53独占欲
つい大声になってしまう。
自分でもみっともないと思うけど
どうしようもなくて。
「あ、ごめ……」
頭を引き寄せられて耳元で囁かれた。
「その子は俺の妹です」
「……いもうと?」
「そう」
「嘘だ、君に妹なんかいなかったはず」
「今、5歳ですよ。
貴方と会ってない頃に生まれたから
知らないのは当然です」
「…………担いだね?」
「今まで散々俺を弄んだ報いですよ」
その声の嬉しそうな事といったら……
「人聞き悪いね、弄んでないから」
「それでも今まで俺がどんな気持ちで
貴方と関係を持った女とを見ていたか
少しは分かったでしょう?」
「…………狡い」
「確かに俺の一方的な
気持ちだったかもしれないけど。
歯ぎしりしながら見てるしかないって
結構キツかった」
それはそうかもしれないけど
仕方ないだろ?
だってその時はまだ……
「今、俺の気持ちが
君にあるのを分かった上でのソレは
流石に狡くない?」
「……スミマセン。
試すような真似したことは謝ります。
貴方が俺のように想ってくれてるのか
自信もなければ、測るものもない。
さっきだって普通に女の子の話になると
反応するから心配で心配で仕方なくて。
自分でも時々おかしいじゃないかと
思えるくらい貴方の事になると……
俺は貴方みたいに寛大じゃないから
浮気とかされたらまず許せない。
今、貴方が思った何倍も嫉妬深いって事
くれぐれも忘れないで欲しい」
「……馬鹿、だな」
もう――
本当に君は狡いな。
これじゃ怒るに怒れないだろう?
こんなこと俺の肩に顔を埋めて
懇願するような事じゃないよ。
俺だって今心の底から君に対して
同じことを思ってるのに。
自分がどれだけ世界から注目されて
いま輝いているか、分かってないの?
その君を俺は独り占めしている。
嬉しさと不安は君以上だって事を
知らないよね?
信じているからこそ
口には出さないだけ。
それに引き換え、彼がここまで拘るのは
ひとえに今までの経緯と俺の過去が要因だ。
いまは口で何を言って誓っても
容易に信じ難いのだろう。
「しないよ、こんな大事な恋人
いるから、出来ないって
何度も言ってるだろ?
……少しは信用して、ね?」
彼の頭を撫で、宥めるように
言い聞かせる。
「……俺、いま
桐江さんの恋人なんだ」
「俺はそのつもりだよ」
「……このまま、していい?
ていうかベッドから出すつもりないけど」
「四堂君、それは……わっ!」
そのまま倒されて真上から俺を
覗き込む顔は冗談を言ってる目じゃない。
「良いよね?」
――これは覚悟しておいた方が良さそうだ。
「俺がそんな事できないの
考えなくても分かりそうなのに。
……妬いてる顔、可愛かったですよ」
途中、耳元で囁かれた言葉に
俺は白旗を上げた。
君にはホント敵わない。




