「宇宙船と密航者の少女」僕の結末
以下、提示板投稿時の前書きを、そのまま記載します。
おはようございます、和算蛇人です。
締め切られちゃった後っぽいですが、思いついたので書いてみます。
命名とかはテキトーなのは、仕様です(殴
そして下手っぴが即興で書いた(=校正無し)ので、低クオリティなのも仕様でry(殺
あ、少女一人が増えたくらいで、燃料が足りなくなるのはおかしいと思うので、酸素量に変えました、スミマセン。
(微調整用の燃料位あるでしょうし、宇宙船全体からすれば、人一人の体重なんて誤差レベルだと思うので。
それなら、出来るだけ届け先の宇宙港に近付いて、後は届け先から迎えの船OR燃料補給船を出して貰えば、それで済むような気がするのです。
酸素なら、作中に書いたように、簡単に危機的状況に陥ってしまう事も有りうるかなっと)
「……参ったな」
カカオマス星を出港して一週間ほど経った頃。
残存酸素量がイエローゾーンに突入したという、アラームが鳴り、僕は調査を開始した。
それから三日が経ち、出港して十日程経った今日、僕は原因を特定するに至ったのだが――。
「この世には、馬鹿しか居ないのかね。
急いでたとはいえ確認を怠った僕も、気付いてた筈なのに出港させた管制も、そしてこの女の子も。
全く、馬鹿ばかりで嫌になるな」
倉庫の隅で丸くなり、幸せそうな寝顔を見せる少女を前に、僕は自嘲するしかなかった。
「ごめんなさい、本ッ当にごめんなさい!!」
僕の気配に気付いたらしく、目を覚ました少女は、僕の顔を見るなり、土下座までして全力で謝りはじめた。
日本式茶道ですら椅子に座って行うのが主流の今、土下座などと言う化石級謝罪法を目の当たりにするとは、夢にも思わなかった。
密航なんてイカれた真似をする位だから、むしろ開き直るかと予想していたのだが。
「……良いよ、もう。
ちゃんと確認しなかった、僕にも責任は有るしな。
別に宇宙に放り出したり、襲ったりなんかしないから、そういった面では安心して良い」
深いため息と共にそう告げると、途端に瞳を輝かせて立ち上がると、僕の両手を握って一気にまくし立てはじめた。
まさか、土下座をして謝ったのではなくて、土下座をして"みせた"のだろうか?
「ホ、ホントですか!?
ありがとうございますっ!!
実は私、ココア星に兄がいるんです。
ほら、ココア星って今、新種の伝染病……ムシバキン症候群でしたっけ?が流行ってるじゃないですか。
兄は身体が弱いのですが、それに加えて一ヶ月程メールの返信も無いので、倒れてないか心配なので、会いに行こうと思いまして。
それでその、ココア星行きの船を探して、こっそり乗り込んじゃったというか、何というか。
乗せてもらったお礼に、雑用とかは何でも言って下さいっ。
こう見えて私、結構家事得意なんですよ♪
もちろん料理も得意で「あーもう、とりあえず落ち着け!!」
話が終わりそうに無いので、一喝して黙らせたのだが、よくもまぁ、息継ぎなしでああも喋り続けられるものだ。
絶対、調子に乗って喋りまくっては、皆に嫌われて、友達が一人も出来ないタイプだな。
「ご、ごめんなさい。
私、いつもこうなんです。
調子に乗って喋りまくっては、皆に嫌われて、友達が一人も出来ないタイプで……」
「今、僕が君に対して抱いた予想と、一字一句違わない自己分析だな。
分かってるなら、直せば良いだろうに。
特に今の状況、やっぱウザイから宇宙に放り出そうとか、僕が考えたらどうするんだ?
