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友達

リュウジュが思った通り、第四部隊将軍の妻ミスズとルルドの妻リオンはすぐに仲良くなった


城で合った時に話すだけではなく、お互いの家を行き来するようになっていた



二人とも現在、自分が置かれている境遇に不幸せを感じていた


結婚によって大きく運命がネジ曲がった感のある二人である


ルルドの妻リオンは始めて自分の結婚について語る相手を得た




「そもそも私自身もなぜルルド様が私を妻選んだのかがわからないのです」

「なのに世間からは豪族の息子を色仕掛けでたぶらかした妖婦の様に言われ白い目で見られ続けているのです」


「私が辛いのはそれだけではありません」

「私との結婚によりルルド様は多くのものを失ってしまった…」


「ニレ家の籍を外され、世間からは色に狂った愚かな男の様に言われ…」

「もともと世間には王子に寄り添うたった一人の側近として力を得ていたルルド様に対する僻みのようなものがあったのです」


「今は少し落ち着きましたが、ここぞとばかりに世間の人はルルド様を必要以上に貶めようとした時期がありました」


「ただひとつの救いはユアン王子がルルド様の側近の任を解かなかったことです」


話を聞いていたミスズは頷いた


「私はこの北部に来ることをひどく恐れていました」

「私のような立場の者をユアン王子はどう扱われるだろうと」


「けれど、ユアン王子は他の婦人たちと同じように私も刺繍の会に参加するようにと勧めて下さいました」


「公衆の面前で」


「私がこの離宮の社交の場に参加することを皆の前でお認め下さったのです」


「リュウジュ様も同じように」


「リュウジュ様は深窓の姫として人とかかわらず育てられたとお聞きします」


「ですが、とてもそうは思えない細やかなお心遣いがあります」


確かに…


リュウジュ様は園遊会の時、私をエスコートさせるため、ルルド様に招待客として参加することをお命じになった


私のために


弱い立場の者に対する心遣いにがおのお二人には共通しているように思える


…噂


スオミの税率が上がるという噂がある


今でもぎりぎりの生活をしている者たちからさらに税を絞りとるようなことをユアン王子が考えるだろうか


そんなことをしたらさらにこのスオミは荒れる


最近ルルド様の体調がすぐれないのはそのことを気に病んでおられるからだろうか?




ルルドはもともとアレルギー体質であった


最近はそれがひどく出る


今までは普通に食べていた小麦のパンを食べて顔が腫れたり、夜中咳き込み朝までそれが続いたり


なのでリオンは家での主食を米やとうもろこしに変えた

そして咳が出る夜は一晩中ルルドの背中をさすって過ごすことがあった




「リオン、さすらなくていい」

「さすってもらっても咳は止まらない」


「ではもう一度カリンを蜂蜜に漬けたものをお湯で割ってまいりましょう」


リオンはせめてこの夜中の咳だけでも止めることが出来ないだろうかと、いろんな民間療法を試してみるのだった


恰幅のいいお姿とは裏腹にルルド様は繊細な方なのだ


ユアン王子の顔色一つで的確にその指示を見抜く側近としての気苦労は計り知れない


さらに長年たった一人の側近として王子に仕えてきたルルド様にとって、リアンのような熱い人間を預けられたのも負担になっているのだろうか


夜が白む間際、リオンはお湯を沸かそうと、一階の台所に向い、階段を降りている時ふと、思った


この家…


城に近い2階建ての家だが、古い塔が付いている

塔の天辺には昔鐘が付いていたと聞く


鐘があったころはこの辺りの者に時刻や火事を知らせる大切な塔であったかもしれないが今は塔の開放部から隣接する台所に隙間風を運ぶ厄介な代物に過ぎない


この家が掃除が行き届いているにもかかわらず埃臭いのはこの塔のせいではないだろうか


通気の良い新築の木の家に引っ越したほうが、ルルド様のお体には良いのかもしれないと、リオンは思った



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