4冗談じゃありません
何度も門の看板を見直しても
“友禅北女学園”と書いてある。
が、10人目として出てきた人物は
紛れもない、小学生らしき人物で
し、か、も、男の子に見えるんだけど?
俺の目だけにそう映ってるだけだろうか?
視線を三人に向けると
明らかにあんぐりと口をあけて
俺を凝視している。
どうやら四人、同じものが見えてるようだ。
良かった……って違う違う。
「…………」
俺は愛想笑いしながら
無言で‘彼’を指差す。
「…………」
彼等も引きつって俺の笑いに応じてくれた。
以下は口パク&多少の想像付き。
“ここ女子校じゃないの?彼、仕込み?”
“ねぇよ、どうやったらあんな強烈な
仕込み準備できるっていうんだって話”
“マジで!?”
“マジ、マジ。そこは信じろ”
三人が三人ともほぼ同時にうなづく。
彼等が嘘をいってるとは思えなかった。
「なぁ、もしかして、‘彼’に
外見がそう見えるだけで実は女子高生で
たまたま私服来てきたとかってオチない?」
発言した岡本以外の全員が首を横に振った。
どう考えてもそれは無理があるでしょう。
しかも、岡本、既に‘彼’って発言してるし。
それは、もうそもそもそうしか
見えないからだよね?
「岡本……それは」
俺達の中で一番のリアリストと自負する
石川が腕組みをして、銘々に着席を促した。
「皆、そろそろ現実を受け止めよう。
アレは男の子だ。
ボーイッシュな髪型、半ズボン
背中にランドセル。
どれを取っても俺達の希望的憶測を
全力で否定しきってるじゃないか」
「じゃ、どうする?無効か――」
と、岡本が言いかけたところで
石川が遮った。
「……いや、約束は約束だ。
桐江、どんな相手でも
だったっけ?」
これはこれで面白いんじゃない?とか
言い出してきた。
「え?ちょっと待って、待ってよ!
流石に無理ない!?
相手、男の子だよ?」
「うんうん。だから犯罪には走るなよ?」
そういうと他の二人を促して席を立った。
なんで、そうなるんだよ?
おかしいだろ?
「って、有り得ないって!」
俺の慌てぶりをみて
最初こそ戸惑い気味だった
鈴木や岡本さえも、
「あ、そっかぁ。
そういや女の子とか言ってなかったしな」
「そそ、お手並み拝見といきますか」
「いきましょう、くくっ」
もう完全に楽しんでるとしか思えない
態度に変わっていて、どんなに俺が
無効だと言い張っても聞かず、そのまま
笑いながら喫茶店を出て行ってしまった。
暮れゆく喫茶店に
独り呆然とする俺を残して。
学生でも教師でも用務員の人(女限定)
でも、女の人なら誰でも良かったのに。
何でよりによって男?
しかも小学生(多分)に当たる
率ってどれほどか、こんなに確率統計が
気になった事なんて
今まで一度もないんですけど。
「―――俺に、どうしろと?」