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なぜ

誰一人、ルルドがなぜあんな行動に出たのかわかる者はいなかった


ルルド本人を含めて




それは年明けに起こった出来事だった


新年早々に地域の豪族、各役場の長、及び宗教指導者が集められて、ユアンの計画を聞かされた


もちろんルルドもである


宗教間の格差をなくすために初等教育の施設を作ることと、働けなくなった老人に手当を支給すること、その財源確保のために税を上げる


まず、目の行き届くガイナ北部から始める

そして、西部、東部、最後に南部


スオミ全土にこの制度を広げたら次はこの制度をエン国に持ち込む


そしてすでにこの計画はハアン王の賛同を得ているとの旨が伝えられた



簡単な話ではないとルルドは思った


恩恵より先に負担を強いられるからだ

途中で頓挫することも充分考えられる


頓挫するどころか税を上げることが王家への反感を呼び大きな一揆が起きる可能性もある

益々スオミを不安定な場所に変えていくリスクがある


だが…

もしこの制度が結果を生み人々に受け入れられば、王家のガイナ支配は盤石のものになるだろう


そしてこれがエン国に根付けば、エン国民はガイナの属国であることに満足してしまいそうな気がする


ガイナの

属国であることを…


そんなことになればエン国は将来的にガイナに完全に吸収されてしまう


それがわかっているからこそユアン王子はガイナ全土にこの制度を広げる前にエン国に持ち込もうとしているのだ



なぜこんなことを思うのだろう、自分は…


このとき、急にルドの視界が狭くなり意識が遠のいた

完全に意識を失う前に誰かが耳もとで何かをささやいた




皆に説明を終えて中会議場からユアンとルルドはユアンの執務室に帰ってきた


リアンはスバルたちとさらなる細かい数字の打ち合わせのために中会議場に残っている


執務室の前で二人はフォンと鉢合わせた


ナリから送られてきた薄い紙に書かれた古文書と、その内容を訳をした紙をリュウジュから預かりフォンはユアンに届けに来たのだ


ナリの古文書を公開し、この紙の耐久性を人々に知らしめようとユアンは考えていた


それによって今年収めた税の記録が五十年、百年経っても残こるであろうことを証明しようとしていた


「入れ」


そう言われフォンはユアンやルルドと共に部屋に入った


フォンは命令されユアンの執務の机の上に古文書を置き振り返った


その時である


机に向かって歩くユアンにすっとルルドが体を寄せた


それはまるで主君の肩についたゴミを払うかのようにあまりに自然になんの気負いもなく


けれどルルドがとった行動はユアンが左の腰につけていた守り刀を引き抜くというものだった


ルルドはユアンの真上にその20センチほどの刀を振りかざした


ユアンはルルドに対して疑いを感じていることがいくつかあった

なのでそれなりに警戒はしていた


城にいる間は帯刀も許していない


けれど…


不覚にもユアンはこの一連のルルドの動作に気付かなかった


それほどいつもとなんら変わらないルルドの気配だった




間に合わない!


フォンの手前にユアンがいたのでその後ろのルルドを突き飛ばすことはできない


そんな時間の余裕はない


この時フォンがとっさに取った行動は素早くユアンの首を押さえつけ床に倒し、その上に自分が覆いかぶさるというものだった


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