険者はせいぜい500人といったところだ。

 削れたとしても2000体がいいところだろう。


 いや、確実に死者が出る。

 強制だとしても、自分の命は何ものにも代えられない。

 だから、逃げる奴だって出てくるだろう。


 そうすると1000体が限界だ。


 俊敏性の高いシルバーウルフやゴブリンの(おさ)であるゴブリンキングにオークの(かしら)のオークキング、鬼のオーガの頂点に君臨するオーガロードだっている。


 待ち受けるのは絶対的な死の予感。




 血塗られた真っ赤な末路を誰もが悟ったその時、地を揺るがす轟音と共に、希望の光が降り立った。


 魔力の流れを肌で感じ取り、その流れの行きつく先を注視する。


 嘘だ。


 そう思った。


 なぜならそれは、一人の少女が起こした奇跡(まほう)だったのだから。


 隣には珍しい――いや、見たこともない黒髪の少年が手を繋いで佇んでいた。

 遠すぎてよくは見えないが、黒髪の少年はこの戦況の中で薄く微笑んでいるように見えた。


 次々と魔法が放たれた。


 その度に魔物は押し潰されていき、血溜まりを作っていった。


 見たことも聞いたこともない魔法だった。


 魔法による攻撃が止んだ時にはすでに半分近くの魔物が跡形もなく消失していた。


 残ったのは約1万の魔物の軍勢と見事にくぼんだ平地とそこに溜まった血の池。


 この魔法を続けていけば勝てるはずだ!


 そう思ったのも束の間。


 強すぎる魔法には大きすぎる負荷が掛かる。

 魔法が止んだのはそういうことなのだろう。


 世界は無情で非情だ。


 そうやって悲観してしまうほどに、希望の光が閉ざされた絶望は大きかった。


 どんよりと呑み込むような暗い感情を誰もが持ちながらも、魔物と衝突した。


 魔物を殲滅するよりも自衛に全ての力を注いだ。

 それは周りも同様だ。


 数が多すぎる。

 このまま続けていたとしても、じり貧で命は(つい)ばまれてゆくだろう。


 恐怖と諦めと弱すぎる生への執念を瞳に映しながらも戦っていたその時、閉ざされていた希望の光が再度地を照らした。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 音が聞こえる。


 自らを叱咤し、魔物に向かっていく男の声。

 恐怖で震えあがりながらも、噛まないようにと慎重に、懸命に唄を紡ぐ女の声。


 魔法の爆発音。鉄の擦り合う音。悲鳴。激昂。焦燥。


 色々な音が鼓膜を打ち鳴らし、自分の意識を奮い立たせる。


 そう、俺はここで戦うのだ。

 命を持って。


 カナリアが半分削ってくれた。

 後の半分は俺の仕事だ。


 予想よりも多い?

 だから何だ。目の前には理不尽が迫っている。


 冒険者が敗北したらこの都市にいる人々が蹂躙される。


 俺は勇者じゃない。

 救えない命救わない。

 割り切れる。


 だが、救える命は全てを持って救ってやる!……つもりだ。


「どうしてそんな弱気なんですか!?」


 カナリアの悲鳴に似た声が俺の耳を突き抜ける。


「い、いや、だって……ねえ?敵、多くね?」


 ここまで勇者ないし英雄然と自分に語りかけてみたのだが、流石にこの魔物の数は……ねえ?


「頑張ってください、伊織さん!」


 カナリアはおかしいんだよ。

 どうやったら1万もの魔物を片手間で片付けられるんだよ。

 初撃がすごすぎて開いた口を塞ぐのに時間かかったわ!


 元とはいえ聖女パワーは凄まじい。


 そんなことを考えていると、カナリアがハッとしたように手をポンと叩いた。


「では、こうしましょう。魔物を多く倒した方が、負けた方に1つだけ言う事を聞かせることができる、ということに」


 何でも……か。

 ぐへへ、そんなこと言ってもいいのかな、カナリアよ。


 こうなった時の男の本気は怖いぞー。


「いいよ。やりますかね、それ」


 カナリアがふふっとかわいらしく笑った。


 んんっ!?何かおかしかったか?


