18再遊戯
「俺との事、前向きに考えてくれませんか?
猶予はかなりあげたつもりですが、
もう少しだけなら待っても良いです」
え??ちょっと待って、待ってよ。
そんな熱っぽい視線を向けられても、
「あ、あのさ、気になるイコール恋愛とは
単純にならないんだよ?
男女じゃないんだから、分かる?」
「単純じゃない事くらい理解してるさ。
だからこんなにもアンタには
手間暇かけてるだろ?」
イラッとした口調と共に掴まれた腕にも
力が込められたのを実感する。
成程……こういう時だけ
本来の君に戻る訳か。
「君だって女の子と色々遊んでるんだろ。
じゃ俺とか構わなくて良いんじゃない?」
「わっ!!なっ!」
いきなり、暗がりの路地裏に連れ込まれた。
周りには雑多なモノが溢れてて
余程覗き込まなければ何があるか
見えない程の場所。
到底、道路からは俺達の姿は闇の
一部にしか見えないだろう。
しかも余りに強く引っ張られた勢いで
倒れてしまって結果、四堂君が俺の上に
乗っている体勢になっていた。
「痛ッ……四堂……く!?」
「ねぇ、初めて下になる気分はどう?」
怒っていた筈だったのに
耳元で囁く声の低さと
熱さときたら、この俺ですら思わず
腰にキそうになった。
「な……」
どうやら転んだ拍子ではなさそうだ。
「ん……よせ」
荒々しく合わせられた唇が
次第に俺の舌を絡めて、ねっとりとした
モノに変わっていく時には既に
息が上がっていて……
「……っ……んん……」
酸欠しそうになってやっと
解放された。
「桐江サン……前と比べてどうでした?」
至近距離で四堂君が自身の
唇をゆっくり舐める舌先に
目が離せなかった。
「…………」
――比べようがないだろ。
どれだけ君がどこかの誰か達
としてきたか分かる程だよ!
だけど、
俺がそれをわざわざ言うとでも!?
「何?このままレイプでもするつもり?
女性にもそんなに強引で行くんだ?」
「まさか、
女の子は自から足開いてくれますから」
全く驚くよ。
よもや、あの四堂君からこんな言葉を
聞くことになろうとは……
しかも、なかなか露骨な表現をしてくる。
大したタラシだ。
「…………随分タラシっぽい発言だね」
「貴方直伝ですから」
「そんな事教えてないよ」
「……俺の前で散々女の人口説いて
ましたけど?」
「……兎に角、ヤリたければ
相手をキッチリ落とす事だよ。
でなきゃ強姦と一緒。
そういうの俺の流儀に反するし、
俺は少なくともそうしてきた」
「つまり、貴方を抱きたければ
落とせばいいんですよね?」
ん……?
「いや、俺という意味じゃ……」
「好きになって貰えれば
何をしても何をしてもらっても
OKっていう事で良いんですね?」
「は?いや……ええ?」
なんか……おかしな方向に
論点がズレ始めてる気がする。
「ですよね?」
「ま、まぁ理屈ではそうなるような、
ならないような……アレ?」
念押しする笑顔に、良く分からなく
なってきてうっかり頷いてしまった。
あ、馬鹿。
これは俺の悪い癖だ。
――迂闊すぎる。
「じゃゲームしませんか?
今度は俺が貴方を落とすゲーム」
「ゲーム?しかもターゲット、俺?」
「そうです。桐江サンは以前
見事に俺を落としてますし、
でも俺も落とさないと色々させて
くれないんじゃ
そうするしかありませんからね」
「ちょっと待って」
「言っておきますが貴方はパスできない。
昔、俺に仕掛けておいて自分は乗らないとか
それはフェアじゃないでしょう」
挑戦的且つ、有無を言わせない
言葉の選択。
「………………」
―――そういう事か。
四堂君が
こうも絡んでくる理由がやっと分かった。
これはあの時の復讐なんだ。
「俺は、男なんかに落ちないよ」
「他の男なんかに落ちる訳じゃありません。
俺だけで良いんです、ちゃんと
その言葉を“俺以外の男には”って
言わせてみせますから。
そして、そのうち
“女より俺が良い”ともね」
自信満々なその口調、態度。
昔の四堂君を彷彿させるけど
……意味合いがまるで違う。
思わせぶりな言動は全て
この為だったんだ?
「Geniesen wir ein Spiel. 」
四堂君が呟いた言葉は
きっと―――




