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 第四十二話「くずぱーとつぅ」

一応飛ばしても話的にはジョブ

 トーネルを出て行った夜、特に問題もなく、近くにあった町に着くことが出来た。

 正直言って、今日はいろんなことが起きすぎた気がする。朝にイェーガーと戦い、いつの間にか国を出てきた。


「ささっ、宿を取るよっ!」


 それでも、元気な奴はいる。ラミィはガッツポーズを決めて、一番乗りで宿屋へと入っていった。

 フランはラミィに手を引かれて、一緒に宿屋へ消えていく。結構迷惑そうな顔をしていて、俺に助けを求めている。


「友となれますかね」

「知らん」


 ロボと俺はそれを後ろから眺めて、なんとなしに会話をする。


 ラミィはフランの人見知りを治すのには絶好の人間だろう。あれほど親しみやすく、積極性のあるオラオラ系女子はそうそういまい。

 ならば少しくらいはラミィに任せよう、フランとも仲良くなりたいのだろうし。


 俺たちも遅れて宿屋に入る。一階は酒場か何かになっていて、テーブル席と人の多いこと。

 ラミィはそんな中を隙間風のようにすいすいと進んでいく。フランもその手に引かれているため、問題なく奥へともぐっていく。


「あ、すみません」

「ちっ」


 俺は知らないおっさんと体がぶつかり、舌打ちされる。謝ったじゃないか。

 なんとか宿屋のカウンターにまでやってきて、店主のおっさんに声を掛ける。


「おっさん、宿を頼みたい」

「あ、部屋は?」

「二つ」

「え」


 フランが、怪訝な声をあげる。まあそうだろう。


「今日は二部屋取るんだ」

「どうして?」

「盾のコントロールに必要なんだよ」


 詳しくはいえない。ロボ、頼む。という目線を送る。


「……もしや、ラミィ殿で催す御つもりか」

「……?」


 ああ、ちょっとロボが驚愕している。いや、言いたいことはわかるけど。

 ラミィは会話の流れがわからずに、頭の上に?を付けている。


「俺は元々、この目的があって奴隷を買ったんだよ、わかるか、こいつがどうだからやらないじゃ、まさに姫扱いじゃないか。俺はな、なったからにはそのまま扱うんだ」

「……しかし」

「ラミィの覚悟だろ。それを茶化すのか?」

「……わかりました」


 渋々ながら、了承してくれる。

 よし、これでフランも説得可能だ。



 宿泊施設がある二階の、廊下を歩きながら、鍵をロボと分ける。

 俺はその鍵に書かれた部屋の扉を見つけ、ドアを開ける。

 とそこで、ロボについていくラミィを引き止めた。


「おい、お前はこっち」

「あれ? 私こっち?」


 たぶんラミィとしては、男女別々の部屋にしたのだと思ったのだろう。違う、そうじゃない。


「命令だ」

「う、うん」


 察しが悪いというよりも、察したくないといった風だ。

 フランがかな~り怪しそうな目でこちらを見ていたが、一応奴隷を使うという用途は理解しているようだし、そこまで反対しない。


「なんで、わたしと一緒じゃ駄目なの?」

「情事に口を挟むのはご法度なのです」


 ロボがいて助かった。強いくせに戦闘以外のほうが役に立つ犬だよな。

 俺はそのまま無言で、ラミィと一緒に部屋に入る。


「コーナシ」


 一応唱えておく。


「あ、アオくん。もしかして私にお話とか?」

「違う。ラミィは今日、こっちの部屋で寝るんだよ」


 俺がそう口にすると、ラミィは肩に力を入れて、真顔になる。

 ラミィはもう、大体わかっているだろう。気が利く子ってのは勘がいい。


「えっと、今日は疲れたかな~ははは、肩をおもみしますね」

「いい」


 この女、覚悟を決めたくせに何を躊躇っているのか。

 もしかしてあれか、俺が聖人君子だとでも思ってたのか。宣言したところでやらないと。


「シャワーとかあるんだね、ちょっと使って見てもいいかな」


 なら、舐められたものだ。

 容赦しない。


「おまえもしかして、まだ自分が犯されないとでも思ってるんじゃないかね?」

「え」


 理性とは、脱ぎ捨てるもの。



「えがった……」


 翌朝のこと。

 日が昇り、ロボたちが部屋から出てくる。俺も丁度朝ごはんのある一階に降りて、ちょっとくつろいでいる。

 眠そうなフランを引っ張って、ロボはこちらに気付く。


「アオ殿、おはようございます」

「おはよう、いい朝だ」


 ちょっとだけ余裕のある大人な朝だ。俺は優雅にコーヒーのようなものをすする。

 ロボは隣に座って、フランはうとうと船をこぐ。


「アオ殿、ラミィ殿はいかがいたしました」

「もうちょっとで来るだろ」


 そういっていると、宿屋の二階からラミィが降りてきた。


「おはよっ……」

「ラミィ殿……っ!」


 ロボが、ちょっと驚いたような声で椅子から立ち上がり、ラミィへと駆け寄る。

 ラミィは特に驚きもせず、やってきたロボに声を掛ける。


「今日はちょっと、寝不足かなっ……」

「どうしたのですかそのお顔!」

「大丈夫大丈夫」


 ロボはラミィの両肩を揺する。すると、力の抜けたラミィがゆらゆらと前後する。

 そして矛先は、すぐ俺のもとに向かった。


「アオ殿、あれはどういうことですか」

「どうって」

「泣きはらした痕があります! 一体何をしたのですか!」


 朝からうるさい。

 周りにはそんなに人がいないので助かる。たぶん、トーネルに行く前に宿泊する人のための宿屋なのだろう。金のない人は、もうちょっと頑張ってトーネルにまで行っちゃいそう。