宇宙法に、『密航者を発見した場合、船長の裁量で宇宙に追放しても、何の罪にも問わない』って趣旨の規定が有るのは知ってるだろ?」
若干涙目になってる少女に対して言うのもなんだが、これだけは言っておかないとな。
「たった今を以って、船長としての権限により、密航者たる君を、僕の管理下に置く。
僕に従わなければ、即時宇宙に追放するから、そのつもりで。
尚、宇宙法の規定により、僕が追放以外の方法で君に危害を加える事は、禁止されている。
僕の言動を危害と感じたなら、その場で申し立てるように」
|(しばらく風呂に入ってなかったせいなのか、少し匂ったので)少女に風呂に入るように指示すると、僕は船長室で、モニターとのにらめっこを開始した。
少女が一人増えた位で、危機に陥るような事は、通常考えられない。
何しろ、この船には何十億もの人を救う為の、大事なワクチンが積まれているのだ。
酸素も燃料も、結構余分に用意されていた筈。
なのに残存酸素量がイエローゾーンに突入し、残存燃料量はグリーンゾーンのままという事は、考えられるのは、一つだけ。
少女が侵入した経路から、酸素が漏れ続けているということ。
恐らく、パッキンを微かに傷付けてしまったか、髪の毛を挟んでしまったか、そんな所だろう。
AI管理ですらない、初期型の輸送船だったのが、痛かった。
AIが管理するようになり、宇宙船は素人でも簡単に扱える、便利な乗り物となった。
だがそれまでは、専門家が細心の注意を払って扱う、デリケートな代物だったのだ。
一人乗り用の宇宙船の場合は、航行用AIに操縦させたりもしていたが、予め指示した通りに操縦するだけで、あくまでも補助に過ぎなかった。
操縦士が就寝したりする間の、繋ぎとして用意されただけで、燃料類の管理は、操縦士の職務だった。
「そういえば、あそこの管制は皆、若かったな……AI管理しか知らなかったのか。
AI管理なら、気密に問題が有れば、船長に直ぐに伝えられる。
重量の変化が有っても、私物を持ち込んだ程度に思われていたのか。
いや、案外彼女の手引きをしたのは、管制の誰かかも知れないな。
酸素流出さえ無ければ、確かに彼女が居ても、何の問題も無かった。
今回の場合、伝染病が蔓延する星への航行だから、自棄食いできるようにとかいう訳の分からない理由で、食料も多めに積んであるしな」
酸素や燃料、食料までもが多めに積んであったのは、彼女の密航を手引きした管制官が、彼女の為に手配したからなのかも知れない。
確かに、それらの心配さえ無ければ、何の問題も無かった。
僕もこの年――89歳になってまで、少女に手を出すような真似はしないし、快く連れて行っただろう。
老い先短い今、ココア星に着くまでとはいえ、毎日が楽しくなると、喜びさえしたに違いない。
だが、既に酸素が足りなくなっている今、仮に流出を止めたとしても、ココア星に着く前に、酸欠で二人とも死んでしまう。
一人なら余裕だが、二人では足りない、それ位の酸素しか残ってはいない。
流出を止めるのは当然だが、こうなったら採るべき道は、一つしかなかった。
「冷たい方程式、か。
訓練学校時代にいくつか教わったが、まさか実行する時が来るとはな」
そう、いくつか。
冷たい方程式には、いくつか種類がある。
一つは、『密航者が居た場合、問答無用で追放する』という、宇宙法でも明確に認められている方程式。
一つは、カルアネデスの板とも呼ばれる、『二人とも死ぬよりは、一人でも助かった方が絶対良い』という、方程式。
そして、今回僕が採る方程式は……。
「飯食ったら、漏れてるとこを特定しないとな」
とりあえず航行プログラムを更新して、僕はリビングに戻る事にした。
「お風呂、ありがとうございました」
シャンプーの香りを纏って微笑む少女だが、その微笑み方はぎこちなく、そして顔色も悪い。
「いや、僕が入れと言ったんだしな。
それより、顔色が悪くなってるが、どうした?
もしかして、シャンプーに対してアレルギー反応が出たとかか?
それか、風呂に入れ=臭いって事で、傷付いたのか?
もしそうなら、僕も土下座して謝るb「そんなんじゃないです!!」
冗談めかして元気付けようとしてみたが、どうやら何かを間違えていたらしい。
気付けば少女は、今にも泣き出しそうな顔で、僕を見つめていた。
「どうして、そんな優しげな言葉を掛けるんですか。
どうせ、私は追放されちゃうんでしょ?!
なのに、どうしてそんな事を……哀れんででもいるつもりなんですか?!」
ああ、なるほど。
どうやらこの少女は、さっき僕が言った『逆らえば追放する』というような言葉に対して、絶望してしまったらしい。
最終的には拒否せざるを得ない事を命令されて、そして追放されるのだと。
やはり、言い方がキツ過ぎたようだ。
「はは、さっきの言葉か?
それなら、安心していい。
なんせこの年だから、若いののテンションには付いていけなくてな。
少し静かにして欲しかっただけで、従わなければ即時追放、なんて本当はする気ないさ」
そういって、微笑んではみたけれど。
やはり少女の顔色は悪く、そして暗い顔をしたままだった。
やれやれ、このまま最期まで、こんな顔をしたままなのかな、この少女は。
「とりあえず、飯でも食おうか。
ビーフカレーで良いかな?」
微かに頷きはしてくれたけど、それっきり、少女は黙りきったままだった。
「ごちそうさまでした」
「……ごちそうさま」
ただ黙々と食事を終えたが、ちゃんと味わって食べたのだろうか。
それ位彼女の食べる速度は早くて、このビーフカレーが大好物の僕としては、少し悲しくなっていた。
「ちょっと僕は仕事してくるから、君はここでゲームでもしてると良い。
まぁ、将棋とか麻雀とかばかりで、今風なソフトは持ってないけどな」
そう言って少女にPGP(パーソナル・ゲーム・プレーヤー)を渡して、彼女を発見した倉庫の方へと背を向けた途端。
「……私が乗り込んだのは、第四非常口です。船の整備中に隙をみて入って、それから倉庫に行きました。
だから、何か有るとすれば、第四非常口の外扉だと思います」
そんな事を突然言われたものだから、僕は思わず振り返り、彼女の顔を凝視してしまった。
「気付いて、いたのか?」
「……盗み聞きするつもりは、無かったんです。
ただ、リビングに居なかったから、船長室かなと思って行ったら、『冷たい方程式』とか、『漏れてるとこを特定』とか、呟いてるのが聞こえちゃって」
あぁ、それで暗い顔をしていたのか。
「つまり君は、君が入り込んできた時に扉をちゃんと閉めれていなくて、酸素が漏れてしまったと思っているんだね?
