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踊り

王宮の広間に行くとそこには先ほどユアンにツカヤと呼ばれていた老女しかいなかった


「リュウジュ様、あなた様には首都ロウドに出発するまでの二ヶ月の間に踊りの名手になっていただきます」


「風の神に捧げる巫女の踊りを誰よりも美しく踊る訓練を、今から始めます」


「今から…」


「これはユアン様のご命令です」


「この広間にいる間は私は教師であなたは生徒なのです」


「一切の口答えは許しません」


「さあ、足首に力をつけるために、このカーテンにつかまり一時間正しい姿勢でつま先立ちをしなさい」


リュウジュは突然のことに戸惑ったが、ユアンの命令とあれば従わないわけにはいかない


この練習の場にフォンが入ることは許されなかった


夜になって広間から出てきたリュウジュは広間の扉の外に控えていたフォンの胸にふらふらと倒れ込んだ




姿かたちだけが人の美醜を決めるものではない


リュウジュを美しい踊りを踊れる姫に仕立てようとユアンは考えた

その踊る姿を美しいと、王に思わせようと


妖艶な宮廷舞踊はリュウジュには似合わない


踊らせるとしたら、巫女が奉納する風の舞しかないだろう

しかしあれは一朝一夕で習得できるものではない


小さい頃から特別な練習をして、基礎をしっかり習得したものだけが、美しい回転を続けられるバランスの良い体と感覚を手に入れられる


リュウジュがもともと正しい骨格をしていたのは幸いだった


後はリュウジュの努力にかけるしかない





ひと目に触れないよう育てられたリュウジュには筋肉がなかった

ほとんど幽閉に近い状態で育てられたのだ


まず筋肉をつけることから始まった


食事も特別な物が与えられたし、朝起きてからの二時間はみっちり筋肉をつけるための反復運動がかせられた

常に体中筋肉痛だった


まだ筋肉痛は我慢できた、我慢できなかったのは回転によるめまいだ


最後の方で何回も片足で回る動きは風の舞最大の見せ場なのだが、リュウジュは三半規管が弱いのか三回も回るとふらついて続けられない


まず三半規管を鍛えるために天井からぶら下がる布につかまり

何回も回された


これが辛い


何度も何度も吐いた


辛い練習に耐えるリュウジュをフォン見は黙って見守った





身体の辛さとは逆にリュウジュの心は穏やかだった

体の疲れのせいか毎晩ぐっすり寝られる


ここに来てからはナリにいた頃よりはよっぽど気が楽だった


何も考えずにすむ

ただユアンの命令に従っていればいい


もう自分が生きていくための作戦もたてなくていいし、あの時婚礼が調った時点で役目は終わったと言い渡されたから、ナリのためにナリのためにと頑張らなくていい


従うべき相手がいるというのはこんなに心強いものなのかとリュウジュは思った


ナリにいた頃はただ自分の真実の姿を隠すことに心を砕く日々だった


リュウジュはここに来て初めて目標というものをの持った

踊りの上達という


それに向けて努力するということは辛いながらもなんと気持の良いものか


けれど…

ユアンに女としての自分を拒否されていることには切なさを感じる


少しずつでも受け入れてもらえるよう努力するしかない…


それについては、いったいなにをどうすればいいのか見当がつかないリュウジュだった



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