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ユアン王子2

さて、父上の前でいかにあの姫を魅力的に見せるか…


それにしても、ナリ国の王はバカな作戦を考えたものだ

あの姫は美しかろうが、美しくなかろうがこの国に嫁ぐ運命だったのに


私がほころびを持って生まれて来た時点でナリの姫を娶ることは決まっていたのだから



父上は美しいものがお好きだ


王宮に勤める者も選りすぐりの美女たちだ


いずれはあの姫の才気に気づくだろうが、それは父上にとってそんなに意味のあるものではない


嘘の噂に騙されてナリの姫を迎えいれたと人々に思われては父上の沽券に関わる


あの姫に噂どうりの美しさを与えるためには…


さあ、どうする





リュウジュは疲れからか、この離宮に着いて熱を出し三日間ほど寝込んだ

その間フォンは一時も離れずリュウジュの足元に控えていた


熱が引いた日の朝、ユアンが見舞いに訪れた


それに対してリュウジュが感謝を述べたところユアンは冷ややかにリュウジュに言った


「リュウジュ、自分では気づいてはいないかも知れないが、お前の目には私には対する非難が表れている」


「不愉快だ」


「なるほど、お前がエン国で襲われた責任の一端は迎えに行かなかった私にあるだろう」


「だが、同じくらいの責任がお前の父王にもあるのではないか」


「噂とはかけ離れた娘をガイナに嫁がせる前に、エン国で死んでもらえば、嘘を流したこともばれず、娘はガイナに嫁ぐ途中で殺されたのだという貸しだけが残る」


リュウジュは体が震えてきた

蓮畑で襲われてから何度も何度も振り払ってきた考えである


「私が何を言いたいかわかるか?」


「お前はこの縁談が整った時点で役目を終えたのだ」


「他国にガイナとナリの結びつきを知らしめることが出来た」


「そういう意味ではお前はナリにとっても私にとっても生きている必要はない」


「だからエン国で死んでくれてもよかったのだ」


「私はやがてこのガイナという大国を動かし維持していかなければならない」


「私が判断を間違えば大勢の人間が不幸になる」


「お前は今、そのガイナの王子を煩わせている」


「中途半端に賢い女は嫌いだ」

「私は馬鹿で素直な女が好みなのだ」


「お前の女としての愛はいらない」


「恨みを捨て、家臣として、下僕として仕えてゆくと私に忠誠を誓え」


「それ以外お前がこの国で生きて行く道はない」




投げつけられた王子の言葉にリュウジュはひどく驚いた


ほとんど幽閉に近い状態で暮らしていたが、それなりに人々に尊重されてきた自分である


美しくないことを非難されるであろうことは覚悟してきた


けれどユアン王子はそのことには触れずただ私の心の不敬を非難し、私が王子の好みとは外れていることを言い放った



いきなりひどく責められ拒否され捨てられたことに動揺したリュウジュだった


けれど…


なにか正面切って思ったことを隠さず言ってもらえるのはもしかしてありがたいことなのではないかと感じる


あろうことか自分に冷酷なことを言い放ったユアン王子に一瞬でひどく惹かれた


「わかりましたユアン様」


「私は今後あなたの家臣として、下僕として仕えて行くことをお誓い申し上げます」


「私心なく私に仕えてくれるフォンを手本に」


「そして、私は今あなた様を好きになりました」


「この心はどうしたらいいのでしょう」


その問いにユアンはただ一言


「捨てろ」


と言った




脇に控えて話を聞いていたフォンは、姫が馬鹿で素直な性格だったらここにはたどり着けていなかっただろうと思った







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