それで、酸素の流出を止めた後で、自分は宇宙に追放されてしまうんだと」
「それ以外、考えようが無いじゃないですかッ!!
冷たい方程式って、密航者を宇宙に追放するって話でしょ!?
だったら、どうしたって私は、ここで「大丈夫、君を追放したりなんか、絶対しないさ」――え?」
僕は微笑みながら、彼女の頭を軽く撫でてやった。
「大丈夫、君は絶対に、こんなところで死んだりなんかしないさ」
「え、でも、冷たい方程式って」
どこかくすぐったそうな彼女に向けて、僕は『冷たい方程式の解』を告げた。
「ここで死ぬのは、僕だよ」
驚き、目を見開いた彼女に、その根拠を話していく。
「冷たい方程式には、いくつか種類が有るんだ。
一つは、君の考えていた、『密航者は問答無用で追放する』という船長の方程式。
一つは、『二人とも死ぬよりは、一人でも生き残った方が絶対良い』という、カルネアデスの板とも呼ばれる、方程式。
でも僕の採用した方程式は、『女子供の救命が優先』という、船乗りの方程式。
ほら、船が沈みそうな時には、女子供を優先して助けるだろ?
女は、いずれ子供を生む可能性があるから、子供には未来があるから、そんな理由でさ。
つまり、この方程式によると、『女の子』が、最も大事な命という事になる。
そんな女の子=君と、老い先短いジジイ=僕の二人の内、どちらか一人しか助からないというのが、今の状況だ。
船長の方程式だと、死ぬべきは君だけれど、僕は船乗りの方程式を採用した。
つまりは、死ぬべきは僕という事になる。
幸い、今の航路は何度か使っているし、ココア星にもさっき連絡して、航路に異常などがない事を確認した。
以前の航行データを元に、ココア星まで自動で操縦するよう、航行プログラムを更新したから、後は酸素の流出さえ止めれば、僕は居なくても大丈夫。
ココア星の管制宙域に入ったら、後は向こうの人が何とかしてくれる。
だから君は、ココア星に着くまで、くつろいでいると良い。
まぁ、外に出ようとか、船長室に入るとか、そんな真似だけはしちゃいけないけどな」
少女は放心しているようだったので、少々強めにデコピンすると、彼女は慌てた様子で喋りだした。
「で、でもそれじゃ私、あまりにも「最初にも言ったろ?『ちゃんと確認しなかった、僕にも責任はある』ってさ」
少女の髪をわしゃわしゃと撫で回しながら、僕は続けた。
「もし、僕に何か託して欲しいのなら、一つだけ言おう。
必ず、幸せになれ。
上辺だけじゃなく、泣いてしまいそうな程の、本当の幸せを掴め。
もしも天国とやらが有るのなら、そこから見守っててやるからさ。
勿論、トイレとかお風呂とかそういう時も――ってこれは余計だったかな?」
あれから、6年と少しの歳月が流れた。
当時17歳だった私も、先月24歳の誕生日を迎えた。
おじいさんは最期まで名前を教えてくれなかったし、私の名前を聞こうともしなかった。
だけど、ココア星の管制官から知らされた名前――天川海翔。
おじいさんのクセに、子供っぽい部分も有った彼の事を、私は『海翔さん』と呼んでいる。
あれから色々有ったけれど、海翔さんが『こんな所で諦めるな、必ず幸せを掴め!!』って励ましてくれてる気がしたから、くじけずに頑張れてるんだと思う。
そんな私が選んだ職業は、独立航宙士、つまりは海翔さんと同じ仕事。
AI管理じゃない、初期型の大型船も操縦できる『特級独立航宙士』だった海翔さんとは違い、AI管理かつ、中型船以下しか操縦出来ない『三等独立航宙士』だけれど。
いつか昇格して、『特級』になるのが、私の夢。
十日程前に、独立航宙士としての、処女航行に出たのだけれど、どうも酸素や食料の減り方が、おかしい。
三日前に気付いて、船内を捜索した結果、倉庫の一つで"原因"を見つけたのだけど。
「……参ったわね」
倉庫の隅で丸くなり、幸せそうな寝顔を見せる少女を前に、私はため息をつくしか無かった。
幸い、『初航行ですから、酸素や食料は多めに手配しときますね』って、ニヤニヤしながらだけど管制が手配してくれてたし、今回は酸素の流出なども無い。
大丈夫なのは大丈夫なのだけれど、一番の問題は一つ。
この娘、持って帰って食べちゃいたい位に、可愛いんですけど。
私、我慢しきれるかな?
【終わり】
百合好きの僕が書くと、こんな感じになりましたφ(..)
主人公たるジジイ=天川海翔しか、名前が出てきていないというw
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
※ネタバレですし、何よりも匂わせる程度しかないので、警告タグは付けておりません。