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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
王子、大人になる
45/79

24密告者

「あ、スミマセンちょっと席を外して

良いでしょうか?」


「どうぞ」


零クンはそのまま外に小走りに出て行くと

暫くしてまた戻ってきた。


「どうかした?」



「いえ……その……」











「はぁぁ」


何度目だろうこの溜息。



現在、俺は某ホテルのロビーにいる。


見覚えありまくり光景にデジャブの嵐の中

さっきまでの零クンの話を反芻しながら

もう一度、深い溜息をついた。



『あの……すみません桐江さん、

四堂が空港に着いたと連絡が入って』



『え?暫くは来日できないんじゃ

なかった?』


『ええ――来れないはずなんですけどね。

スケジュールどう調整つけたのか……

聞いても答えようともしないし。

全く、何考えてるんだ?四堂は』


『何か問題でもあったとか』


零クンは急に何故か押し黙ってしまった。


『多分……いえ、きっとですけど

俺の所為かもしれない』



『??』



『最近、四堂から連絡来ました?』


『え?ああ、うん』


例のあの真夜中に。

それ以来プッツリ来てないけど。


『何か言ってました?奴』


『いや特には』


言えないよ、君に。

あの内容はちょっと……ね。


『……そうですか、俺はてっきり

貴方に色々困ること言ってきたんじゃ

ないかと思って。

今日そのお詫びもしなければと

桐江さんに残って貰いたかったんです』


何のことだろうか?

零クンの言おうとしてる先が見えない。



『どうかしたの?』


『……何日か前にとあるホテルで

女の人と会っていませんでしたか?』



何でそれを―――まさか?



『俺、偶然兄とそこで待ち合わせしてて』



成程、そういう事だったんだ。



零クンが悪いわけじゃないのに

済まなさそうに頭を垂れている姿が

やっぱり飼い主に叱られた犬の様に

ションボリしていて、それ以上

追求する気にはならなかった。



『四堂が言うには、いま桐江さんと

会ってるなら伝えて欲しいと――』







――で、待ち合わせとして

指定されたのが、あのホテル。



何を言われるんだろうか?

もしかして浮気したとでも

怒鳴るつもりかな?


有り得ないな、俺達はそんな間柄じゃないし

そんなこと言われる筋合いもない。


四堂君がそうくるならこっちも

言い返すまで。




そう心に強い決意をした頃、


「お待たせしました」


と、背後から声を掛けられた。





「そうですね、ではマウリッツにも

俺から伝えておきます。

あとメディアの対応ですが――」


さっきから仕事の話ばかり、

例の件には触れてこようともしない。


零クンと俺の杞憂だったかと思ったけど

それにしてはおかしい。



それは――


「このソフトの媒体は今まで通りでは

まだ弱いのでマーケティングの結果

もっとターゲットを絞ろうかと、

この資料を見て頂けませんか?桐江さん」



正体を隠していた時と同じ口調に

戻っているからだ。


四堂君は感情的になると

昔の口調に戻る傾向がある。


実際最初にあの話題で電話をかけてきた時、

モロそうだったし。


却ってそっちの方が俺的に対処しやすい

と踏んでいたんだけど。



「…………」


それとも……それほど怒っている

という事だろうか?


でなければわざわざ同じホテルを

指定する意味は無いだろうからね。


ピリピリ張り詰める空気。


居心地の悪さったらないな。

仕事の話でなければ今すぐこの席を

立ちたいくらいだ。



「…………。」


本当だったら支えてやりたいのに

俺も大概大人気ない。


意地を張って良い事など何一つないと

わかっているけど、四堂君相手だと

何故こうも空回りするのか……。



目の前の彼は至って普通というか

ポーカーフェイスでその感情を

読みきれない。


どっちにしろ、これはビジネス

私情を挟まず付き合うしかないか。


四堂君がそういう態度でくる以上、

こちらもそれに合わせるのみ。


「こちらも持ち帰って対策検討したいので

少々お時間頂けますか?」



「ええ、結構です」







「という事でこの件は預かります、

プラン提案は石川君

渡しで宜しいでしょうか?」


「構いません」


「では……」


俺が席を立つのを見計らったように

四堂君はソレを切り出してきた。



「所で、俺にもして頂けませんか?」



「何を……ですか?」





「貴方のお得意な“接待”ですよ」





長いので分割、続きは明日0時。

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