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別室にて

マトハと二人で話がしたいと言うユアンの言葉にリュウジュたち一同は別室に移った


別室に入った途端カヘイが鼻血を出した

ユアンの前で失礼にならないように気力で止めていたらしい


エトロやクシナはあわてて介抱した


その様子を見てリュウジュは無理もないと思う

リュウジュでさえ初めての経験にめまいがしそうだったのだから


鼻血が止まったカヘイは今度はリュウジュに無礼を詫びた

リュウジュはカヘイに気にせず楽に過ごすようにと伝えた


カヘイは実に人好きのする顔をしている

黒黒とした瞳に愛嬌がある

性格にもかわいいところがあるのだろう


少し気難しいところのあるクシナもこの青年を気に入ったようだ


二人の侍女は若いカヘイを囲んでスオミの水の話などをしていた


スオミは水の恵み豊かな土地である

大きな川はないが小さい川が無数に流れている

みな尻無川である


小さな湧き水が集まりやがて川になりその末は水量が減り自然に地中に消えていく


北方にある山に積もった雪解けの水が地下に潜りスオミの地に湧いて出るのだろう


その川を龍に見立てて龍神を信仰するものと、水の湧き出す大地に感謝を捧げるものとが自然発生的に現れ現在に至る



リュウジュもナリにいた頃はお茶など飲んだことがなかったことを皆に語った


ナリは土地が痩せていて国民に行き渡る食物を作るのがやっとで、お茶のような贅沢品を栽培する余力がない


さらにナリの水で入れたお茶はとても不味いのでお茶を飲む習慣がないのだと


ガイナに来てお茶の美味しさを初めて知ったこと

そしてユアンの入れた今日のお茶はまた特別美味しく感銘を受けたとを



「本当にユアン様は何をしてもお上手なのです」


誇らしげに言うクシナを見て、リュウジュは少しほほえましく思った





フォンは話の仲間に加わらず窓からこの宿屋の周りを警護する衛兵たちの様子を眺めながらユアンのことを考えていた


ユアン様は身分で人を分け隔てする方ではない

だからこそ身近に仕える者達に愛されているのだ


しかし今日の行動には本当に驚いた


マトハ様だけではなく私や小間使いにまで…


リュウジュさまの紅茶にだけ砂糖を入れていた


体型が崩れることを嫌ってリュウジュさまは甘味を控えていらっしゃる


多分ユアン様はたまにはリュウジュさまに甘味を味あわせようと思ったのだ


風の舞を美しく踊るための努力を怠らないリュウジュ様に


ユアン様には二面性がある

人を傷つけることをなんとも思わない冷淡な面と、人を気づかう優しい面と


ユアンさまは最初に感じたほど冷酷な方ではない

ただ思ったことをはっきりおっしゃるたちなのだ


あの時、何もリュウジュさまを池に落とさなくても服を脱がせて骨格を調べることもできたのに


それをしなかったのはリュウジュさまに対するユアン様なりの乱暴な配慮だ


人間性のない非道な夫が妻を拒否しているわけではない


ユアン様に他の女の影もない


ただリュウジュさまが本当にお好みではないのだ


かえってたちが悪い…




ふと、窓辺にたたずむフォンに目を向けたエトロはどうしてフォンが憂鬱そうにしているのかを不思議に思った


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