あなたの眼差し
小説家になろうの初投稿作品です。
読んでいただけると幸いです。
痛い。
赤くなった手首を見つめる。指の形までくっきりと残った痣が痛々しい。
いつも冷め切った態度の彼が感情に任せて私の手を引いたのは想定外だった。
向かいに座る彼の表情を覗き見ようとするも、伸びすぎた前髪に隠れたその目から感情を読み取る事は出来ない。
「はぁ……」
私はわざと不機嫌そうにため息を吐くと、手首を撫でる。何も言わない彼に、この行動に対する釈明くらいはしていただきたいものだ。
愛ゆえとは思えない。私が決死の覚悟で告白した時だって、
『うん、わかった』
なんて是とも否とも取れる答えを返したこの男だ。それって付き合ってくれるってことだよね。なんて確認を口にしつつも喜びに震えが止まらなかった自分が情けない。
今回私が別れてって言った時だって、てっきりあの時と同じように『うん、わかった』で終わると思っていたのに、
「……なんで?」
と露骨に不満げな声が返って来た。彼のその声に一瞬、愛されてたのかなと勘違いしかけそうだった。でもそれはきっといつもの言葉足らずで、僕が君を振る予定だったのになんで?っていう意味なんだろうとすぐに悟って、
「どうしてもだよ」
私は逃げるように席を立った。いや、正確には立とうとした瞬間にぐいと強い力で引き戻されて現在に至るのだが。私は静かに彼の顔を見据えると、
「愛もないのに付き合ってくれなくていいよ」
精一杯投げやりに答える。声が震えないように、全力の強がりを演じながら、
「私はずっとあなたを見つめてたけど、あなたは私の事なんて見てはくれなかった」
責めるような言葉に嫌悪感を抱きながらも、
「私に興味なんて無いんでしょ。どうせ私の好きな食べ物すら知らないんだよね。振られたと思わなくていいよ。あなたのその態度に、私のことを映す事のないその目に、私が負けたんだよ」
と言葉を続け、ほんの少しだけ黙ってみる。彼は口を開きかけたが、その口からは何の言葉も発せられない。
引き止めて欲しいっていう浅ましい気持ちがばれちゃったのかな。ちょっとだけさみしい気持ちになりながら、未練を残さないように立ち上がる。
「じゃあね。もう会うことも無いだろうけど、元気でね」
その言葉にすら返事は無く、彼は私に背を向けて机の方へと向かって行く。別れた瞬間から、元カノに興味はありませんか。自嘲気味に笑みを浮かべて玄関に向かう。
『ジャキっ……』
後ろから何かを切る音が聞こえ振り返る。すると彼の顔に長く垂れていた前髪がばっさり無くなっていた。普通の鋏で切られた前髪は所々長いまま残っていて、前髪は右に行くにつれ酷く斜め上に曲がっていて、
「ぶっ……」
私は一瞬固まって、それから思わず噴き出していた。その一瞬で凍りついていた空気が和らぐ。ゆるゆるとほぐれる緊張。そんな中彼は酷くムッとした表情で、
「パンケーキだろ」
と告げた。イライラ全開の言葉に何も言えずにいると、
「お前の好きな食べ物。ちゃんと知ってるし。ちゃんとお前のこと見てるし」
彼は意外なまでに子供っぽい言葉を次いだ。私がキョトンとしてると、
「お前クールな男が好きだって前に言ってたから大人しくしてたんだよ」
怒気を孕んだ声で彼が告げる。残った前髪を手持ち無沙汰に引っ張りながら、
「前髪伸ばしはじめたのだって付き合いはじめた頃にお前が、『あんまり見ないで、恥ずかしいから』って言ってきたから、前髪で目隠せば堂々と見つめられると思ったのに……それで別れるとか納得いかねえんだけど」
と私を睨む。彼は小さくフゥとため息を吐くと、
「もうクールキャラも前髪伸ばすのもおしまい。だから別れるなんて言うなよ」
とぶっきらぼうに告げる。私は呆然としつつもただ、
「うん、わかった」
とだけ答えた。彼はその答えにホッとした表情を浮かべると、
「もう切っちまったからな。俺の視線から逃れることとかできねぇから、覚悟しとけよ」
とにやりと笑って見せた。ザンバラな前髪から覗く彼の優しい眼差しに幸せを感じながら、私はむずがゆくなった手首をそっと撫でた。
ここまでお読み頂きありがとうございます!全体的にしょっぱかったかもしれません。思いついたことを文字に起こす難しさを実感しております。
地の文が多い。キャラクターが薄い。時間軸がわかりにくい。自分で読んでいても気になる点がありすぎますが、現時点ではこの話をこれ以上膨らませられませんでしたf^_^;)
感想やアドバイスなど頂けると嬉しいです!次作はひとまず、
『キャラクターの魅力』
アップを目指して頑張ります!!
最後までお読み頂きありがとうございました!!