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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
王子、大人になる
36/79

15副社長



「四堂君って時間にルーズな方?」



日本での反応や実際の売上を鑑みて

今後の方針を変更をって言って

呼び出したのは四堂君の方だった筈。



何でこうも遅れてきてるわけ?



―――忙しいのは分かるよ。


というのも、日本解禁CMを打つと

同時に若き経営者としてメディアに

大々的に登場するやいなや、

物凄い反響になってしまったからだ。


ある程度予測はしていたものの、

普段こういったソフト系に興味のない

女の子達からの人気の勢いは絶大で、

俺達の予想を遥かに超えていた。


もはや取材やらTVに連日露出しまくり、

うちとのスケージュル調整の

折り合いが中々つかないという現状。


今や何かしらの形で彼を

目にしない日は無い程だ。


宣伝になるのは大いに結構だけど

こちらの商売自体に支障が出るのは

本末転倒な訳で。



土曜の午後、やっぱり今日も

先に来ていた石川君はこれ又

やっぱり気にする風でもなく資料と

パソコンを凝視しながらブツブツ

言っている。


「……君らの社長さん今日も撮影かなんか?

確か空いてるって言われて

呼び出されたんだけど?」



そして、聞いてもいないと……




「……いーしーかーわークン?」



「あ、ハイ!すみません!」


――返事は物凄く良いんだよね。


こんなんだから怒る気が失せる。


「いや、君に怒ってる訳じゃないよ。

四堂君なんで遅れてるのか訳を聞きたいだけ」



「あーえーと、アイツの場合……痛っ」




「スミマセン、遅れました」


突如、爽やかに現れた四堂君とは対照的に

石川君は何故か自分の足を擦っている。



「どうかした?足?」


と、俺。


「いえ……なんでも」


とは、石川君。



「四堂君、遅れてきた理由は?」


「野暮用です」


言い切られてしまった。


(はぁ??それが社会で通用するとでも!?)


他の要件が入ったなら連絡!

しかもよりによって野暮用とかで

言い切るとかナメられてる??


社会人の先輩として

一言説教をしてやろうと思ったのに、



「で、レイ、状況はどう?」


「まぁまぁ、かな」


「ふーん」


その後、二人は報告を英語で

し始めたようで何を言ってるのか

サッパリで説教するタイミングを

迂闊にも逃してしまった。


一応、最近某TVの英語講座を録画して

欠かさず見てるけど、それくらいじゃ

内容が分かるはずもなく、

完全に置いてけぼり。


……実に楽しそうに笑っている。


そんな様子にすっかり怒る気を

削がれてしまった。


「石川君はまだ学生なのに

会社とか経営とか良く理解してるんだね」


俺の言葉を受けて四堂君は、ああと

何か気が付いたようで、


「元々日本担当はレイなんです。

レイ、名刺」


本当の名刺はこっちです、と石川君に

渡された肩書きに驚いた。


“Vice President?”


「これって副社長って意味じゃ

なかったっけ?」


「よくご存知で」


石川君は、


形だけです。

実際僕は日本にいるわけだし

十分な戦力にはなりえませんからと

言っていたが、



「そんな事はないよ。

レイの助言は結構役立てるから

助かってる。

元々二人で立ち上げた会社だし

大学卒業したら秘書も兼任してもらう

つもりだからな」


すかさずそう言った四堂君の顔は

石川君に対する信頼の厚さが窺えた。



「じゃ最初から彼が来れば良かったのに」


「……誰かさんが邪魔してくるんで」


「誰か?」


彼はその視線を四堂君に向けた。


「桐江さんがいる所じゃないと嫌だとか

俺が出ると面割れてるからダメだとか

駄々こねまくりで大変でした。


俺が最初から出てきたらきっと桐江さんが

怪しむから引っ込んでろって言われましてね」



「折角の再会だから驚いて貰いたくて」


イタズラ子みたいにウィンクする姿は

実にイチイチ様になってる。


「昔はもっと素直でイイ奴だったのに

恋する男は面倒で敵いません」


「へぇ、好きな子がいるんだ?」


途端二人は目を丸くして

顔を合わせたかと思うと

二人は異なった笑い方をした。


石川君は口に手をあてて静かに。

かたや四堂君は大笑いといった感じで。


「し……失礼だぞ、四堂」


と言ってる石川君もまだ笑ってるけど?


「何か変なこと言ったかな?」


「いえいえ、全然」


お腹を抑えながら四堂君は、


「桐江サン今、彼女いるんですか?」


「……いるよ」


別れたばっかりだけど

わざわざそれを言う必要はない。


「―――へぇ」


「どんな人?」


「秘密」


「……そういうと思いましたよ」



「相変わらず女関係派手そうですね。

……ホント、女の人好きですね」



「君も女の子を抱けば分かるよ。

まだ経験ないんだったら

誰か紹介しようか?」


小学生ならいざ知らず

当時の俺と同じ年になった今なら

もうこういう話してもOKだよね。



「――相変わらず余裕かましてるよな」



一瞬、四堂君の目つきと同じくらい

口調が変わった気がしたけど、

すぐにいつもの様にニッコリ

笑いかけてくるから俺の思い過ごし

かもしれない。



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