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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
小さな王子、現る
6/79

6その気持ち分からない訳じゃありません

ヒラヒラと目の前に出された紙を

受け取り、紫煙を深く吸い込んだ。


四堂 覚士(しどう さとし)


武嬋小学校、六年生

両親と三人暮らし。


ああ――父親が例の女学園の教師か。


(成程、そういう訳ね)


たまたま用事か何かで偶然、あそこに

来てただけとか、

どんなタイミングだろう、全く。


にしても祖父がアメリカ人?


って事は、彼クォーターなのか?

確かにやたら綺麗な子だ思ったけど、

そういう理由があったんだ。


んで、二ヶ月前、アメリカから帰国と。





苗字と家だけは何とか自力で

分かっていたけど。


……無論、後をつけて家を、

表札で苗字をで。


後はあの場所で校区内の小学校と

いえば限られてくるから

学校の名前は位はすぐに調べが付いた。


それから知り合いになる為に、

高校と違って向こうは帰りが早いから

朝、遠回りして偶然一緒の

登校を装って近づき、やっと

それらしい事を告るのに約一ヶ月を

費やしていた。


自慢じゃないけど女の子と

付き合うのにこんなに

手間を掛けたことなど無い。


それなのに、

この達成感の無さといったら。


「……まぁ、そんな感じ」


石川は横で煙草を吸いながら

俺の表情をみてニヤリ。


「はぁ……何か凄いね」



「で?いけそう?」



「…………」


いけそう?何が?


という言葉を煙と共に飲みこんだ。


やっぱり気が進まない事この上なし。

罪悪感すら禁じえないんだけど。



石川は反応の無い俺の肩をポンと叩いた。


「ま、相手が相手だし

“おにぃちゃん大~好き”って

言わせた時点でゲームオーバーにしてやるよ」



――そんな事、簡単に言ってくれるような

相手なら俺がこんなに悩むことはないって。










今日は早めに授業終わったから

小学校の門近くで待ってると

三十分くらして漸くお目当ての

人物が出てきた。


「一緒に帰って良いかな?」



「……げっ」



「…………」


俺が視界に入るやいなやその反応ですか。


しかも『げっ……』って


実に嫌そうな顔するんだね……はは。


自分でやっといてアレなんだけど

分かるよ、その君の気持ち。


「待ち伏せか?」


「今日は少し早く終わったから

少しだけ待ってた」



「先週も同じセリフ言ってたよな」



「そ、そうだっけ?」


ハァと大きな溜息と俺を一蔑した後、

彼はすたすたと前を歩き出した。


嫌な顔されるのはもう慣れてる。


ただ、不思議なのは呆れた様にいつも

見たり言ったりするのに、本気で

逃げたりする事は一度も無くて。


いっそ、そこまでされたら

こっちも引けるのにというのが

本音なんだけど。


歩く後ろ姿を何気に観察する。


近頃、地道な努力(ストーキング)

甲斐あってか少しづつ喋ってくれるように

なったけど、それでも自分の事は

あんまり話したがらない。


最近の小学生って皆こんな?

弟とかいないから分からないけど

もっとハジケてるもんじゃないのかな?


そしたら俺だってもっと

おにぃちゃん的に自然に近づけたかもしれない。

……何か違うんだよね。


勝手が違いすぎて自分のペースに

持ち込めない。


無論、男や子供に手を出すとか

絶対有り得ないし、頼まれてもそれは

流石に無理だ。


だけど、鈴木達を納得させるだけの

何かしらの証だけでも得ないと。


此処までしたんだ、今更俺だって

引けないよ。


もうこれは俺個人の意地だ。


ゴメン、変な事に巻き込んで。

それまでもう暫く我慢して、四堂君。


俺は心の底で目一杯頭を下げまくった。


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