16野暮用
「生憎そっちで困った事ないですから
遠慮しときます」
……経験は充分あるって事か。
まぁ実際モテるだろうね、その顔と
その躰じゃ堕ちない子自体いなかったろう。
相当遊んでたって訳か。
「今なら桐江サンが言ってた意味
凄く理解できますよ、俺」
「………へぇ、そうなんだ」
余裕があるのはどっちだか。
「良かったろ?」
「ええ、悪くないですね」
「…………」
「…………」
何で俺達は無言で睨み合ってるのか
理由が分からない。
眼鏡越しから見える深緑の目。
色も白く煌めく金髪、整った顔立ち。
どれ一つとっても平凡からは
かけ離れている。
長い脚を組んでコーヒーを飲む姿に
昔の可愛かった面影など微塵もなく、
まるで何処かの雑誌モデルのようだ。
その証拠に周囲からそれとハッキリ
分かる程の人目を引いている。
「あのー俺、
すっごく居ずらいですけど……」
石川君が大きな溜息と共に
心底嫌そうに呟いた。
「何?どうしたの?」
「四堂と居る時いつもこうで、
やたら視線くるんですけど……」
――だろうね。
「今日はそれ以上ですよ……
二人揃うと強烈すぎで
俺だけ浮きまくってて
メチャクチャ居心地悪いです」
「お前、気にし過ぎだろ?」
「俺はお前と違って周り見えてるから」
「何?俺の目が節穴だとでも?」
「少なくとも今はそうだよ」
「どう言う意味だ?」
「普段の冷静なお前は
何処いったよ?って話」
目の前で言い争う二人をコーヒーを
啜りながら横目で見る。
仲が良いんだか悪いんだか……
「もう、ムカついた!桐江さん
聞いて下さいよ!」
あ、なんかこっちにいきなり
お鉢が飛んできた。
「な、なに?」
「さっき足を踏まれたから
言い損ないましたが、
コイツの遅刻は大抵女がらみですよ。
最初は注意していたんですが
もう段々馬鹿らしくなってしまって」
「だって向こうが離してくれないんだから
仕方ないだろう」
「え……?」
まさかと思ったけど
野暮用ってマジでソレ!?
仕事約束してんのに?
――最初に会った時ですら
もしかして女の子と一緒にいたから
遅れてきたとか……言わないよね?
しかも反省するどころか
四堂君はいかにも挑戦的な言い方で
俺を見返してくるんだけど。
その実感こもりまくりな言い方にも
流石に少し腹が立ってきた。
大体、石川君ほど極端では無いけど
昔の四堂君はとても真面目だった
印象があったのに。
人って此処まで変わる?
年月って怖いな。
――ねぇ?
あの最後に会った日、凄く必死に
告ってきた気がしたけど?
やっぱりこういうオチになるんだね。
うっかりほだされなくて良かった。
っていうか、子供だったから
本気に受け取りようもなかったけど。
今更の小学生編の挿絵^^;