「俺は元々、性欲のために奴隷を買ったんだぞ。その目的に使って何が悪い」

「で、ですが、あれでは」

「酷いこととかはしてないぞ、解消しただけだ」


 何も道理を外していないのに、どうしてこうも怒られるのか。


「ねーねー」


 ふと、ロボに対して知らない幼女が手を引いている。どこの子だ、どうしたのだろう。

 ロボはその顔でも精一杯穏やかな表情で、幼女に対応する。


「如何様かな?」

「中は駄目って、どうして駄目なの?」

「……ふむ、それはどの道理で聞いてきたのかね」

「隣の、この人の部屋からずっとそういう叫びがね、きこえたの」


 なんかロボさんがすっごい目でこっちを睨んできてる。


「ねぇ、なんで中は駄目なの?」

「アオ殿……アオドノォオオオオオオ!」

「朝から騒がしいだろ、静かにしろって」

「し、しかし!」

「大丈夫だ、避妊魔法はちゃんと使ったよ」


 ラミィには、事前に魔法を使ったとは言っていないけど。一度も言わなかったけど。

 ほら、幼女が驚いて逃げちゃったじゃないか。


「……アオ?」


 フランも目が覚めたのか、眠気眼で周りを見渡す。

 そして最後に行き着いたのは、ラミィの顔。


「……大丈夫?」

「うんっ、へいき!」


 フランにまで心配されるとは、本当に参っちまったのか。

 やりすぎたというべきかもしれない。そんなこといっても、加減も何も知らないからな。



 とりあえず、今日はこの町にとどまることにした。

 トーネルからのお迎えが来ないとは限らないが、あの状態のラミィで旅をさせるのはあまりよくないだろう。

 命令で無理矢理休ませてから、俺たちはモンスターを狩るためにちょっと歩き回ったくらいだ。一応看護はロボに任せた。


 一応休んだかいあって、ある程度は元気になったようだが。


「アオくん、もしかして!」

「ああ、今日もだ」


 夜、また俺はラミィとの相部屋にした。

 ラミィが眠りから覚めたとき、フランはもう向こうの部屋に帰って行った。目を覚ませば俺しかいない事実が、ショックだったようだ。


 こういう反応されるのは正直俺もショックである。仕方ないだろうけど。


「諦めろ、これからだって何回あるかわからないんだぞ」

「えっと、今日くらいはいいんじゃないかな?」


 ラミィは飛び起きて、壁に張り付く。腰を低く構えて、俺から逃げようとしている。バスケやってるんじゃないんだぞ。

 顔に包帯まで巻きやがった。なんという最大限の抵抗。


「おめぇ……りーりー」

「アオくん、あの、ごめん! 私の都合ばっかりなんだけど、今日くら……げぼぉおおお!」

「うぉあ!」


 ラミィが必死になって弁解しようとしたその矢先、いきなり吐いた。

 たぶん、隷の魔法が効いたのだろう。主にとって都合の悪いことをしようとしたから、拒否反応が起きたのだ。

 でも、エロの前に吐くってどうなんだよ、サウスパークじゃねぇんだぞ。



「新鮮だな……」


 また翌朝。

 朝のコーヒーみたいなのをすすりながら、正面の席で机に突っ伏しているラミィを眺める。

 ロボがフランをつれて一階にまで降りてくる。


「あ、アオ殿……またですか」


 ロボの失望したような声が、なんとも耳に痛い。なんでだよ、合法だぞ合法。


「せめて、ご令嬢には紳士たる礼儀を持ったほうがよろしいのではないでしょうか」


 ロボは必死に、できるだけオブラートに俺にアドバイスする。


「ロボちゃん……なんでもないの」

「しかし」

「ラミィは昨日倒れたんだよ。主に一定以上逆らうと、苦しみもがいて倒れるんだと」

「なっ、そのようなことが」


 奴隷契約に関する証書によると、ある一定以上、主に逆らう行為をすると、生理的嫌悪が起こるが、更にその状態を維持し続けると、気絶するほどの苦痛が伴うという。

 まあ、それだけならまだラミィはここまでならないのだが。


「…………」

「おい、大丈夫か」

「…………あい」


 ラミィからの返事が儚い。まあ無理もないだろう。

 昨日はずっと、うなされていたのだ。この現象は主に逆らって気絶する行為というよりも、気絶した後に精神的に追い詰める悪夢こそが本懐らしい。

