27関係性
「ああ、そうだよ。酔ってて悪いか?」
(!?)
びっくりした……あ、電話中か。
「堪らないよ、あの人すぐ傍の
ベッドで寝てるんだぜ?
シラフでいれれる訳ないだろうが」
…………!!
「……え?まさか!
出せるかよ、起きなきゃ
それはそれでもういい、
朝まで寝かせるさ……仕事できっと
疲れてるんだろう。
……それは嫌味か?」
電話の相手は誰だか容易に想像が付いた。
「……俺なんか全然相手にされてないの
分かってる……ハァ??
じゃ何て言えば良かったんだよ!
言ったさ!そんな言葉もう何度もな!
……それじゃダメなんだよ、あの人は。
俺の言葉なんか子供が言ってるみたいに
しか受け止めてくれない」
声が徐々に荒がってるけど
それでも極力声を落とすように手を
スマホに手を翳しながら話してるようだ。
恐らくは隣の寝室で寝てると
思ってる俺への配慮から。
「自業自得?
何とでも言え、自分が馬鹿なのは
わざわざ言われなくてもよく知ってる。
お前から見れば俺はさぞや滑稽だろう?
笑えよ」
「……うるさい!
それが出来ればこんな事になるかよ!?
……もう切る。電話掛けてくるな。
あの人が起きるかもしれない」
四堂君が振り向きそうになって
慌てて身を引っ込め
再び、壁に凭れて彼の声を追う。
「大体何で掛けてきた?
真っ最中だったらお前
どうするつもりだったんだ?
邪魔はするなと言っておいた筈だろ。
……成程、こうなるって
分かってたって言うのか?
いいか、仮に仕事で一大事が起きても
今夜だけは絶対もう掛けてくるな。
……ああ、そうだ。
あの人より大事なモノなんて
俺には無いんだよ、知ってんだろ!」
電話を切った後、シャンパングラスを
一気に煽ったのを見て俺は再び
ベッドへと戻った。
暫くして部屋へ漏れていた明かりが
大きくなりそして消える。
ベッドが微かに軋み、ゆっくりバウンドした。
背後に人の気配。
だけど俺に決して触れることもなく
俺に添うように寝ているのが分かる。
「桐江さん……寝てる?
……俺がいるのによくもそんなに
無防備でいれるよね」
(…………)
起こすつもりはないらしく
小さな声で今にも消え入りそうだ。
「教えてよ……どうしたら、
貴方を手に入れられるんですか?」
その声はあまりに熱っぽく
甘く、それでいて切なくて。
「…………好きです、俺は貴方だけ」
馬鹿だ、
四堂君、君は本当に馬鹿だよ。
相手は俺なのに。
――俺、だから?
仕事と称して一回でも寝とけば
もうそれでも良いかとさえ
軽く考えていた自分を恥じた。
――君が四堂君である限り
それは、それだけはしちゃいけないと心に誓う。
それは四堂君に対する絶対禁忌なんだ。
――もし
もしも、いま振り向いたら恐らく
俺達の関係性は変わる……かもしれない。
だけど
それが俺達の望む方向なのか
分からない。
いや、少なくとも現時点では違う。
大人になるにつれ
大事なものが変わり、失うもの多くなる。
いつか君のその選択肢に僕が入るとしても、俺はそれで構わない。
多分、それが一番良いんだと思う。
同じじゃないけどそれだけ大事に思ってるんだよ、四堂君。
「………桐江さん」
お陰で起きるタイミングを
完全に逸してしまった。




