園遊会2
東の小さな公園は結婚式に参加する人で溢れていた
少し離れた盛土した場所からユアンたちは見ていたが、人垣でカレンとセンリの姿は見えない
「また後で二人で挨拶に来るだろう」
「その時に花嫁姿を見ればいい」
「はい」
振り返りながらリュウジュは思った
こんなに大勢の人に祝福されてカレンは幸せだわ
「それにしても…」
「スバルは立派ですね」
「よく身分違いの結婚を許しました」
そういう言ってからリュウジュは、ああ、そうか、スバル自身が身分のない身をユアン様に引き立てられた者だった
だから二人の結婚を許したのだろうと思った
「カレンだからだ」
「カレンには浮ついたところがない」
「たとえ財や身分のない夫に嫁いでも知恵とその働きで幸せになれると判断したのだろう」
「また内助の功で夫を出世させる可能性もある」
「これが呑気者のフラウだったらそうはいかない」
「反対していたであろう」
東の公園を去るとき二人はそんな会話をした
確かに…
フォンは二人の後ろでうんうんとうなずいた
二人は一通り庭を周り、少し木の密度の多い人気のない小道に来た時、木陰で座り込みお菓子を食べているマリナとフラウを見かけた
「お前たちはこんなところで何をしている」
いきなりユアンに声をかけられてびっくりした二人は座ったままユアンとリュウジュを見上げた
カレンの結婚で自分も良家の子女と結婚するチャンスがあるのではと思った若い男たちに結婚式のあと囲まれ、恐ろしくなった二人は東の公園から逃げて来ていたのだ
そして途中の東屋で何種類かのお菓子を取ってこの木陰で食べていた
なにか言い訳をしなければと二人は思ったが、口にお菓子をほうばったまま王子に話しかけるのは失礼だと思い、真っ赤な顔をして口の中のものを咀嚼し飲み込むのに集中した
「食い気が勝るのか」
「他の地域の豪族の子息も集まってきているというのに…」
そう睨みつけた後、一瞬目を細めたユアンをリュウジュは見逃さなかった
見たことのないユアンの表情
この時、リュウジュには感じるものがあった
思わず、ユアンの腕に絡めた手に力が入る
自分の左手に絡めたリュウジュの手に力が入ったとき、ユアンは悪寒がした
今まで絡んでいた人の手とは別の、なにかひどく生臭い禍々しい生物が自分の腕にに絡みついているような感覚を覚え、思わずリュウジュの手を振り払ってしまった
リュウジュもハッとしたし、マリナとフラウも驚いて二人を見た
ユアンには意地の悪さや人を虐げて喜ぶようなところはない
ただその場、その場で自分が思ったことを言ったり、合理的に必要だと思った言動をとる
その結果人を傷つけたり虐げたりすることになったことは多々ある
だが目的として人を虐げる意思をもったことはないユアンだった
が、この時は違った
リュウジュにひどい嫌悪を覚え、踏み潰さなければならないおぞましい生き物に思えた
驚いていて、目を見開いていたリュウジュにユアンは向かい合いその腰の後ろに手を回しリュウジュの体を自分の体に引きつけた




