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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
王子、大人になる
64/79

43鑑賞会

オンエアが始まって暫く経った頃

宣材の幾つかが戻ってきたからと

デモテの一部をモニタールームで

鑑賞会と称して観ることになった。



「ぶっ!お前見切れてるじゃん」


「イヤ違いますよ、始まってるって

気がつかなくって」


「シロートか!ダセぇ」


皆、予想以上に世間での評判が

良かった事と、揉めに揉めてただけあって

安心感は普段より強く

映像を見ながらの会話も浮き出し立ってる。


「あー酒飲みながら見てーな」


「会社っすよ。阿部さん」


「阿部~でも俺も飲みたいかも」



皆、相当ストレス溜まっていたらしく

見事なまでのはしゃぎっぷりだ。




俺は皆より少し離れた後方で

椅子に座って映し出される映像を見ていた。


無編集だったこともあり様々な

四堂君の姿が映っている。

スタッフとの打ち合わせから

現場入りしてるとこ、カメリハなど色々。


その殆どが初めて見るモノばかりで

噂と符合する場面をいくつも

発見する形となっていた。



―――何故なら、


プロモは疎か、CM自体も

殆ど見ていなかったからだ。





TVを通してでも、彼の声や顔を

冷静に見れる自信がなかったし、



そして……それが条件でもあった。





「うん、この表情イイね」



「本当モデルいけるよな」



モニターには彼と零クンが

映っていた。



……懐かしい。



最後に会ったのは何時だったか、

もう遥か遠い昔のような気がする。



元気になってるようだね。


良かった……。




最後の最後、あの泣いてる顔に上書きされる

気がして少しだけホッとした反面、

それ以上に胸が苦しかった。


そこには俺が一度も見たことがない

笑顔があったから。



笑った顔なんて何度も見た、でも

画面でみせる屈託のない笑顔は

一回も見せてくれなかったっけ。




そっか――


君は普段、本当はこんな風に笑うんだね。



その映像はいつも必要以上に俺に合わせて

無理をしていたんだとそう思い知るには

充分なモノだった。







俺の方をいきなり振り返った阿部先輩が、


「お?桐江、お前いたのか?

何でそんな隅っこで見てるんだよ?

てかさ、現場同席すれば良かったのに

ここ凄い盛り上がったんだぞ」


「そそそ、クリス君のナイスツッコミ!

日本の芸能人じゃまず言えなよな、コレ。

この後の会長の反応がまた傑作でさぁ、

O.A.では惜しくもカットされてるけど」


「ウエ・サブから見てても

実に堂々たるモンでさぁ、

オーラーっての?普通じゃないよやっぱ。

いやぁ、大したもんだ」



現場に立ち会った人達が大笑いしながら

四堂君をしきりに褒めていた。


「……スミマセン、

立会いたかったんですけど、プレゼンの

準備が間に合いそうになったので」




――立ち会えるはずがない。



俺がこの撮影に一切携わっていないのは、

そうして欲しいとの要望があったから。


参加自体が許されていなかったんだ。




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