 主に逆らうという行為自体を、精神的にも駄目なものだと刷り込むのだそうだ。

 ちなみに、資料によるとその悪夢を見た後はできるだけ優しく接してあげると吉らしい。あえて逆らわせるのもありと、犬の育て方みたいなテキストだなこれ。


「……ラミィ?」

「ありがとっ……フランちゃん。でも、私が悪いの」


 フランまでもが同情の視線で、ラミィを見やっている。

 ラミィの目は、どこか虚ろだ。悪夢による洗脳が痛々しい。


「ごめんねアオくん、私が逆らったばっかりに」

「アオ殿、では昨日はそれだけで何もしなかったのですね、申し訳ございません」

「ああ、わかればいい」

「導きの精霊様……試練は辛すぎます……」


 言えない。昏睡ダッチワイフにしたなんてもう言えない。

 でも俺ってそんなに外道か? 悪趣味なことは何もしてないし、元々奴隷になる以上は覚悟しろって。


「きゅ……きゅ」


 ラミィから、何か変なうめき声が出ている。

 やっぱり、まずいか。


 このままでは旅以上に、ラミィの精神に色々な悪影響を及ぼす。俺の欲望は大切だが、他人を壊す事は目的じゃない。

 どうすればいい、俺の目的を果たしつつ、ラミィの精神を何とか復帰させる方法を探らねば。



 この小さな町にも、冒険者ギルドはあったりする。


「あーあー聞こえねえんだよ、もっと大きな声で」

「び、媚薬とかのカードはないのか?」


 受付の黒ギャルみたいな女が、大きく溜息を吐く。なんだよ、勇気出したんだぞ。


「あんたね、そういうのは犯罪よ、もし合法でやりたいのなら、その効力と効果をしっかり理解させて、御互いの同意を得て」

「……奴隷に使うんだよ」

「ああ、ぺっ!」


 唾を吐かれた。



 その夜。


「ど、どんとこいっ!」


 両足でしこを踏んで、ラミィが待ち構えていた。

 夕食のとき会わないと思ったら、部屋に帰っていたのか。


「どうしたんだ?」

「も、もう逃げませんっ! ここまで来て弱音ばっかりはいてたら始まらないっ! 元より、導の精霊様が下す予言には試練がつきものだから!」


 ああ、やっと覚悟を決めたのか。

 でもその構えはないだろう。できる限り俺をガッカリさせようという魂胆じゃないだろうな。


「辛くても、もっと苦しい人がいると思うからっ!」

「苦しいのは間違いないんだな」


 やっぱ、カードを持ってきて正解だった。

 俺はカードケースから一枚取り出そうとして、考え直して三枚取り出した。


「たしか、ラミィってコンボ限界は三枚だったな」

「うん、そうだよっ!」

「じゃあ命令だ、この三枚をコンボで使え」


 俺は有無を言わさず、もって来たカードをラミィに手渡した。

 奴隷紋章の力によって、ラミィは疑問をもったまま呪文を唱え――


「コンボ? ガチャル、イクウ、イク……ゥウウウウ!」


 理性とは、追い剥ぐもの。



 そして、またまた翌朝。

 食堂では、神妙な面持ちで待っているロボがいた。となりでは、フランが眠気に船をこぐ。

 ラミィはそんな二人の元へ、飛び込むように現れた。


「おはよっ!」

「ラミィ殿!」

「心配かけてごめんねっ! もう大丈夫ですっ!」


 ガッツポーズを決めて、ラミィが元気よくでかい胸を張る。


「フランちゃんも、心配してくれたんだよね~ありがとっ!」

「ひびぃっ!」


 ラミィはいきなりフランに抱きついた。

 フランはその驚きに眠気を吹き飛ばされて、奇声をあげる。


「問題は、解決したのですね」

「うんっ、これからもよろしくね! もう私は逆らいませんよ~」

「あの囚人のような目から一晩でこの変りよう、しかもどこか生気に漲っておられる。流石はアオ殿、最後にはワタシを安寧すると信じておりました」


 だから、期待はしちゃだめだって。

 とりあえず俺も、その三人のもとに来て、


「お、アオ殿……アオドノォオオオオオオオオッ!」

「アオ!」

「如何した! そんなにやつれて! 搾り取られたみたいではありませんか!」


 膝を崩し、真っ白になる視界の中で、ロボの駆け寄る姿を見ていた。

 ああ、尽き果てる。



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