 そう思った瞬間、パッとひらめいた。


 カナリアが倒したのは約1万。

 残り1万近く。

 俺が1万近く倒したとしても、勝てない。


「図ったなぁぁぁああああああ!!」


 嵌められたことに気が付いたって、そんなのはもう後の祭りだ。


「作戦大成功です!」


 今度はかわいらしくではなく、悪戯(いたずら)に成功した子どものように、無邪気に笑った。


 う、っぐ……か、かわいいから許す!


 全次元でも、人を動かすのはかわいさだと思う。

 勝てないよ、こんなかわいさ。


 そうやって何だかんだしている内にも戦況は変化していく。


 やはり、500人程度の冒険者では、この数を捌ききるのは不可能だ。

 それに1人で立ち向かおうとしているのだから笑えない。


 ……ま、仕方ないか……


「負けないように頑張りますよ」


 気怠げな言葉を残し、魔物たちのもとへと足を向けた。


 カナリアのお願いとか絶対に断れない気がするが、今回は勝負だ。

 死なないよう、負けないように適度に頑張りますかね。


「【幻想創作(イメージクリエイト)】【影魔法】」


 【幻想創作(イメージクリエイト)】でナイフを2本創り、【影魔法】で影と同化する。


 混戦時に大剣、長剣といった長い得物(えもの)を使うと、間違って味方に攻撃が当たりそうになるかもしれないとの考慮からのナイフだ。

 周りに迷惑をかけないよう生きていくのは、ぼっちの必須スキルだ。


 そして【影魔法】で極力、敵に見つからないように背後に回り込み、首筋をブサッ!


 いい作戦だ。

 名付けて、チキンでもやしな野郎がお送りする魔物の軍勢安全攻略法!


 僕、ほんと防御力ないんで。


 ま、途中から殲滅型の技に変えるけど、それはまだ秘密ってことで。




 ナイフを2本逆手に持ち、戦いの最前線へと駆ける。


 手始めに囲まれて今にもやられそうな冒険者の救出へ向かう。


 敵の数はゴブリン5体。


 今の俺なら余裕だろう。

 ……たぶん。


「ソイヤッ」


 ソーラン節よろしく元気な掛け声で()るのがコツです。


 仲間がやられたことに気が付いたゴブリンが、こちらを一瞥する。


 しかし、俺を捉えたところで、もう遅い。


「ソーラン!ソーラン!どっこいしょっ!」


 次々とゴブリンの首筋にナイフを突き立てていく。


 決まった、俺の三連コンボ!


 死んではないかもしれないが、これで後1体だ。

 死んでないゴブリンも時期に失血死とか何とかで死ぬだろう。


 そう思い、最後の1体のゴブリンに目を向けるが……


 いつの間にかいなくなっていた。

 ついでに助けた冒険者も。


「お礼くらい言ってもいいじゃんか。礼儀を知らんのか」


 お礼がなかったことに不貞腐れたが、まぁ助かったんだしいっかと気持ちを切り替える。


 だが、気になるのはゴブリンの方だ。


 ゴブリンは魔物ながらに仲間意識が強く、1体でも危害を加えれば、仲間を呼び寄せたり近くにいた集団が察知して襲いかかってきたりもするのだが、今回はそういうこともなかった。

