5負けず嫌いじゃありません
(ふー昼メシか)
購買で買ったパンを片手に
屋上に上がる階段を通り過ぎようと
踊り場を曲がった辺りで岡本の達の
声が聞こえてきた。
大方、近くのトイレかなんかで
ダベってるんだろう。
「まさか、ガキが出てるくとはな、
面白すぎだろ。これは見ものだぜ」
「相変わらず桐江って
その場の雰囲気に弱ぇよなぁ。
押し切られると断れないタイプ?あれだな」
「まぁイイんじゃね?これで暫く
女と遊ぶ暇当分無いだろうよ」
「鈴木~お前、桐江に彼女取られたの
根に持ってない?
いくらアイツでも無理だろ、
少し可哀想だよ」
「関係ねーよ」
「それにさ、相手がアレじゃ
約束無視する可能性ないか?
そもそも桐江に受ける義理ないからさ」
「あー多分出来ないと思うなぁ。
そういう性格じゃん、変なトコ真面目。
取り敢えず何もせず、
とはならないと思う、俺的に。
既に色々アイツなりに動いてるみたいだし」
石川がしみじみした感じで言う言葉に
見透かされてる気がしてドキリとした。
「言われたら確かに、ぽいな」
「もう彼是10日になるか?
じゃ、忙しい桐江君に変わって俺達が
その間は女子高生の相手しますか。
と、いうことで
どっちにしろ俺達に損は無くね?」
「違いない」
と、一斉に笑い声。
―――聞こえてるよ、全部。
なんか言いたい放題に
言われてる気がする。
“可哀想”という単語には不釣合いな程の
陽気な声でそんな事言われてもね。
前に鈴木の彼女が告ってきて以来、
風当たりが結構あるなとは思ってたけど
俺だってあの子が友達の彼女だって
知ってれば一緒に遊びに行ったりしなかった。
最初に紹介してくれればいいのに
何故か皆、俺には紹介したがらないんだよな。
「……おにぎりにすれば良かった、かな」
再び階段を上る足を動かした。
昼休み屋上でぼんやりタバコを吸いながら
空を見上げる。
「あの子、子供だし……」
言われた通り結局、
押し切られただけだし
この場合、俺が泣きついた時点で
ジ・エンドなんだろう。
だからって
アッサリ引き下がるのも……。
いや、本当はそうすべきだけど。
うーん。
さて、どうしようか。
「よ、桐江ちゃん。調子どう?」
石川……さっきの話終わったのか。
満面の笑みで片手を振って現れた
その姿はスキップでもしそうな勢いだ。
ますますこっちの虚脱感を煽られてしまう。
「お蔭様で女の子と遊んでる暇ないよ」
「そりゃ良かった」
「…………」
こっちも、もう隠す気すら
ないみたいだ……良いけど。
「一応、頑張れば?ハイ、これ資料ね」
渡された紙を受け取るとそこには
何やらびっしりと書き込まれていた。
「何?コレ」
「例の子の情報モロモロ」
……何で持ってる?
石川?お前?
「出どころは、また今度な」
取り敢えず、目を通しとけと
言われた紙にはあったものは―――