 それに、普段ゴブリンは連携が取れているのだが、そういった動きも全く見られなかった。


 胸のうちにモヤモヤとした嫌な違和感が湧き上がるが、そんなことをいちいち気にしていられるほど悠長ではない。


 戦いの最前線でピンチな状態に陥っている冒険者たちに駆け寄っては、敵を斬り倒す。


 体躯が自分より大きな魔物は、足を斬りつけ態勢を崩させ、急所を一突きする。

 人型の魔物には首筋、心臓、眉間などにナイフを突き立て、動物型の魔物はよく分からないので眉間に狙いを絞った。


 そうやって前線の者たちを救いながら、敵の数を少しずつだが着実に減らしていった。


 助けた冒険者たちには、コミュ障ながらも一生懸命に説明し、カナリアのいる所へ回復させに下がらせた。


 あの、その、えっと、を連発していたので会話をしていた冒険者からは「何だこいつ」とか思われているんだろうと、なんだか暗い気持ちになった。

 いや、実際「は?」みたいな呆れた表情をされていたのだが……


 何とも世知辛い。


 ま、そんなことはどうでもよくはないが、どうでいいとしよう。


 冒険者を下がらせたのには他にも理由がある。


 先ほど言ったように、殲滅型の技を使うためだ。


 攻撃に巻き込んでしまって、慰謝料払えとか治療費負担しろとか言われたくないからな。


 異世界にそんな制度があるのかは知らんが。


「さてと、巻き込む心配もなくなったし準備開始と行こうか」


 殲滅型の技なんて言っても、その実、ただの【幻想創作(イメージクリエイト)】だ。


 【幻想創作(イメージクリエイト】を発現させるにはいくつかのプロセスがある。


 いくつかと言ってもたった3つなのだけど。


 まずは、想像(イメージ)

 これはスキルを使う上での軸となる過程なので、一番重要とも言えるだろう。

 それに、【幻想創作(イメージクリエイト】は自らのイメージに依存するため、尚の事、重要と言える。


 次に具現化。

 ここで想像(イメージ)したものを形にする。

 この間に魔力を消費する。

 この途中で魔力を注ぐのをやめてしまうと、形になりきれずに消滅する。


 最後が固定だ。

 想像(イメージ)したものを具現化(形に)し、最後に固定する。

 固定化した物質には魔力を通さなくても、実存し続けることができる。


 スキルと魔法を使うときには、形として存在させる必要がないため、想像(イメージ)から具現化を飛ばし、ステータスに固定化する。


 物質の場合はさっき言った3つのプロセスを踏む必要がある。

 その中でも具現化している時間は、極端に短いが。

 それは、タイムロスを防ぐために、いつもは具現化している時間を最小限に抑えているからだ。


 まぁ、これが本来の【幻想創作(イメージクリエイト)】の使い方だ。


 今から使うのはその応用。


 具現化している間は、魔力を消費しなければ、物質は形を保てないが、具現化にはそれをリスクとさせないリターンがある。


 具現化状態は自らの手を離れていても操作できるのだ。


 つまり遠隔操作だ。


 魔力を消費する代わりに自由自在に創った物質を操れる。

 ただ、操作が難しいので今までは好き好んで使っていなかった。

 最近使ったのは食器を創ったときかな。


 そうすれば皿へ供給する魔力を断って皿を消滅。

 洗わなくてすむ。ほら、便利。


 ん?能力の無駄使い?


 うっせ、ほっとけやい!


 無駄話もここまでにしよう。


「こっからは俺無双回だ」


 中二病臭い台詞を吐きながら魔力を練っていく。


「【幻想創作(イメージクリエイト)具現化(リアリぜーション)


 スキル名を呟き、体内の魔力を想像(イメージ)という型に流し込んでいく。


 光の粒子が集まり、物質を形成。


 そうして出来た8本の長剣は、俺の背後に円輪状に並んだ。


 念の為にもう一度辺りを見回し、周りに危険が及ばないかを確認する。


 よし、大丈夫。

 あとは魔物(こいつら)を片付けるだけか。


 両手に新たに創った2本の長剣を握り締め、敵の片っ端から斬り込んでいく。


 未だ消えない不快な違和感を押し殺しながら。

一つ反省がありまして……書く時期を間違えました。

どうして受験生である今になって書き始めたのでしょうかね、僕はバカですね。

Twitterしてるのでよかったらフォローしてやってください。@munichan_00です。

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